表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Nightslayer-ナイトスレイヤー-  作者: 荒波ゲオルク
5/5

VS Brack Fang

 皆様お久しぶりです!荒波ゲオルクです!

 試験勉強でしばらく休止していましたが、再開します。大変お待たせしました。

 それでは、Nightslayer 第五話をどうぞ。

 オイルとサビの臭いが充満する自動車整備工場内で浩が両拳を握り、拳が目線よりやや上になるように腕を上げ、若干右半身を後ろへ引き、重心を後ろにある右足に移し、左足と両腕はシンクロさせて上下に動かし構えを作る。目線と闘気を黒牙(ブラックファング)の隊員達に向ける。

 戦闘が始まる予感がするため、自慢の黒々としたロングヘアを目に入らないように耳に掛ける。

 教えてもらった通りに銃の安全装置を解除して臨戦態勢に入る。双方の緊張がより高まる。

 さらに、浩は隊員達を睨み殺さんと獰猛どうもうな目でガンを飛ばす。自分に向けられているものではないのに、瞳を見るだけで全細胞が生命の危機を感じたが如く後ずさってしまう。

 私が危険を感じたのは視線だけではない。

 どす黒い宵闇の中でも圧倒的な存在感を放つ浩そのもの・・・いや、浩の(まと)う「闘気」と「覇気」ね。恐らく。

 普通の人でも努力次第でそれらは纏えるだろう。でも、浩のそれは人智を超えた領域に達している。

 そう。私の前には「鬼」が居る。

 鬼が口を開く。吐く吐息が白い煙となって上へ登る。

 短く息を吸い込み、腹に力を入れる。圧縮された空気は気管を這い上がり、声帯を震わせ、口から啖呵となって出てくる。



()ろうじゃぁ?」



 その一言がトリガーとなって互いの殺気と緊張が臨界を突破する。

「いえあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 金髪の男が浩との距離を詰め寄り、右手の木刀を奇声と共に力任せに振り下ろす。

 浩はそれを冷静に左へ移動し、かわす。間髪入れずに左ジャブを金髪の男の顔面に叩き込む。

 男は上体反らしでギリギリ避け、右ストレートを喰らう前に急いで距離を取る。

 男は右前蹴りで牽制しようとするも、浩はガードで蹴りを受け止めたのち金髪の男を強引に押し返し、反撃の体勢を整えようとするが、そんな暇も与えず木刀が顔めがけて左上から喰らえつく。ーーーように見えたが、鞭のようにしなやかな左ハイキックを体の軸を回転させながら放ち、木刀を粉砕する。

「木刀を・・・粉砕・・・?」

 人間業にんげんわざじゃない。こんな蹴りありえない。隠れていたつもりが思わず声をあげてしまった。金髪の男もかなり動揺しているようだ。

 浩はすぐさま男の右膝に右ローキックを当て、怯んだ隙に左ストレートを顔面へめ、一気に流れをこちらへ持ってくる。

 浩もやられっぱなしではない。

 間髪入れずに当たれば人を吹き飛ばす威力の右ストレート、続けて左ストレートを繰り出す。

 左ストレートをギリギリで避けられるが、避けた先へ右ローキック――――――はフェイントで美しい弧を描く右ハイキックを頭めがけて打ち込む。ギリギリの回避をしていた相手はガードが遅れて蹴りを防ぎ切れず、蹴りを首に食らう。ダウンは奪えなくとも体制を大きく崩した。

「くっ・・・そったれがァ!」

 蹴りによって少しフラついていたが、しっかりと踏ん張って再び攻撃を始める。愚直に真正面から突っ走り、浩の腹を狙って右前蹴りを放つ。

 浩は完璧に受け止め、両手で男の右足をガッチリと捕まえる。掴んだ時、男は不気味に笑っていた。その答えはすぐに出た。

 なんと、左足で地面を蹴り、掴まれた足を軸に左回転しようとするではないか。流石の浩もこれには困惑したが、すぐに手を離そうとした。だが、離すには遅すぎた。

 左回転して左足の踵を振り上げ、真横から浩の顎を鈍い打撃音とともに蹴り抜いた。

 拘束から逃れた男は地面に転がり、してやったりとニヤニヤしている。

 もろに踵が入ったため、その場にダウンしてもおかしくない。それどころか、脳震盪(のうしんとう)で気絶するかもしれない蹴りだ。しかし、そこには直立不動の人影があった。

「なっ・・・!?」

 金髪の男は必殺の一撃が効かなかったせいか、酷く狼狽えている。

 そんな男にはお構いなく、浩はゆっくりとかがみ、手を差し伸べる。手を引いて起き上がらせるつもりだろうか?何を考えてるの?

