消えぬ思いとともに
警視庁に帰ってくると妙な疲れが襲ってくる。いったい何に対してなのかはさっぱりわからない。わからないのに問われるのが困る。
「おかえりなさい。どうでした?ハローバルは。」
「何も変わっていなかったよ。制度化しても曖昧になって機能していなかった。まぁ、お前も予想はついただろう。」
「はい。・・・それと若槻さんが行った後に鵜坂が来ました。何か言いたげでしたけど、本人の口からきいていないんで。」
間瀬は伝え終わったというような態度よりかはまだ聞きたいことはあるかといわんばかりだ。パソコンをいじったりしているのはデータがあるかだと知っていないと怒られるような態度に過ぎない。収穫はないということはないといっていた意味を知った気がする。益子は一息つくために自販機コーナーへと足を運んだ。そこには生稲が上司に怒られたのか不貞腐れた顔をしていた。そして、彼は益子を見つけるなり、にらみつけた。
「どうだ?捜査一課さんは。」
「収穫なんてあったらこんなところ来ないよ。物取りじゃないんじゃないかといっても上の人は聞かないし、管理官もそれについては興味なさげな顔してさ。それで俺、怒ったんだよね。柔軟に考える必要があるのに立ち止まってるって。」
「そりゃ怒られるだろう。個人のためじゃなくて、組織の威信のためといっている連中が自分の欲に絡むのは当たり前。それを知っていて言ったのならいいけど、知らずに言ったのなら・・・。」
益子は言わなかった。自販機からお茶を買った。凝ったものが多くなっているので久しぶりに飲みたいと思った。コーヒーとは違う苦味におぼれてみたかった。ペットボトルの頼りない音を聞いたとき落ち着く。ベンチに座った。独占していた生稲は少し端へとよけた。
「お前は幹部とかになりたいとか今でも思っているのか?」
「それは・・・。思ってるよ。だって、此処までこれたのならって益子は思わないのか?」
「俺はさ、下手な正義感を持つよりも自分だけが誇れる欲を持ったとして、根本の被害者は喜ぶか。結果論でなったのはそれでいいけど、隠蔽とかして得たのは誇らしいとは思わないから。組織のためは言い訳に過ぎないんだ。嘘の正当化ってな。だから、俺は今の場所が心地いいんだよ。せかされない。ただ、自分の尾の向くままにやっても怒られたことないから。」
若槻は別の意見として採用してキチンと処理をしてくる。納得がいくまで鑑識やデータ集めを許してくれる。所轄の時はなかった待遇としか思えなかった。




