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叫騒の歌  作者: 実嵐
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憧れと比較

益子は飲み干した缶を眺めても変わらないことを悩むのが嫌になったため、生稲が去って行ったのを見てベンチから立ち上がった。生稲はきっとうまくいくと少しでも思ったこともだ。間瀬が高木の親のデータがないか鑑識とデータを扱う部署に頼んでいることを知って行こうとした途中でもあった。缶を捨て鑑識へと向かった。鑑識の部屋に行くときには捜査一課の連中が何処か妬ましそうに見ているときもある。大した名を持たない部署なのに、捜査一課の中で力をもっているのが気に食わないのがある。新たに捜査一課に新人が入る度に起こるので無視をしていればいいと若槻が言っていた。せわしなく動く鑑識の人を後目におかれている机の前の椅子に座った。

「なんだ。来ていたのか。益子君。」

「はい。忙しそうですね。」

「そうなんだけどね。・・・ちょうどよかった。来なかったら会いに行こうと思っていたからね。」

遠藤が気づいたのかラフな声をかけてきた。何か伝えたいことがあったのだろう。コーヒーが用意された。対面に遠藤が座った。今は鑑識のお偉いのようになっているが、なり立ての時は問題児だったという。

「話がしたかったのはな、久しぶりに顔を出したと思いきやいきなりお前の話を始めたんだよ。腕が上がったってな。若槻も刑事なって捜査一課に入った時に憧れの刑事がいなくて心底落胆したらしい。まぁ、代用くらいの師匠はできたんじゃないのかな。」

「刑事は憧れがいなかったんですか?」

「あぁ、それでたまたまある事件で早く来た時に出会った鑑識の人を憧れとしたのさ。それから交流をしているから長いことだな。」

その人物は鑑識の中で鬼という名称をもらっているのだという。遠藤の上司でもあったので交流が深かったのだ。名は明かされることはなかったが、老人ホームで暮らしているのだという。それも重度の認知症を発症していることもあってか親族は引き取っても世話をしないので、高額な施設に入ったのだという。

「世間のことを偉くしかっていた人なんだけどな。認知症になっても仕事の話は途切れていないんだと。それくらい没頭していた証なんだよな。・・・昔はいいことだった分、家族をないがしろにしてきたっていうことなんだよ。益子も家族を大切にしろよ。俺も言えた口じゃなかった。」

遠藤が言いたかったのは若槻が部下を自慢してきたことだったのだろうが、若槻の刑事としての歩みを知れたのはよかった気がした。別であっても憧れというのは必要なのだ。


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