 男は浩の手に不信感を抱いているようだ。嫌悪感で顔が歪んでいる。

 浩の手はゆっくりと男の手・・・ではなく顔を思い切り掴み、徐々に持ち上げていく。

「っ()ぇ!離せテメェ!」

 必死に蹴ったり手を引き剥がそうとして暴れて抵抗するが、手は剥がれない。それどころかより指が皮膚に食い込んでいる。

 利き手ではない左手で男の顔を肩の高さまで持ち上げると、右手をゆっくりと後方に引き、肩甲骨と胸を開く。平手を小指から順に握り込み、親指で拳を閉じる。

 その拳は驚異的な代謝能力のせいか、血管が浮き上がっている。そして、手首周りの腱は太く、強く、ネコ科の動物を彷彿とさせる。

「ひっ・・・」

 拳は私の視界から消え、男は短い悲鳴と轟音と共に後方に吹き飛んだ。

 奥の壁まで宙を舞い、一斗缶と工具の山に突っ込んだ。

 男は舞う埃の中からヨロヨロと億劫そうに立ち上がる。浩の攻撃に耐えるこの男もかなりのタフだ。

「俺ぁ、んな蹴りじゃあ沈まねぇぞ?だけん、なかなか気合い入っとるのう。ワレ?」

「ケッ!西伊豆のモン舐めんじゃねぇ!」

 二人とも牙を剥くような攻撃的な笑みを浮かべ、再び間合いを詰める。



「喰らえやああああぁぁぁぁ!!!」

 雅春、和哉、泰志サイドに目をやると、黒牙(ブラックファング)の怒号が聞こえてくる。お互い殺気立って鈍器で殴り合っている。こんな乱闘は不良ドラマでしか見たことがない。だが、これはドラマではなく現実だ。敵はエキストラではない。パンチやキックも演技ではない。

 雅春たちは整備工場内にあった鉄パイプやバールを装備して応戦している。

 私は恐ろしくて、参加せずにドアの影に隠れて遠巻きに眺めている。そんな自分を情け無く思うが、火中の栗に手を伸ばす勇気はない。

 こんなのダメよ!自分の妹は・・・美嘉は、私が助ける!

 頬を叩いて、震えを鎮める。呼吸を一定にし、トリガーに指を掛ける。ドアから少しだけ身を乗り出して、銃口を相手に向ける。心臓が耳元で拍動はくどうしているような錯覚さっかくおちいるほど心音が五月蝿うるさい。

 相手の戦力は四人。それに対して闘鬼會(とうきかい)は三人だ。数の上ではこちらが不利。一対一いったいいちの戦いをしているように見えるが、一対二いったいにで戦っているところもある。

「よそ見してんじゃ、ねェッ!」

「つぅ!」

 和哉が二人を相手に戦っているが、一人に気を取られている隙に鉄パイプで額を殴られ、血がにじむ。

 手汗で湿った両手で和哉と戦う隊員のこめかみに照準を合わせる。いまいち上手く合わない。耳元で聞こえていたはずの心音が徐々に聞こえなくなる。両手足が熱いのに対して胃の下辺りが冷たい。汗は滝のように吹き出すのに、口はカラカラに乾いている。そのせいで舌が口の上の壁に張り付いて離れない。

 慎重に撃鉄を起こす。あとはトリガーを引くだけだ。トリガーを・・・引くだけ・・・トリガーを・・・



 トリガーを引くだけで、私は美嘉を助けられる。

 トリガーを引くだけで、私は人殺しになってしまう。

 トリガーを引くだけで、闘鬼會が優勢になる。

 トリガーを引くだけで、私の両手は血で汚れる。

 トリガーを引くだけで、闘鬼會の死者を出さずに済む。

 トリガーを引くだけで、西伊豆軍狼隊と軋轢(あつれき)を作ってしまう。

 トリガーを引くだけで、私は英雄になれる。

 トリガーを引くだけで、私は殺人鬼になってしまう。

 ・・・私は、・・・私は、・・・私は、・・・私は、

 トリガーを・・・トリガーを・・・と、トリガーを・・・トリガーを・・・っ!

