変化といった
安いスーツを着ているように思えた。自分にかけるお金は少ないのではないのだろうか。高木はまっすぐとした目をしていた。
「高木さんですね。此処じゃ話しづらいことを話そうと思っているので、会社の人に了解を取っていただいたほうがいいですよ。」
「お気遣いありがとうございます。」
彼はそういって受付の人に事情を話しているようであった。警察が来ていることもあるため、引き留めることはなかったのだ。会社が一方的にダメだとは言えない状態になっている。3人で出て行った。
「息子のことを調べたんですね。」
「そうです。最初は別のことを調べていたんですが、いやはや世の中というのは単純じゃないわけです。」
ハローバルの近くのファミリーレストランへといった。そこでは人数分のドリンクバーを頼んでおいた。益子は紅茶を入れ、若槻はアイスコーヒー、高木はコーラを入れていた。
「俺だって息子の事件は終わっていないと思っています。会社が連名の中にあった息子の名前を消したと聞かされたときは怒りにあふれました。妻のあかねは幸喜が死んでから好きだった仕事から退いてバーをしていますよ。」
好きな仕事をやめてしまうほどの衝撃だったのだ。あかねは保育士をしていたのだ。憧れの先生とまで言われ保護者からにも慕われる人だったのだと幸則はぽつぽつといった。あまりにも残酷だったのだ。自分の子と同じように愛しせていたのが、子供が殺されたのではないかと思い出すと恨みしかなかったのかもしれない。
「何時も言っていたんですよ。妻には。無理をするなって。幸喜が殺されたと思った時から報われないとしか思えなかったんですよ。そしたら保育士をやめてバーに働きに出たんです。そこで腕が認められて自分の店を最近出したんです。」
幸喜が亡くなって以降夫婦の会話は減って行ったのだ。沈黙がいくら漂っても離婚という決断は上がらなかった。一方的に責任を押し付けることはできなかった。パーソナル環境開発が倒産しなかったら、ハローバルに受かっていなかったらと考えたらとしか思えなかったのだ。
「警察が悪いだなんていうのもいけないと夫婦で決めたんです。だって、最初の時に証拠を探そうと奮闘していたのを刑事さんから聞いてましたから。その人を無にしてほしくないんです。」
高木は震える手を感じていたのだ。犯人を捕まえてほしいと考えていたのだ。捕まらず、時間だけがむなしく過ぎていくのかと思ったのだと心苦しく思った。




