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叫騒の歌  作者: 実嵐
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益子はうぬぼれぬまいと思って生きているのはある人間を交番時代に見たからだ。何時も交番の前を歩いて通る高価なスーツを着た男性が蟹股でかつ、何処か人を小馬鹿にしたような態度をたびたび見たことがあったのだ。彼の履歴は雑誌にもネットにも載るような有名人だった。だが、金に細かいのか偉くタクシーを使うのを拒んでいる姿を見た。電車を使ったほうが安上がりだといっていた。彼の秘書をやっている人は困ったような顔をしながらも従っていた。それは忠誠に近いものなのかはわからないが、眺めていたりもした。

「社長、困ります。」

そういって大きな声を上げたときもあった。それは秘書が大荷物をかかわらず、荷物を持つようなそぶりも見せず、ただゆったりと歩いていたのだ。その社長はよく益子を見る度にいっていたのだ。

「けなげに仕事をしているのか。警察というのは権力に弱いと聞く。私が狙われたときには君を指名したい。名を教えてくれ。」

「益子です。」

苗字だけを言っても警察には同じ苗字がわんさかいた場合はどうするのかを試しがてらいってみた。下の名を聞くかもしれない。そう思ったが聞きもせず、見向きもせず去っていた。その数日後、その社長は会社の金を横領していたことが分かった。今でも無罪だと弁護士の力を借りて言っているみたいだが、証拠を示すものがないので、テレビで弁護士が彼は無罪だといったところでまた繰り返しているとしか思われない。かなり抵抗もしているようだが、見るに無残なのだ。栄光に浸っていた時とはまるで扱いの違いに驚いているのではないのだろうか。益子はアパートで安い発泡酒を飲んだ。疲れ切ったからだには染みるのだ。新聞やテレビ、週刊誌も取り上げているのはもっぱら社員を敵に回したばちでも来たのだろうかとも思ったのだ。彼の記憶には鮮明に残っている言葉があった。その社長は名を知ってから益子がいると立ち寄って絡んでくるようになった。

「金持ちはね、人を扱えばいいんだよ。君みたいな人間はただ尽くしておけばいいんだよ。私にはそれくらいの権限をもっているんだ。わかるか?」

「はい。」

そう答えだけだったが、満足そうに去っていたのだ。その人が一体どんな判決をもらうのかを楽しみにしている部分もあるのだ。表に出てこず、無罪だと言い張るだけで謝罪もないのだ。自らの顔に泥を塗っておいて他人の所為にするのだ。陰謀だというしかないのかと思ってしまうのだ。益子はため息をつきながらテレビを見た。


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