表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

キスの日

キスの日らしいので、即席で書きました

 クリスは治療院研究所の自室で、棚の上の方にあるガラス瓶を取ろうとしていた。


「クソッ、あと少し……」


 精一杯背伸びしても、あと指先一つ分届かない。こういう時、ルドなら何事もないように取って渡すだろう。

 その光景が頭に浮かび、癪にさわる。


「ちょっとばかり背が高いからって、いい気になるなよっと!」


「師匠、頼まれた本は……って、危ない!」


 クリスがジャンプして触れた瓶がバランスを崩し、隣の瓶たちまで巻き添えにして落ちてきた。反射的にクリスが床に身を屈める。そこにルドが庇うように全身で覆い被さった。


 棚から落ちた瓶がルドの背中に当たり、床に転がる。痛みはあるが、怪我というほどのものでもない。


「大丈夫ですか?」


「あぁ。おまえのおかげで……」


 ルドが腕の中のクリスを覗く。すると、ちょうどクリスも顔を上げたところだった。


 ふにゅ。


 クリスが顔を真っ赤にして自分のおでこを押さえる。ルドは顔を青くして両手をバタバタと動かした。


「す、すみません! ワザとではないんです! その! たまたま偶然!」


「わ、わかっている! それより頼んでいた本は!?」


「こ、こちらです!」


 ルドは投げ出した本を拾ってクリスに差し出した。


※※


「と、いうこともあったなぁ」


 クリスは唐突に思い出した記憶を懐かしんでいた。なぜ、今になってこの記憶が蘇ったのか分からない。


 今は目前で無防備にソファーで昼寝をしているルドがいた。腹の上には本があり、規則正しく上下している。


 その寝顔にクリスのイタズラ心が疼いた。


 おでこにかかる赤髪をそっと横に流す。そして、表れた額に唇を寄せた。触れるか、触れないか、ギリギリのところで止める。


「これで、おあいこだ」


 クリスが素早く部屋から出ていく。廊下を走る足音が消えた頃、部屋に残されたルドの顔は真っ赤になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