 引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く引かない引く、引く、引く、引く、引く、引くっ!引くっ!!引くっ!!!





 トリガーから指を離す。

 全身の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。

 銃をしまい、両手を見つめる。その手は小動物のようにひどく震えていた。

 両手を(まぶた)に押し付けて必死に震えを鎮めようとするも、先程とは違い震えが止まらない。

「無理・・・だよぉ・・・私、撃てないよ・・・ゴメンね・・・」

 いつのまにかセーラー服の襟が濡れていた。

 鳴咽と金属音は止まる気配が無い。





 ・・・どれくらい経ったの?

 打撃音と怒号は途切れる事を知らない。

 ものの数分が数時間に感じる。

 やっと力が入った足で立ち上がり、ドア越しに戦況を確認する。

 浩と金髪の男は所々出血しながら殴り合っている。

 雅春たちはまだ大乱闘を繰り広げている。どちらが優勢かは素人目にはわからない。

 この状況を打破するために和哉が一度戦いから離れ、工場の端の方へ逃げる。何か考えがあるのだろう。

「おい、泰志。“アレ”やるぞ」

「“アレ”って、おお!マジか!よっしゃ!」

「それならワンチャンあるかもな。頼むぜ!和哉、泰志!」

 こちらの動きを察知したのか、隊員たちは身構える。

 和哉が高圧洗浄機を作動させ、高圧の水を隊員たちに容赦なく浴びせる。

 刹那、黒牙(ブラックファング)の隊員たちは全員転び、周囲を大量の水が包み込む。

「ぶはっ!なんじゃこりゃ!?」

「水か!?チィッ、舐めたことしやがってぇ!」

 水によって局面を覆された相手は激昂げきこうし、立ち上がる。フルスイングの釘バットと竹刀が雅春の頭へ打ち下ろされる。しかし、雅春は避けようとしない。

 雅春に当たる直前に泰志がバールで受け止め、二人の顔面にバールを叩き込む。

「うぐぅ!?」

「かはぁッ!」

 活路が開けた瞬間、雅春が紅蓮の炎を放つ鉄パイプと共に敵陣へ切り込む。え?なんで火が・・・?

