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叫騒の歌  作者: 実嵐
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紐を結ぶ

若槻はベンチに座って待っていた。益子の同期の生稲だ。若槻にとっては関係ないとは言い切れないからだ。益子と同じくして警視庁に入って来た。その時の捜査一課は先に生稲を選んでいた。所轄時代にかなりの腕を見込んだのだ。生稲の持ち味はデータを使っての分析であったのだが、それを感じることができなかったのか知らなかったのか捜査一課の連中が扱いを誤った。それゆえにお荷物といわれるまでになった。もし捜査一課がいらないというのであればこちらに明け渡すのもありだと考えたのだ。生稲も益子に対して皮肉を言っても戦えないのを知ったのだ。

「あのー・・・。若槻さんですか?益子が貴方に呼ばれているといっていたので・・・。」

「あぁ、そうだ。突っ立っていたってしょうがないからとなりへ座りなさい。そうだ。生稲君、何を飲む?何が好きかな?」

「微糖のコーヒーを。」

弱弱しい声を出している。彼を横目に見たが、わざと多くは語らず座った。痛いほどわかっているからだ。

「週刊誌に喧嘩を売ったのは君じゃないだろう。」

「そうです。俺じゃありません。現場にいたんですが、外にはおらず中で何か残っていないかとか見落としていなかったか見ていた時に起きたことなんです。週刊誌に写真が載っていますが、俺のもっているスーツとは違います。」

「何処の週刊誌かわかるか?」

生稲は週刊誌の名前を言ってどうするのかという顔をした。缶コーヒーが取り残されたように腕から落ちそうになっていた。

「シーズンだった気がします。」

「たぶんで構わないからね。違っても確認できるから。」

シーズンはかなり読者が限られる。たぶん、名前なんぞ書かれていないので誰が言ったかなんて曖昧にすることができた。彼の相棒は出世にしか頭にない奴だというのを噂になっている。

「今回は益子の同期ということでやってやる。だから、益子には感謝しろよ。次は君が出世だけじゃないってことを見せてくれたら少しでも考えてやるから。やめたくないのなら・・・。」

若槻は言い捨てるようにしていった。生稲は以前の勢いは消えてただうなだれるようにしてうなずいた。一度痛い目に遭うともう会いたくないと奮起を出すのだ。ただ自分の落ち度を認めなかった奴には大きな罰が当たるのだ。若槻は益子の肩をつかんで去った。週刊誌を敵に回すよりも敵に回したくない人間だとして挙がっているのを知っている。ぬけぬけとした顔で簡単に相棒を売った奴の顔は恐ろしいほど緩んでいた。

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