キスの日(ハッピーエンド後の溺愛編)
「ツンデレ治療師は軽やかに弟子と踊る~周りは二人をくっつけたい~」の完結後の話です(一応)
天気もよく、青空に乾いた風が心地良い日だった。
先ほどまでメイドに詰め寄られていたクリスは、ゲッソリとした顔で庭を歩いていた。背後にある柱の影から、メイドたちの視線が突き刺さる。
クリスは早くこの視線から解放されるために、目的の人物を探した。
この時間なら、庭で日課の鍛練をしているはすだ。
そう考えてクリスが庭へ移動する。そこには予想通り、模造剣を振っているルドの姿があった。
剣を振るたびに揺れる赤髪。まっすぐ仮想の敵を睨む琥珀の瞳。真横に閉ざされた口。その真剣な表情に、自分の状況を忘れて見惚れかける。
が、今のクリスにルドを眺めている時間的余裕はない。バクバクと暴走しかけている胸を抑え、ルドに突進する。
クリスはルドの前に来ると、前置きなく命令した。
「ちょっと屈め」
「はい?」
突然のことにルドは不思議そうな顔をしたが、疑うことなく屈んだ。そのことにクリスが嬉しくなる。
ルドは魔法騎士団に所属しており、警戒心が人一倍強い。それが、自分に対しては一切なく、無条件で信用している。
思わずニヤケそうになった顔を引き締める。そこに視線が同じ高さになったルドが、無言で見つめてきた。
クリスが急いで顔をルドの首筋に近づける。
「チュッ」
ルドの耳元で軽い音が響く。右耳に付けている魔宝石が微かに揺れた。
「な、なんで磨宝石のピアスに!?」
驚くルドからクリスが顔を逸らす。顔がみるみる赤くなっていくのが分かる。
クリスは顔を隠しながら、慌てて説明をした。
「メイドたちが、今日はキスの日だから、と五月蝿くて……へっ!?」
クリスの足が地面から離れる。体が宙に浮いたと思ったら、ルドの肩に担がれた。
ルドの汗の匂いが鼻をくすぐる。クリスは匂いにつられてボーとしかけたが、頭を振って我に返った。
「なぜ担ぐ!? 下ろせ! どこへ行く!?」
「煽った師匠が悪いです」
騒ぐクリスを物ともせず、ルドが部屋へ一直線に移動する。その様子をメイドたちは、柱の影から満足そうに見守った。
続きをこっそりお月様の方に短編として投稿しました……|ω・)
こういう未来もある……という感じで、生温かく見守ってください……(*- -)(*_ _)ペコリ




