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叫騒の歌  作者: 実嵐
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渦の中は見えない

空っぽの部屋には数えるほどの人間しかいないが、そのために電気を使っている。間瀬はハローバルからもらったデータを捜査一課の連中がせがんできたらしい。だが、若槻に話を通していないと丁重に断った。若槻に話を上げると何処かで揚げ足を取られる人間が生まれるのを嫌がったのだ。それがきっと鵜坂のところにもやって来ただろう。それを断るのが筋だ。鵜坂もまた若槻に認められていることを実感しているから下手な行動はしない。廊下からドアをこんこんと鳴らしている。

「誰だ?」

「俺ですよ。若槻さん。」

鵜坂であった。ハローバルのデータを間瀬よりも詳しく分析できるので頼んでいる。腕はいいのだが、持ち合わせているパソコンでは限度があるがためにやれないのだ。嘆いていた時期もあったがそれを超えてしまうとどうってことはない。むしろ、パソコンを貸してくれればできるのだから。のそのそと歩いてくる。

「鵜坂。どうだった?」

「あれはいけませんね。担当者がかなり変わっていて管理がなっていません。高木になったのは最近です。やはり、最初は会っていたようですけど、ぱったり会うこともしなくなったみたいですね。リーチというサイトを扱うのは厄介者というテイストに変わっていたこともわかりました。」

「そうか。やっぱり、事件があっただけにうんざりしていたんだな。」

間瀬のパソコンに合うようにしたUSBが置かれていた。これで全てを知れと言ったことなのだ。鵜坂はほほえましそうに眺めているときもうかがうこともできる。

「ゆっくりしていけばいい。どうせ此処にいたことが知られても怒られはしないだろう。」

「ですね。だって、上司は此処に来ることや休憩することも許されているんですから。データに押しつぶされそうな輩もいますけど。」

彼は間瀬の机の上に座った。そこでなれた手つきでコーヒーを注いだ。少し薄まったコーヒーでも構わない。データの結果だけで判断をしない人だと知っているから。捜査一課にいながら異端児だとして嫌がる人もいたほどだ。嫌がった人間が出まかせを言った時には出まかせだとわかっていたが認めたのだという。別の人間が請け負うだけになって責任逃れをずっと見せるよりもいいと決意して此処にいる人だから。刑事部長がいくら胸を張って偽りの権力だということを知らしめた瞬間だった。リーチの事件が未解決のまま、上へと上がることができたことも謎となって警視庁の中では渦巻いている。


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