保身と保険
「あれかな。若槻に陶酔しきっている輩っていうのは脅す手口まで知っているのか。恐ろしいな。」
「刑事部長、脅しではありませんよ。」
ドアの後ろにしたのは遠藤だった。鑑識も忙しいために休日でも来ているのだ。遠藤は若槻が来ていないことを知って絡んでくるのを予測していたために来たのだろう。遠藤の立ち姿には何処か神々しさを感じた。
「脅しではないのだとするとなんだというのだ。遠藤君。」
「データを扱っている部署からの情報ですが、書き換えられた形跡が見受けられた書類を頼んだのは誰かと検事に聞いたところ、貴方だと聞いたので警察庁が動いているようですよ。部屋の片づけくらいやったらどうです?リーチの事件も貴方が大きくしたのも同然ですからね。・・・一つ付け加えておく必要がありますね。貴方にとって陶酔しているのは自分であってそれしかないんですから。」
検察もデータの改ざんを認めたのだ。そのことによって真実を書き換えてもいいからといってきた刑事がいたと聞いたので監視官が聴取をしたところで名が挙がったのだ。抗えない真実であるのはデータからも残っていた。
「貴方は複数の事件にかかわっている。それも政治家とグルになってね。・・・榎並邦彦ってよく会っているんでしょ。昔の恩義だとか言って高級料亭での接待の上にわいろだなんて恥かかせな。」
彼は次々と玉を打っているようだった。早い玉から変化球のようなものまで多彩に持ち合わせているのを知らなかったのか、刑事部長は少し真顔になったりどう言い返そうか考えている様子にも見えた。
「そんな・・・こと・・・知らない・・・。」
「データありますから言い逃れできませんよ。」
間瀬はパソコンでカチカチと打つと音声が流れた。鑑識とデータを扱っている部署も監修になっているのでパソコン上に名前や言っていることの文章化もしてくれるお手軽品なのだが、それは逆に関係ない人からしてみれば困りもののようなものだ。音声から聞こえるのは何年前の事件を未解決にしてくれてよかったとかいくら払ったらもし新たに起きた事件をチャラにしてくれるかの交渉をしていた。
「これは今、榎並邦彦を張っている刑事がいましてね。その刑事がとったものです。やめさせたがった奴ですよ。皮肉ですね。」
「警察庁も知っている話の上に警視庁の保身にも関わることですから、早く辞めたらどうです?」
刑事部長は言い返せなくなってずかずかと出て行った。あれだけ食らっても態度は変わらないのだと思った。遠藤もほっとしたのか笑顔を見せていた。




