寂しげな明かり
地名も書かれあったのですぐに若槻は車に乗るといった。先に明星という名のホストクラブが健在しているかが気になるらしい。車で乗って行ってみると繁華街といっても過言ではない場所だった。スカウトマンらしき気取った若者が騒いでいた。夕方に近づいていることもあるだろう。コンビニで買った缶コーヒーを飲んでいる。若槻はしり込みすることなく、ずかずかといった。
「ねぇ、君たち。そんなところで何をしているんだ。邪魔じゃないのかい?」
「なんだよ。おじさん。引っ込んでろ。」
「引っ込んでたいんだけどね。やむ負えない事情ってのがあってね。」
警察手帳を印籠のように見せた。驚いてドタバタと片づけ始めている。そこで1人の気弱そうな青年に声をかけた。
「此処に明星っていうホストクラブを知らないか?」
「ありますよ。だって、あそこはつぶれない店だって有名です。あんなことがあったのにつぶれないのは何かつかんでいるからじゃないかって噂になってますよ。」
「あんなこと?」
益子は茫然と立っているしかなかったが、見えない迫力を実感するしかない。若槻はこういったこともやっていたとは聞いていなかったからだ。情報の引き出し方はうまいので逆らうつもりもない。問答ない。
「リーチっていうサイトで客の悪口を書いていて、特に貢いでくれる客ほど書いていたんですよ。だから余計に怒らせて来なくなった客もいたんですよ。けど、すぐに戻ってきてオーナーはほっとしているとか聞きました。」
「それ何時のころ?」
「SNSで殺人が起きたじゃないですか。それより半年から1年くらい前ですね。管理人が一体誰なのかも知られていなかったですし。明星の奴らも知らなかったんじゃないんですか。」
尾崎の存在が一番なかったことにされるだろう。吐き出し口を作ったのだから。
「リーチっていうサイトを誰かが漏らしたとか言って犯人捜しをしていた時期があったって言ってました。まぁ、ひどかったみたいですよ。嫉妬とかで勝手に決めつけてやったこともあって特定できなかったってつぶやいてましたよ。」
力技の聞き込みは先入観によって鈍った頭を変えていないのできっと大ごとになっていただろう。ウエイターはそこには除外されていたとも言っていた。尾崎は管理人でありながら達観して眺めていた。ホストの吐き出し口として大きくなっていたのがなくなったのだ。
「まぁ、あそこほど闇が深いところはないって言ってますよ。オーナーもオーナーだから。」
暗くなっている。そこに薄暗いくらいの明かりがひっそりと眺めているようだ。




