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叫騒の歌  作者: 実嵐
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過去と今と・・・

「警察の方が最初に所見で自殺だっていっていたのに、ベテランの刑事さんが自殺じゃないかもしれないといわれて調べてみたら疑わしいところがあったみたいなんですけど・・・。それっきり会うこともできないんです。」

「その調べていた刑事ってわかりますか?」

高木は少し遠目で見るように思い出していた。それは大事な人だと思っているからだと。警視庁自体に来なくても他の署で受け持ってやっていた可能性があるからだ。益子が訪ねると高木は薄くなったコーラを飲んでいた。

「上原信夫だったと思います。少なからずよく歩いているのを見ていたんですよ。幸喜の部屋に何度も来ては考え深そうにしてかえってましたから。」

「ベテランならある程度はわかっていたでしょうね。できすぎたアリバイをもっていた人を疑っていた可能性もありますね。あぁいう人は相棒がいた場合は明かさないこともいいですから。」

「でも、本人には会えないと思いますよ。」

「どうしてそんなことが言えるんですか?」

彼のあまりにもはっきりとした言葉だったからだ。知っているような語り口調でもあった。若槻は益子の隣で空になったグラスを氷の汗で濡らしていた。

「数年前に上原さんの奥さんがやって来たことがあったんですよ。話を聞いたら退職する予定だったが、退職とはならなかったといっていたんです。」

詳しく問いただしたら上原の奥さんは突然、泣き出したのだ。高木幸喜の事件を追うといって出かけた切りかえってきていないのだという。それも退職前の最後の事件だということで張り切っていたとも。そして意味深な言葉を言っていたのだ。かえって来れるかかえって来られないかはわからないと。何故、若者が殺されなくてはならなかったのかを探さないと納得しないと。

「それでいまだに見つかっていないということですね。」

「はい。上原さんの奥さんもその時を機に手紙でやり取りをしていたんですけど、それもぱったりとなくなってしまって・・・。」

「上原っていう人は真実を知ってというところでしょうね。」

高木は話しているときに作るこぶしは傷ができてしまう位強かった。息子の事件の真実を知ってほしくないと思っているのだろうか。

「だから、幸喜のことを思ってくれるのはうれしいんです。ですが・・・。」

「貴方がいくら止めようと俺は捜査しますよ。俺には覚悟というものがあるんですよ。上原さんだってあったでしょう。」

高木は下を向き嗚咽を出していた。

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