言葉の広場
若槻と益子は高校に来ていた。下見をするためだった。間瀬もついてきてほしかったが、資料を作っているので来れないとのことだった。玄関から入って職員室を探した。こじんまりとした感じであったのだ。ドアがガラガラとなった。
「あのー、警察の者ですけど・・・。」
「あぁ、わかりました。担当の人を呼びますから。」
年配とみられる女性がこそこそと歩いて行った。学生の声が少ないのは部活に活気がいってしまうからだろうから。応接室に連れていくべきか悩んでいるようであった。警察だなんて人は遭わないのが一番いいに決まっている。
「俺たちって歓迎なんてされないですよね。」
「当たり前だろ。天下りをしてる連中にいい顔をする奴なんていないし、事件が起こったかなんて思いを起こさせる職業なんだ。」
「あの・・・立っていないでこちらで座っていてください。担当の教員が授業中だったもので・・・。」
「お構いなく。」
導かれたソファに座った。学年によっても違っているがドタバタしているのは変わりないのだ。受験生を抱えている教員には頭が上がらないものだ。若槻は置かれたコーヒーカップに手をかけた。チャイムが鳴って学生がドタバタと流れ込んでくる音がした。まんざら質問に来る子ばかりじゃないのは身に染みている。少し若い男性が来た。銀縁の眼鏡をしている。
「すいません。」
「いいんですよ。アポを取らずに来たものですから。」
「いえいえ、僕もなり立てなのでまずはということで文化祭を担当するのはいいんですけど、こんな大ごとになるとは想像していなくて・・・。」
冷や汗なのか何なのかはさっぱりわからないが、彼はハンカチを取り出し汗を拭きとった。置いてあったコーヒーもすぐに飲み干してしまう位だ。新人の教員が全てではないだろうが、ある程度の責任を負っていてあたふたしているのがわかってしまうほどだ。汗を拭き終わっても汗を拭いても流れてくるようだ。
「榎並邦彦が此処の卒業生だと聞いたんですけど。」
「そうみたいです。僕も此処の卒業生なので何故か毎年の文化祭に説教しに来る親父がいるなって思っていたんですよ。毎回言葉が押しつけがましくてあまりよく思われていなかったですね。」
一応映像を取っているので見ませんかといわれてテレビのある部屋とつられた。DVDを取り出した。最近のものなのだろうか。映像がとてつもなくきれいだった。榎並が語る前の冒頭にこういっている。私が此処に来るのは此処の卒業生であると同時に校長と友人だからだ。




