表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叫騒の歌  作者: 実嵐
114/122

現実と非現実

武田には姉がいたが大学で行ったきりという感じでなかなか実家に寄りつかなかったうえに大学院まで言ったとすれば武田に期待なんてないのがまるわかりだったのだ。そのこともあってか武田と姉の関係はよくなかった。今じゃあ武田の姉は研究者になりかけたが、上には上がいるのでやめてしまったらしい。会社員として働きだしたのだ。

「姉貴はさ、研究者になりたかったって嘆いているらしいんだけど、俺は知らないとしか言わないからな。仕事の相談なんて言われないし、相手にしてないよ。俺の立場が専務だって聞いてさ、今更ゴマをすってるのって嫌気がさすから。」

会社の立場をよく知ってかでゴマをすりだしているのだ。大学院まで行ったとするプライドはあるのだろうから。会社の中の扱いはもっぱらペーペーと同じなのだという。一種の常識からかけ離れているところもあってか会社じゃあ邪魔もの扱いを受けているのだ。それ聞いた武田の母親は怒鳴りこみそうになったのを彼が止めたのだ。もう口出しをする立場じゃないかって。父親は仕事ばかりの人間で家庭に顧みなかった人だったのは今も変わらない。会社に入る前に受けたであろうビジネスマナーすら抜け落ちている始末だ。手に負えないに決まっている。

「それじゃあずっとお姉さんに会ってないんだね。」

「会うとしたら親父やおふくろが死んだときくらいさ。遺産がどうだのって口うるさく言うに決まっている。割合すらわかっていないんだから黙っていりゃいいのに余計な口出しをするんだよ。研究者としては立派になるつもりだっただろうが、社会に出てそのままじゃ困りものだよ。親戚も困っているって言ってさ。」

親戚の家にいった時に聞かされたのだ。図々しく家に入り込んだ癖に質が悪いのは此処が悪いだの言っていなくなったのだ。そのことで気分を害したと母親に電話してきたという。それに対して母親は謝るしかなかったのだが、電話を切ると親戚が悪いのだととたんに母親は姉の擁護を言い始めた。大学院まで行ったことが誇りだったのを覆すような言い方をされたのだろう。

「姉貴には一人前のプライドと反比例するかのようにある社会としての常識が釣り合っていないから困っているんだ。俺もそこまで姉貴との関係が深かったわけじゃないからどうにも言えないからさ。」

家の中では姉と比べられてうんざりしていた。それでも社会に出て姉に勝ったと思うようになった。ちやほやされた痛手だというのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