一体化
廊下を靴を鳴らしながら来る細身のか弱そうな男性が来た。益子は顔を上げて笑顔を見せた。
「どうしたんだ?」
「遠藤さんが益子が暇しているからとりあえずは済んでいるだから休めって言われてね。待機って来ると鑑識も恐ろしく不安になるんだよ。若槻さんは目の付け所がいいのは知っているからさ。」
益子に対して丁寧で何処か安心させる力があるのだ。警察学校の時にだけ絡んだことがあってそれで終わるかと思いきや意外と会っているのだ。鑑識のエース候補とされている佐伯だ。片桐が失敗したら佐伯だという声が上がっているが、法医学をもっていないといけないと若槻は言っているのでそうなるとは限らない。
「お前も飲むか?缶コーヒーくらいしかないけど。」
「いいぜ。お前の奢りな。」
彼は重い腰を持ち上げて立った。佐伯は喜んで甘さを感じるカフェオレを買った。頭を使った分、糖分が必要なのだろうから。益子を横目にぐびぐび飲んでいる。
「鑑識ってのは証拠を扱うから厳しいだろう。」
「それなら刑事だって足で稼いでも報われないときのほうが多いじゃないか。鑑識は何処かでつながっているんだと思ってやることができるからうれしいよ。」
「今回の事件、どう思う?」
益子が流すように言った。佐伯にとってはわかっていて展開であったが、嫌そうな顔を思いっきりしていた。
「嫌なとこつくね。やっぱり所轄でいたときより鋭くなっているよ。俺はさ、パソコンが鍵だと思っていて。物取りなんて細工が簡単だからね。誰かにとって嫌な情報を隠しているとかね。」
「そう思うか。俺もさ、若槻さんがコンビニの店長と話しているときに会社に勤めていると限らないと思って・・・。単純にわかる事件なら俺たちのところに回ってこないよな。」
応援っていう立場ではないのだ。解決する糸口をわかっているので声をかけられているのだ。所轄ほどの扱いじゃないほど自由に感じている。それが責任だとかにはつながらない。
「まぁ、どっちにしろやることは一つだよな。事件を解決する。組織にいるからって指示に従うばかりが能じゃないって教えられているから。」
「いい上司だよ。若槻さんは。遠藤さんもだけど。組織としてより被害者とを優先にするからすぐに上と敵対するけど図星過ぎてぐうの音も出ない始末だよ。あの2人がタッグを組むと強敵だと思うよ。」
「強敵だよ。どんな事件の時も手を貸すのは遠藤さんでしょ。内緒だとか言ってね。それを知っているから動いているんじゃないのかな。」
空になった缶を見つめた。風で流されたらゴミになってしまうが、ゴミ箱に捨てられたりリサイクルされるようにすれば新たな場所に行く道が決まっているように人もそうなのかもしれない。