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【完結】私が勇者を追いかける理由。  作者: コル
1章 初依頼、薬草を採取せよ
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その5

2020/11/07 誤字脱字を直しました。

「それで、シオンちゃん達の受けた依頼はなんなん?」


「西の森に行って、ヨギ草を採取ですわ」


「ふむふむ、ヨギ草の採取か……それじゃあ、冒険者の先輩であるチトも一緒に行って手伝うわ」


 だから、先輩と言ってもまだ見習いでしょ。

 いや……もうこれ以上は何も言うまい。


「えっ? 宜しいのですか?」


「シオンちゃんと、偶然ここで再会したのも何かの縁やしな~遠慮せんとって」


 確かにすごい偶然よね。

 シオンは今日この街で冒険者になった所だし、チトちゃんはこの街にある道具屋に届け物をする為に来たんだし。

 1日ズレたり届け物が違う場所だったら2人は出会う事も無かったもの。


「それはありがたいのですが、チト様はご依頼の報告をしに受けたギルドに戻らないといけないのでは?」


 あ~そうか、じゃないと報酬が貰えないものね。

 流石にそれを放っておいて、シオンを手伝うって言うのも……。


「やや~チト様て~気軽にチトでええですわ~。あと、報告の方は心配せんといて下さい。依頼書を持って完了の報告すれば、どこのギルドでも報酬で受け取れますから」


 へぇ~そうだったんだ。

 ん? でも、そのやり方だと不当な奴も出て来るんじゃ?


「では、わたくしたちもこの依頼書を持っていれば、ここのギルドじゃなくても報酬をもらえるのですね……あれ? そうなりますと、仮に成功しなくても成功とギルドに報告をすれば報酬を貰えてしまうのではないのですか?」


 そうそう。

 そうなるよね。


「その辺りは大丈夫。届け物や討伐といった依頼は、報告後にほんまに行われたかどうかギルド職員が現地に行って確認するの。そのせいで、依頼によっては報酬の受け取りに時間がかかってしまうのが問題なんやけどね……まぁシオンちゃんの受けた採取の方は、ギルドに直接渡すからその辺の問題は無いけどな」


「なるほどですわ」


 だから、あちこちにギルドやギルド関係の施設があるのか。

 ギルド職員も何かと大変ね。


「そうや! 討伐と言えば、一つ星だとパーティーを組めへんと受けられへんのよ。けど、今は3人おるからパーティーを組んで次は討伐系の依頼を受けようよ! (それに、それだとアスターさんと一緒におれるしね……ニヒッ)」


 チトちゃんが邪な目をしている様な気がするんだけど、気のせいかしら。


「えっ!? パーティーを組むんですの! わあ~」


 シオンの方は純粋に目が光り輝いている。


「えっとーチトさ……んは、この街に滞在していてもよろしいのですか?」


「チトは特に拠点を決めておらんし気にせんとって下さい。とは言っても、シオンちゃん達が良ければの話やけど……」


「わたくしは全然構いませんわ! アスターさんはどうですか!?」


 別にアスターに断る理由もないけど、あの光輝いた目で言われたら断れないわよねぇ。


「あーはい……私も依存はありません。チトさん、よろしくお願い致します」


「決まりやね! それじゃあ、改めてよろしゅう! あ~やっと、コレを使う時が来るわ」


 チトちゃんが背中に背負っていた物を手に取って、布を取り始めた。

 で、その中から出て来たのは予想通り戦斧だわ。


「おお! かっこいい斧ですわ」


 それにしても、あんな重そうな戦斧を軽々と持つなんて流石ドワーフの血筋……ん? あの戦斧はどこかで見た事があるような……。


「そうやろ~これはな、お父ちゃんから冒険者になった祝いとしてもろた戦斧なんや」


 そうか! あれは、ロイドが旅で使っていたミスリルの戦斧だ!

 ちょっと、ロイド! なにそんな物を、お祝いでチトちゃんにあげているのよ!?

 相変わらずうちのパーティーの男どもは、何かしでかすわね!!


「っと、街中で出すもんやないな……さっさとしまおう」


 正直、その戦斧は邪竜戦以外に出す物じゃないです。


「――これでよしっと……ほしたら少し待っていて、さっさとこの依頼書をギルドに出してくるから」


 あ、チトちゃんがギルドの方に歩て来た。

 まぁ別に隠れなくても、端の方に居ればいいかな。

 さすがに、私の事は覚えていないだろうし。


「あ、わたくしもご一緒にいいですか?」


 ――!?


「今後の為に、報酬の受け取り方を見ておきたいのです」


 嘘でしょ!?

 シオンが入って来るのなら話は別よ!


「ええで~一緒に行こか~」


 またギルド内でピンチに!

 こうなったら、もう一度受付カウンターの裏側に隠れ――。


「……ジー」


「うっ!」


 受付嬢さんが私を睨んでいる。

 そうよね、さっき怒られたところだもね……それをまたって言うのは……でっでも、それじゃあどうすればいいのよ!


「さて、依頼書依頼書……」


 ああ、もう入り口手前まで来ている!


「……ええい、こうなったら……」


 最後の手段、透明化の魔法を使うしかない。

 まさか、こんな所でもう使う羽目になるだなんて思いもしなかったわ。


「……あれ?」


「チトちゃん、どうかしましたか?」


 ん? どうしたのかしら。

 チトちゃんが、腰に付けている道具袋から色々取り出している。


「あれ? ……あれれ?」


 そして今度は体中を探っている。

 これは、もしかして……。


「しもた! 依頼書を宿に置きっぱなしやった!」


 やっぱり……。


「ちょっちょっと待っとってや! すぐに、取って来るから!」


 武器といい、依頼書といい、チトちゃんって物忘れが激しすぎない?


「ふむ、宿か……シオン様、よろしいですか?」


「なんですの?」


「私達の宿は決まっておりませんし、パーティーを組むのでしたらチトさんの泊まっている宿を訪ねてみませんか?」


 おお! アスター、ナイスだわ!

 色んな意味で素晴らしい動き!


「あ、それはいいですわね!」


「せやな、それじゃあ一緒に行こか。チトが泊まっとる宿はこっちやで」


 3人が宿に行ったわね。

 ふぃ~れでやっとギルドから出られるし、シオン達より先に西の森へと迎えるわ。


「さて、ローニは一体どんな事をしているのかしら」



 ここが西の森か。

 パッと見は普通の森だけど……。


「……」


 いや、普通の森じゃなかった。

 ヨギ草は地面に生える植物……でも、何故かこの森では目線の先にある樹から数枚生えている。

 考えてもおかしい、自然の摂理をぶち壊しているわね。

 これは取れるのかな?


 ――ブチッ


 簡単に取れた。

 あ~なるほど、接着剤でヨギ草を樹にくっつけたのか。

 うん、無いわ~……流石にこれは無いわ~。

 とりあえず見える範囲は、全部毟り取りましょう。


 ――ブチッ

 ――ブチッ


「あああああああ!」


 どこからか叫びが聞こえるけど、無視無視。


 ――ブチッ

 ――ブチッ


「ぬおおおおおおおおお! おい! やめろ!」


 何もない空間から、いきなり右手が出て来て私の右腕を掴んだ。

 私はローニだってわかるから驚かなかったけど、普通に怖すぎるすぎるでしょ……これ。

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