決選
榎並は嘆きともとれる言葉しか言わない。それも嘆かわしい限りなのだが全くもってわかっていない。
「高木幸喜の事件もうまくいったとは言えないじゃないんですか?」
「そうだ。上原という刑事が今更ながら聞き込みを始めたんだ。自殺で決着をついているのに、遺族はついていないから依頼を受けた形でやっていると堂々と言ってきやがった。腹が立っていたのもあったし、ある程度は絞り込めているとか言いやがった。秘書は小道具だとしか思っていないとか説教し始めたりもした。」
上原はきっとわかっていたのだろう。退職前に抗ったとしているのだろうか。それすらも理解していないのだろうか。榎並は居心地が悪いのかふらふらと歩いているようだ。ステージには滴る汗を見るしかないのだ。
「それで殺すように命じたというわけか。くだらないことをしたな。」
「お前に何が分かる。俺は国を変える覚悟と世界を変える使命が携わっているんだ。こんなくだらないところで終わってたまるか。」
「そんなことを言っても終わりますよ。くだらないことといっているが、人を殺しておいて何を言っている。義理の息子も尾崎峰雄は事実、手を下しているのをわかっているのだ。貴方の人生は榎並物流を倒産に導いた時点で終わっている。抗って無駄な時をしているのは貴方のほうですよ。散々、人の人生をもてあそんだ結末ですよ。」
そういって榎並邦彦に手錠をかけた。見ていた客は拍手が起きた。それから警視庁へと移送した後に全てが語られた。警備員は暴力団の幹部に捕まっていたらしいが、捜査一課が捜査をしていた時でよかったのだ。無事保護をすることができた。
この事件が終わった後に捜査一課の在り方について考えるようになった。未解決事件が引き金になったことも加わっている。若槻は事件が終わった後は暇そうにしていた。
「若槻さん、辞令を見ましたか?」
「いいや、そんなものを見たところで変わらないだろう。」
「変わってますよ。見たほうがいいです。」
益子の催促によって辞令が張られているところに行った。かなりの人だかりができている。人の間から見ると若槻純太と書かれていた。捜査一課長と書かれていた。
「捜査一課の総括ですって。」
「柄でもないことをさせる。」
若槻が少し人込みから離れると遠藤がいた。
「柄でもないことになってますよ。」
「俺はそうとは思わないがな。お前にあっていることだと思うぞ。此処まで人が変わるんだからな。」
遠藤は楽しそうに笑った。




