振り返れば・・・
明星というきらびやかな名前を付けていた。看板も予想外くらいにさび付いているようにも思えるのに客が絶えない様子だった。内装はこだわっているのかと思って恐る恐る入ってみた。いったことのない世界へと無理やり行かされているように。益子が怯えているのを若槻が見た。
「これに怯えていたら暴力団あさっている連中のほうが怖いだからな。これしきりどってことないよ。あって脱税か薬だろうな。」
重苦しいドアを見た。高かったということだけだ。ドアを開けると大声に響き渡っていた。うるさいといいたいが、言えない。ウエイターがのんびりしていた。
「此処に最初からいた奴いる?話が聴きたいんだけど・・・。」
「お前、ナニモンなんや。此処に最初からおった奴は2~3人おるわ。でも、舐めた目されたらやり返したるわ。」
「そんな態度をとっていいのかな?俺はさ、穏便に済ませたいの。それなのに大ごとにしたのはそっちだからね。」
若槻が堂々と警察手帳を見せて、怯え切ったウエイターが開いている人のところに誘導してくれた。事情を知ったのか恐縮しまくっている。高いスーツに身構えているだけで口で金を稼いでいる。うまいことを言うかそれか客の調子かによるのだろう。
「君、名前は?」
「金石信二です。」
「そっ。それでさ、此処にいるのなら詳しい話を聞かせてもらえない?此処は売っているの?」
金石は驚いて首を横に振った。予測がついたのだろう。過去に警察が訪れたことはあるのか少しばかり縮こまっているのが演技にも見えた。
「あんたさ、警察が来たことがあるだろう。演技しているのは丸見えなんだよ。見苦しい。やめろ。」
若槻は人の行動には異常に目を光らせている。金石は若槻の地雷を踏んでしまった結果だ。高級なワインを取り出してきて、機嫌を直せとあおっているようなものだ。
「たわごとをやめておいたほうがいいぞ。あんたがオーナーになっているようだし、二課の連中は喜んでくると思うぞ。」
「それだけはやめてください。全てを話しますから・・・。」
脱税をしていると認めたようなものだ。きらびやかなのに内装も外面も汚かったのに目がついていたのだ。ある程度の維持するには金が付きまとってくる。逃げきれないものなのだと知っているからだ。それを逃れるほどの愚かなことはできなかったのだ。嘘ではまとめられないのを知っている。金の隠しどころは沢山あふれているものなのだ。それを知らなかったふりにはできない。




