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叫騒の歌  作者: 実嵐
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素面と仮面

益子は警視庁にいた。休日ではあるが、事件について調べずにはいられなかった。榎並渉がいくら詐欺師と付き合っていたとしても殺されるのはいけない。榎並邦彦を脅していたこともわかっている。身内になってからも続いていたとは考えにくい。間瀬もパソコンをいじっている。データベースにあるのを簡略化をしてホワイトボードに出そうとしているのだ。佐伯がのこのことやって来た。

「どうだ。進んでいるか?」

「進んでいるかって一応は休日出勤とかいう部類なんだからな。佐伯。」

「そうだったのか。てっきり通常かと思ってしまった。」

佐伯の話を聞くと遠藤も休みらしく昨日は飲みに出かけたのだろうなと羨ましそうに言っていた。その時に益子の携帯がけたたましくなった。会話を途切れさせた。

「もしもし。」

「孝人、家に来てくれるかい。若槻さんがね、昨日に来て飲んで寝ているのよ。様子を見るだけでもいいからさ。」

益子は関係ない話なら断ろうとしていたが、若槻が来ていると聞いて今すぐ行くといって切った。佐伯も察したのは目で訴えていた。間瀬も黙ったままだ。

「益子、たぶんだがな。若槻さんの過去を知ることになると思う。若槻さんの過去を知る人は警視庁の中でも限られている。酔った時くらいしか聞けない話だからだ。心しろよ。」

彼の強い言葉にうなずいた。警視庁に出た後、タクシーを止めた。たまたま止まったタクシーの運転手が物静かな人だった。行き先を告げても口数が少なく答えた。若槻の過去といっていた。間瀬も聞いたことがあるのだろうか。酔った時にしか聞けないといっていた。路地に入る手前で止めた。メータをよく見ていなかった。運転手は札を受け取るとおつりを返してくれた。少し不服そうにも見えた。おつり分はもらえるとでも思っていたのだろうか。降りた後も眺めるようにした。小ぢんまりとした場所にあるのでよく思った。ドアを開けた。

「早かったわね。もう少し時間がかかるのかと思っちゃった。」

「なんだよ。おふくろ。来るように言ったくせにさ。」

「俺が呼んでほしいって言ったんだよ。」

隣から少しだけ怒ったような声が聞こえた。見ると遠藤が水をがぶ飲みしていた。その隣には焼酎の瓶が空っぽになっている。1人で飲んだのだろうか。

「どうしてですか?」

「聞いてほしいからだよ。これから扱う事件において無駄じゃないって思った。俺もバカじゃないんだ。皆目見当くらいつく。昨日、此処で記者に情報を流してもすぐに出ようとしなかった理由がな。」

遠藤は胸を張ったように言った。酒に酔っているようにも見えなかった。ほどほどにしていたのだろう。素面では話せないものなのだろう。


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