管理と体勢
次の日、生稲は警視庁にはいなかった。若槻に顔を出さなくてもいいといわれたからだ。刑事に事務仕事をさせるなんてと思っている若槻にとってはこの行動はあり得たのだろう。益子は鑑識へといった。せわしなく動く鑑識の人がいた。
「佐伯、空いてますか?」
「佐伯か。少し待ってくれ。捜査一課から無茶ぶりがあってね。生稲の行方を追ってくれなんて言われただけど子供じゃないんだし、仕事しているんだから目をつぶればいいのに刑事部長からのお達しだから聞かなきゃなんないってさ。」
若槻がバカという人だ。刑事となっても自分の支配下に置かないと気が済まないタイプのように思えた。刑事部長の家族は結婚はして子供も2人いたというが、刑事部長になってから暴力が激しくなって離婚して子供とも疎遠になっているらしい。
「生稲、携帯の電源を切ってますね。」
「それさ、若槻さんの頼みだから動くのが目に見えて消したんじゃないんですか。昨日、頼んでいたのを見ましたから。刑事でそれもうでもいいのにやめさせる目的で動かさないのはどうなんですかね。」
間瀬が捜査会議に訪れたら問いただすが、無視をするだろう。益子にもわかってしまうのだ。
「そりゃ若槻が嫌がる話だな。まぁ、若槻の言うこと聞いているのなら俺も安心だ。1人で動いているのなら必死こいて探すけどさ。鑑識は出る幕がないとしていってくるからな。」
遠藤は後ろに若槻がいるのを知っていたので無駄なことで探すべきではないと結論付けたのだ。事件を追っているのに組織によって動きを封じられるのを好んでいるわけではない。遠藤は捜査会議をやっているところに乗り込むのだろう。少なからず試したとかいって若槻の存在は消すだろうが。遠藤が出て行ったのを見て佐伯が彼の前に来た。
「迷惑な話だよな。捜査一課でもあろう奴らが組織の偉い人にいくら捜査をしているっていっても聞く耳持たないのが筋なのか。自分に対して責任なんて言葉を取りたくなくていい顔して逃げているだけだ。俺は好きじゃない。お前が若槻さんの元で動いているからいいんだよ。あの人は組織なんて言い訳は通用しないから。」
組織という言葉を嫌っているようだ。言い訳じみたときにしか使わないからだ。メンツがとかいっているのは全てかえって来る場所がある。それを知らずにさらに事件が起きても責任を取らないのならば、捜査なんてしなければいいとも思っているのだろう。佐伯がけだるそうにしている。
「あんな子供じみた事、本当に鑑識ごときが出る幕じゃないよ。何でも屋とか思っているんだろうな。」
「まぁ、そうとしか言えないけど。」




