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学園の教授陣

 セドリック、アラン、アニエスら入学者の試験が終わって、教授陣が徹夜で採点中の中、教授皆の心中は穏やかではなかった。


「全く今年は何ともまあ、緊張感の増す世代となったな……」

「全くです。次席の子はともかく主席は炎魔法使い、三位は属性主義不要論者の貴族の息子。はっきり言って面倒な展開ですな」

「本当ですね。これはお国が何を言ってくるか分からないですよ。水魔法使いの次席の子を主席にしないとは何事か! とかくらい言ってきそうですよ?」

「確かにな。だが、我々はその案には賛成するつもりもないし。我らにケンカを売ってきても困るのは上層部側だ」


 何人かの教授たちが話しているが、彼らは全員貴族から推薦されてこの学園の教授になった。もしくは実力で成り上がった教授たちだ。

 そして貴族に推薦された教授に関しては、推薦してきた貴族が属性主義不要論者なのだ。そんなわけでここにいる教授陣はみんなセドリックの側だ。


 だが普通なら敵対派閥の属性主義論者が学園に送り込まれたりするものだが、なぜここではそんなことが起こりえないのかというと、ここの学園の所有者兼、運営権保持者が公爵な上に、実力で学園に就職した者以外の教授は、皆その貴族の推薦を受けた者たちばかりだ。

 その時点でもう既に貴族では彼に逆らって敵対派閥の教授を送り込むことはできない。もしできるとしたら、それは国王ただ一人。

 しかし、それをすると公爵という大貴族の一人がへそを曲げて政治に悪影響が出る可能性がある。それを恐れて国王はこの状況を面白くは思っていないものの、黙認している。

 何せその公爵は国の財務を一手に担っている。そんな人物の機嫌を損ねれば、どれほどの手痛いしっぺ返しが来るか分からない。

 なので国王もそっとしておいているのだ。


 なので、公爵という王家の一員である貴族が運営する学園ではあるものの、本家筋の王家とは一種隔絶された領域にある。

 それが学園なのだ。つまりは王立などという大層な名前が入ってはいるが、実質的に王は学園において何の決定権も持ち合わせていない。


「それだけが、救いだな」

「ええ、そうですね。平民からの出である私から言わせていただくと、正直彼の公爵様が後ろについていてくださるのはありがたい限りです。平民の中でも闇雲にお国の方針を信じて他属性の魔法使いを差別する者も居ますが、概ね平民は属性などどうでもいいというのが本音であると思います。なので僕もその一人として、余計な口を出してくる権力者を排除してくれてる公爵様には感謝しかありません」

「その感謝という一言に尽きるな。私もあのお方には感謝してもしきれんからな。だからこそ、あのお方の望む教育に力を注がねば」

「そうですね」




「それにしても凄まじい成績だな、この子は……」

「筆記は国史・百点満点、世界史・百点中94点。基礎魔法知識・百点中95点。実技に関しては両方とも満点に加え加点まであったようです。魔法は50点、剣術は47点というふうに」

「歴代最高、という訳か……本当に末恐ろしい……」

「しかし、世界史に関してと魔法の座学に関しては誤差の程度ではあるが、知識不足があったのか」

「でもまあ、あなたが今仰ったように誤差の範囲でしょ。学園以外でむしろよくここまで高い意識を持って勉強していたなと褒めたくなってしまう点数ですよ」

「確かにな」



 と、教授たちはそんな感じでセドリックの評価を話していく。


「主席はセドリック少年で確定、か」

「ですね」

「間違いなく」


 そしてセドリックの評価が終わると当然次の入学生たちの評価だが、


「次席の子はセドリック少年とだいぶ差が開いているな」

「そうですね。それでも結構な点数ですけど」

「国史が93点、世界史が90点、基礎魔法知識が89点と」

「単純にすごいんですけどねえ~」

「一番を見てしまうとどうしても……」

「こればかりは仕方ない。我々の教育でどこまで伸ばしてやれるかだ。上位に立つ者の向上意識は全て外れがないと言っていい。丁寧に教えれば確実に上がる」

「そうですね」

「三位の子は国史が92点、世界史が87点、基礎魔法知識が91点といった感じですね。剣術と魔法の実技に関しても二人とも同じくらいです」

「なるほど、次席と三位はあまり変わらないと」

「主席の点数を聞いたから後から聞く生徒の点数が微妙に映りますが、本来ならばここまで出来のいい子たちはあまりいない。今年は厄介な年でもあり、豊作な年でもある」



 そんな感じで生徒の評価がどんどんとなされていくのだった。


「これは今年の“各国合同国際武芸披露大会”でかなりいい成績を残せるかもしれませんね」

「そうだな。そう祈るばかりだ」



 そうして話題が移り変わる中で、そろそろ徹夜の仕事も終わりに近づいてきた。


「では、最後に各教室の担当教員をこれより発表する」

「来た来た今年も!」

「今回は私が特進教室です!」

「何を言っているのですか!? 昨年たくさんの生徒の成績を上げたのは私です!」


 そう、クラスの担当教員決め。この時間は修羅場である。


「待て待て諸君、これは既に決定事項であり、理事長の管理のもと決められていること。騒いでも何も変わらん」

「そ、そうでした。私としたことが……」

「俺もこの時期はついピリピリしてしまう」



 そんな感じでこの場は収まり、すぐに担当教員が発表された。

本日もありがとうございました。

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