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叫騒の歌  作者: 実嵐
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描いた道

マスターのこだわりの詰まったコーヒーを飲んでいると急ぎ気味でドアが開いた。そのためにドアにぶら下げてあるチャイムが乱暴になった。マスターは2人なのを知ったのか途中で空いた2人席に誘導してくれた。喫茶店にあふれている時代ではなくなったこともあるのだろう。喫茶店に入り込みたくなるのだ。

「武田、意外と早かったな。」

「まぁ、俺も野暮用って言ったって警察との相手だ。頭取も下手に口出せないだろう。元とは言え桜銀行にいたのは事実だからな。」

「それで話とはなんだ?」

武田は席に座る前にコーヒーを頼んだために、すぐにもって来た。若槻が武田に問いかけたら少し不敵に笑っているようにも思えた。

「電話をかけてきたのはお前だろ。俺もあるのはあるさ。榎並渉が殺されて榎並邦彦がぱったりと取引しなくなったんだよ。まぁ、義理の息子がいなくなったからという割には早いと思ってな。」

「そうだよな。榎並は大概のローンは桜銀行か?」

彼はコーヒーを飲みながらうなずいた。車も家もそうなのだという。別荘を建てる度に来ていたのだが、新たに別荘を建てたというのを別の銀行の行員から聞いたというのだ。ローンの利子など今や何処の銀行もそう変わりないので使っていてもおかしくないのだがそれもなくなったのだ。

「それも通帳も全て変えたいとか言い出しているんだよ。やけに早くしろといってきて今じゃあ榎並邦彦は事件が起きてから変わったから桜銀行の疑いの対象だよ。大きな声では言わないけどな。頭取も言ってる始末さ。」

「解約金を支払ってでも隠したいことがあるということか。」

「俺の見込み違いならそれでいいんだけど、お前が刑事がやっているから不思議と相談っていう建前でさ。」

榎並邦彦が不審な動きが目立ってきている。榎並渉が詐欺師とかの付き合いがあったのが邦彦が深くかかわっていたとしたら・・・。若槻の中で考えてしまうこともあった。

「そうだ。お前、上原信夫っていう刑事知らないか?」

「知ってるぞ。ちょくちょく来ていた時があったからな。本部じゃないから下手なことを言わないでくれって言われたんだよ。ハローバルの取引先がうちだったこともあったし、俺が担当していたこともあったからな。そういえば会ってないな。退職が近いとかつぶやいていたな。」

上原は桜銀行に来ていたのだ。そして武田に会っていた。上原のことを聞いてきたこともあまり驚いているようではなかった。

「あの人、退職したのか?」

「いや、夫婦ともども失踪している。」

そう告げるとコーヒーを飲んでいた手が止まった。


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