表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叫騒の歌  作者: 実嵐
89/122

あからさまな嘘

翌日になると生稲が来ていた。若槻から警視庁へと戻るように言われたのだろう。少しばかり怯えた顔をしているようにも思えた。自分の机に座っていた。捜査一課の連中は何も言えないのは、遠藤にこっぴどく叱られたことにもつながっているのだろう。若槻は来るなり生稲に声をかけて連れてきた。

「俺が休んでいたのが悔やまれるな。」

「いいんですよ。若槻さんは。俺たちは好んで来ていたんですから。・・・それと昨日、刑事部長が来たんですけど、遠藤さんが撃退してくれました。」

「遠藤さんには頭が上がらないんだよな。あの人は俺が師匠と慕っていた人の部下だったんだ。上に逆らうのはもっぱらその人のやり方でさ。逆らうことで目をつけられても大事にしないといけないことがあるって言っていたよ。」

若槻にもかつては・・・と思うことがあるのだろうか。懐かしむような恰好をしていた。隣にいる生稲は居心地が悪そうにしているが、捜査一課のところにいるよりはましなのかところどころで笑みを見せている。

「そろそろ榎並にぶつけてもいいころかななんて思っているんだよ。証拠もそろっているし。鑑識の奴を連れていくしね。」

「準備をしましょうか。」

間瀬が何処かに隠していた熱意が見えた。パソコンを扱っていることに変わりないが、パソコンの画面が複数に増えている。ボイスレコーダーを動き出している。

「生稲、驚いたか?」

「えぇ、前までバカにしてすみませんでした。」

「いいんだよ。君には改心する兆しが見えるが、君の相棒は全くといっていいほどなかったんだ。だからこそ、週刊誌に事実を書かせたまでだ。」

若槻は遠巻きで見ていないふりをさせていながらじっくりと行動を見ていたのだ。生稲は益子にちょっかいを出すためにこちらに目を向けているのではないのだとわかったのだ。資料を覗くために来ていたこともわかった上だったのだ。ある種のスパイだったのだ。捜査一課にとっては残酷なまでのスパイだとばれてしまってはいけないと思った。切り捨てる方法を考えてしまったのだ。若槻によって阻まれてしまったのに不満がきっと漏れているのだ。処理能力を持ち合わせていない刑事部長はただおどおどしているだけに過ぎないのだろう。

「間瀬、榎並邦彦の近日の日程というのは挙がっていないのか?演説やら講演会とかないか。」

「探しますよ。・・・懺悔にしないから公の場で辱めたいんですね。」

「理解が速くて助かるよ。」

間瀬はにやりと笑った。その顔を見て若槻は満足気だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