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叫騒の歌  作者: 実嵐
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グラスの中は

「父親が入って来た時は驚いたよ。義理の父親のこともあるからさ、とどまらせてくれとかいうんじゃないかと思って周りもひやひやしていたんだ。けど、やっぱりこの人は違ったね。やめさせてくれだもんな。あと、こういっていたな。息子が会社の金を使っている可能性があるって。」

「横領かいな。そりゃ困った息子だね。」

おかみさんは自分で飲むための焼酎を大きなグラスに注ぎこみ、グラスがいっぱいになるくらいに水で割った。濃い味を好むこともあってか大きなグラスで豪快に飲むのも気分がいいものだ。

「父親がそういうのには息子の奥さんの金遣いが荒くなったんだってさ。2人の金じゃやっていけないって嘆いていたのが一変したのが核心につながったらしい。すぐには止められないからよ、数日後には榎並は有無を言わさず休暇扱いにして休ませるのは会議で決まっている。」

家族の不自然は異様に目についてしまうのだろうから。見て見ぬふりをするほどの悪を持ち合わせていなかったのだろう。だから、この機にいってしまって過ちを悔いてほしいのが親としての本音だろう。それがあったので遅くなったのだ。

「まぁ、こいつを調べたときにもわかるんじゃないのかな。今の時点で脱税には関与しているのは確かだし、そこでも金をもらっていた可能性も大ありだ。何処で出てきたとしても会社としては処分ができる状態だ。」

「いいんだか悪いんだかわかりっこないよな。」

おかみさんはいつの間にか飲み干したのか新しい酒を注いでいた。カウンターからのぞいて見えたのは赤色だった。横領を疑うのは身内なのだ。榎並自身守ってもらえることを考えていたとしたらどうだろうか。娘のためにやったのだといわれたらどうするのだろうか。

「1つだけ助言をやるよ。お節介な婆からの長年を見てきたから言える言葉だ。間違いは間違いだと正さないと何処までも嘘を認めた会社はつぶれるよ。言い訳だけを並べる会社は今まで見てきたが、ふがいないね。」

「そうだね。おかみさん。」

武田が少しだけ吹っ切れたのか笑顔を見せたとき、おかみさんも納得をしたのか返す笑みは何処か不敵でもあり、ほほえみにも見えるような顔をしていた。おかみさんに飲み干したサワーのグラスを渡した。すると、すぐに新しいサワーのグラスが出てきた。準備ができているのだ。あまり多くを言うことがなくていいと思っているのだ。おかみさんも歳だからやめるだの言っているが、周りが辞めるなということもあってか今に至る。

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