見えている世界とは
明らかに警備をしていた警察官に対して嫌な顔をしているようであった。若槻に余計なことを言うと突っつかれるのは知った話なのでやめておいた。そのまま、若槻は警視庁へは戻らないために間瀬が情報を分析して渡すというシステムになっているのである。細分化というのはやっていないのだ。益子はいったい何が起きているのかは理解できていない。
「どうしてさっきの警官に対してあんな強い言い方をしたんですか?」
「知りたいか?」
「はい。」
真面目な顔を益子が見せているにも関わらず、若槻はそっぽを向いたような感じでいる。彼にとっては厄介であり、嫌なことでもあったのだろうか。路地をとぼとぼと無言のまま歩いた。大きな道路に出たとき、ぽろっといった。
「くだらないことに時間を費やすんじゃない。まぁ、知りたきゃ刑事部長にでも聞くんだな。それか捜査一課の連中。上の世代ほど俺への当たりが強くないだろう。刑事部長との態度が違うからそこからでも聞けばいい。鑑識は言い伝えられているんじゃないのか。」
益子はその言葉を飲み込めなくて上を見た。空はきれいだとは言い切れぬほどの曇っていた。黒い雨雲に誘われているのは心なのかと思ってしまえる。いくら高いビルに上ったとしても晴れぬ心と戦うしかないのだからと。若槻は近くのコンビニへといっていた。店長に友達のように和気あいあいに話している。
「店長、昨夜の防犯カメラ見せてよ。」
「いいよ。あそこのアパートの人だろう。苦情でよく警察が来ていたけど聞くことほどお人よしではなかったんだよな。警察ってのはあれだろう。事件が起きてからってな。」
からかうような口調に若槻のおどけたような表情はいたずらを仕掛けた子供と変わらない。はじけていた。
「どうして此処の防犯カメラなんですか?アパートから離れているじゃないですか?」
「離れていたほうがいいんだよ。遠近法とか言ってるじゃないか。あと灯台下暗しってな。まぁ、そう都合のいいホシなんていないさ。」
殺害されたであろう時刻はまだ上がっていないのに、防犯カメラを見ている。いったいどうしたいのかと思っているのが言えない。近くをスポットライトのように照らしている。車が入ってくるのしか見えない。これが世にいう収穫なしということだろうか。なんて思っているだけなのだろうから。
「あっ、いたいた。該者だよ。こんなところでうろうろしている。」
「よく夜になるとうろついている人間がいるって通報されていたよ。」
「強盗を働くほど金はなかったってことね。店長、有難う。参考になった。防犯カメラは捜査一課って名乗った別の人に渡しといて。だからうろついているところから全て残しておいてね。」
「わかったよ。」