伝えること
「間瀬はいいね。そこらのデータを扱っている連中とは違う。フットワークの軽さは抜群だね。」
「あいつと俺は痛い目に遭って此処にいるんですよ。だから、もしいなくなった時に引き継げる奴くらいはいてほしいのが本音じゃないですか。」
片桐は分析が済んだのか少し疲れ切った表情を見せた。丁寧なくらい自分の机をきれいにしている。片付いていないとやっていけないのが全てなのだろう。遠藤が声をかけるのではなく、彼の肩をたたいた。彼にたたかれた人は言うには少し痛いくらいだと苦笑いをするのだ。
「尾崎は調べたところ、ホストのウエイターをしていた履歴があります。もともとホストの吐き出し口としてリーチという名で使われていたんです。それが何時頃からかホストは使わず、一般の人の吐き出し口として存在が大きくなっています。」
「ホストね。大学の時にバイト感覚でやっていたんじゃないのか。いっていたホストクラブの名前までわかったらいいんだけど、まぁ多くは求めてはいけないからな。有難う。引き続き頼むよ。」
ハローバルからもらったデータを分析するには人数が多すぎる。だから分けてもらうのが先と思っている。手詰まりの状態から脱却したいのが本音だ。若槻と益子は鑑識の部屋を出た。自販機コーナーのベンチに座った。
「ありゃ問題がなかったらホストがずっと使っていただろうね。そして、殺人の道具には使われなかったな。」
「ホストクラブを当たりますか?」
「何処かってわからないんじゃダメだな。鵜坂に会ってみるか?」
「俺ですか?」
鵜坂が立っていた。休憩時間に入っているというよりかは行き詰った空気から逃れたかった。データと対面をしているというのは疲れがたまるのだ。それでよく自販機コーナーや間瀬の前に現れたりするのである。
「ホストクラブの名前わからなかったか?」
「あぁ、載ってましたよ。堂々と。初期は本当に限られた人間が使う道具だったんでしょうね。客の悪口とか書かれていました。それも大ぴらだから誰か行っている人ならわかるだろうなって思って眺めましたよ。」
ホストクラブの名前は明星というらしい。凝った名前というよりか浸透を心掛けたようなものなのだ。一時は下がったとも書かれていたという。客に何故かばれたと。ばらした人間を探す犯人捜しを下手に行ったとしたら・・・。そこでつけが回った人間が現れたら心底嫌だろう。それもそこで大金を稼いでいるようであるほどだ。嫉妬だろうか。




