エピローグ
くらい
くらい
おおきいおと
こわい
おとうさん…?
おかあさん…?
どこにいくの…?
まってよ…おいていかないで
…。
…。
…。
…。
どこ…?おとうさん…?おかあさん…?
───────!?
い、いやぁあああああああああああ
───────────────プツン
~12年後~
─王都─ セントメルプ
~酒場「ジークフリート」~
「大将~聞いてくれよォ~…まぁたパーティから外されちまってよォ~…ビショップのヤツが野蛮だなんだってボクの事を非難するんだよォ~…それにみんなが同調するようにさァ~?寄って集って言葉責めしてよォ~…か弱い年頃の乙女だよ~?大体さぁ~?ポーンが前線に出てなぁにがわるいんだよぉ~~………グガァ…」
寝た。
「全く、これのどこがか弱い乙女なんだか…。身の丈に合わねぇ獲物携えて、それをぶん回して前線に突っ込むようなバカは何処も相手にしねぇよ…。今回だってぶん回した大剣が味方にカスっただとか何とかって、噂じゃ聞いたが…。よくこれで訓練校を卒業できたもんだぜ…。」
マスターは呆れた顔でその磨き上げたスキンヘッドをポリポリとかきながら言った。
「しかしこの子、訓練校は戦闘技術だけ見れば一応3位で卒業してるんですよ。村出身で魔力も無いのに3位。女性で!しかも!腕っぷしだけで3位!これって凄いですよ!筆記は…まぁそりゃ悲惨なものでしたが…。」
茶色の髪、青いローブに身を包み、背には弓矢を携えた童顔の青年が少し興奮しながら横から話しかけてくる。
「なんでぇあんちゃん、妙にこの子に肩入れするじゃあねぇか……3番テーブル!……まさかおめぇさん、この子に惚れてる?」
冗談交じりに意地悪な笑いを浮かべたマスターがウェイターに指示を出しながらも茶々を入れる。
「ば、馬鹿言わないでください!この子…カーリーとは幼い頃から同じ村で、一緒に剣を稽古した仲なんです。なんというか~…そう!腐れ縁!」
「腐れてんのかぃ」
「あぁいや違くて!親友なんです!」
「あんちゃん、名前は」
「え?僕ですか?あぁ!申し遅れました。僕は『ロビン・ブラッド』って言います!気軽にロビンとお呼びください!で、こっちは…」
ロビンの足元から声がした。
「カーリー・ブラッド。こいつとは腐れ縁以外の何者でもない~~…よっとぉ!…性は事情があって同じだけど、こいつとボクは別に家族ってわけじゃないからな~………ウェイターー!!酒ェー!!!」
すごい体勢で酔い潰れていたカーリーは、脚の力だけで椅子に腰掛け直し、再びウェイターに酒をせびると、横取りするようにトレンチからビールを奪い取り、またゴクゴクと呑み始めた。
「あぁもう!カーリー!みんなも見てるし、はしたない事はやめようよ~!」
「っせー!おめーはボクのかーちゃんか何かか!男のくせになよなよしやがってよォ~?金払ってんだからいーじゃねーか!!」
「ヘンリーおじさんに言いつけるよ」
「ゲェ…それだけは……勘弁してぇ……」
嫌な思い出(おしおきの数々)を回想しながら噛み締めるようにカーリーはロビンにお願いした。
透き通った黒髪にポニーテール。
碧眼はどこか宝石を思わせるように透き通って………はいなく、淀んでいた。
露出の少ない黒のコートに身の丈か…それ以上に大きい紅い大剣を携えた女性。
「グガァ…zzz」
「また寝たよ。獲物だけじゃなく性格もある意味大物だなコイツ。」
名を「カーリー・ブラッド」
この物語は──彼女の復讐の物語である。
「お前さんの親友よ、第一印象悪いってよく言われねぇ?うちの常連のめんどくせぇ客と同じ匂いしかしねぇんだが……」
「うぅ…根は優しいんです…ごめんなさい」
「お前さんも苦労人だねぇ」
「…で、ロビンよ、お前さん達の『役職』ってなんだい」
グラスを拭きながらマスターが問いかける。
「僕は村出身ですが、魔力を持っていたこともあって王国訓練校を卒業後、『ルーク』の役職を務めてます!彼女は聞いていた通り、『ポーン』の役職で前線に立っています!」
──王国訓練校。
200年前、王政が再びこの世に復活した際に同時に建設されたのがこの「王国訓練校」。
王国訓練校へは誰でも試験を受ける事が可能で、輩出された人間は戦士として国に登録され、魔物討伐隊…
通称「MSS(Monster Subjugation Squad)」に入隊が出来るようになる。
王国訓練校卒業の戦士は主に、ポーン、ルーク、ビショップで分かれている。
ポーンは盾職、近接戦闘職。主に前衛で戦うことに特化しており、王都外の村人から来た人間は大抵この役職となる。
ルークは後衛の魔法攻撃職。ポーンの後方支援を担当しており、魔力を持つ王都民は大概この職に就くことが多い。稀に、魔力を持つ村人がこの職に着くことがあるが、村人が卒業できるのは非常に稀なケースである。
ビショップは同じく後方支援職であるが、違うのはヒールに特化しているという点だ。
癒しの魔力を持つ人間はほとんどが女性であるため、訓練校はビショップ棟を別で設けている。
「え、ロビンよ、お前さんの剣の稽古はどこいったんだい」
「それは…お恥ずかしい事に剣の稽古は魔力が発現してからはほとんどカーリーとの仕合の時しか触ってなくて。それ以外の時間はは魔力のコントロールを自分で学んでました!」
「訓練校は?何位で卒業だぃ」
「33位でした…へへっ」
乾いた笑いを浮かべたロビンの表情からは、どこかカーリーに対して敵わないやという想いと
「おめぇさんやっぱ恋してんだな、コイツに」
「だっ……!?だっ、だから違いますってぇええええ!!」
恋を半ばで諦めているが、どこか諦めきれない。そんな想いを、マスターは感じ取っていた。
「zzz……ハッ……酒ェーー!!!」
「うるせぇ!!!店の迷惑だろうが!静かに飲みやがれ!!」
「うちのが…ほんとごめんなさい…」
「ま…頑張れや。ロビン君」