 紅の刃は「豪」と唸り、隊員たちに喰らえつく。

「やべぃえ!?」

「あべし!」

 数本の光の筋と炎に呑まれ、西伊豆の黒い牙は四本折れた。





「せいやァァァァァ!!!」

 そういえば浩の戦いは終わってなかった。でも、時間の問題ね。

 二人は少し間合いを取り、構え直す。呼吸を整え、闘気を高める。浩の周囲が歪んで見えた。異様に高い基礎体温のせい?それとも、闘気が空間を歪めているの?分からない。

 工場内を二人の呼吸音が支配している。頬を一筋の汗が伝い、顎から滴り落ちる。地面に小さな水たまりを作ったのと同時に二人は間合いを詰める。

 金髪の男が先に右ストレートを繰り出す。間合い、タイミング、威力、スピード全て完璧に思える一撃が浩の顔に迫る。

 浩もワンテンポ遅らせて男を殴り殺さんとする右ストレートを放つ。猛獣の鉄拳が男の顎を撃ち抜こうとする。

 浩の方が遅かったせいで男の拳が先にヒットするーーーはずが、浩は不敵に笑った。

 浩は中央で男の腕と自分の腕を交差させ、頭を下げて拳をギリギリでかわす。さらに、最短距離で男の顎を撃ち抜く。

「決まったな。ライトクロス」

「雅春何それ?」

「ボクシングの技術だね。いわゆるクロスカウンターってヤツ」

「らああああああァァァァァ!!!」

 浩は雄叫びを上げ、そのまま男を殴り飛ばす。男は宙をきりもみし、工具の棚を吹き飛ばし、奥の壁を破壊し、外に放り出されて気絶した。

「おととい来やがれクソ野郎・・・」

 浩はそう言って、崩れた髪を整える。



「美嘉!」

「お姉ちゃん!」

 戦いが終わり、美嘉の元へ駆け寄る。美嘉に外傷がない事を確認し、胸を撫で下ろす。良かった・・・無事で・・・

 目隠しを外してやるが、鎖が外せない。

「どきな」

 泰志が素手で鎖を引きちぎってくれる。

「美嘉!ゴメンね!ホント・・・ごめん!私が、守ってあげられなくて・・・!」

 美嘉の存在を確かめるように強く抱擁する。自責の念から涙が溢れてくる。

「ううん。お姉ちゃんは悪くないよ。だって、助けに来てくれたでしょ?ありがと。お姉ちゃん」

「美嘉ぁ・・・」

「それに闘鬼會の皆さんもありがとうございます」

「いやいや。無事で何よりだよ。」

 雅春は微笑みながら言った。

「良かったなぁ・・・妹さん無事で・・・」

 泰志は若干涙ぐんでいる。

「でも、私たちこれからどうしよう?両親は居ないし、行くあてもないし・・・」

 私と妹だけで地獄と化した伊豆でどうやって生き延びるのか?見当もつかない。

「あ?なんなら、闘鬼會(ウチ)に来るか?」

「え?浩、いいの?」

「いいも何も、アテもねぇ、食いモンもねぇがずら?闘鬼會(ウチ)ならメシも居場所もあるぜ?」

「取り込み中悪ぃんだけど、騒ぎを聞きつけてゾンビどもが集まって来てるみてぇだ」

 外を見ていた和哉がなぜか嬉しそうな顔で呼びかけてくる。耳を澄ますと、ゾンビの唸り声と足音が徐々に近づいてくる。

「マジか・・・てめぇら!ズラかンぞ!」

 浩の一言で三人は臨戦態勢に入る。私も自動拳銃(ハンドガン)を構えて美嘉を私の後ろに隠れさせる。

 足音はもうすぐそこまで近づいてきている。音からして相当な数が集まって来ている。そのせいで顔に恐怖が現れている。

 四人の表情を伺うが、真剣な表情だ。

 心音と足音が徐々に大きくなっていく。

 あと十mぐらい・・・五m・・・四m・・・三m・・・二m・・・一m・・・くる!

「ひぃっ・・・!」

「あァー、ゔぁー・・・」

 扉の隙間から食欲に歪む死人の顔がのぞく。おぞましく、吐き気を催す顔。鼻が潰れ、歯を数本失った顔。片目を失い、大きな空洞がある顔。首が歪み、左に曲がっているものもいる。

 ゾンビというものに対して、鈍足なイメージがある人がほとんどだろう。私自身もそう思っていた(・・)

 だが、目の前の現実はどうだろう?ゾンビは鈍足などでは無かった。むしろ驚異的なスピードで距離を詰めてくる。イヤ!来ないで!

 浩はどこからともなく散弾銃(ショットガン)を取り出し、先頭のゾンビに鉛玉をお見舞いする。

 それを合図に三人も攻撃を始める。私も自動拳銃(ピストル)を構えて照準を合わせる。さっき引けなかった引き金を力一杯引いた。発砲音が耳を襲い、強い衝撃が両手に伝わる。一体のゾンビに命中し、ゾンビを倒す。撃てた・・・私にも撃てた・・・

 罪悪感と達成感に板挟みにされるが、今はそれどころではない。

 轟音が工場内に反響し、ゾンビが十体ほど宙を舞う。和哉の射撃だ。

 和哉のお陰で道が拓けた。

「急げ!突っ切るぞ!」

 浩が私の手を引いて外へ走る。美嘉を置いていってしまわないように私がしっかり手を繋ぐ。

 雅春が先頭でゾンビを殴り倒して退路を確保する。その後ろで浩が散弾銃(ショットガン)で近寄るゾンビを蹴散らす。さらに和哉、泰志と列になって松崎へ急ぐ。

 浩は私のスピードに合わせてくれているようでかろうじてついていけている。後ろが気になり、振り返る。美嘉はちゃんとついて来れている。苦しそうで呼吸が乱れているが、必死に走っている。

 前後左右からゾンビは迫ってくる。振り切り、躱して車屋、食堂と走り抜けていく。

 廃ホテルのような建物の前まで来ると、ゾンビの数が激減した。逃げ切れる・・・私・・・まだ、生きてる・・・!

 さっきの港湾施設が見えてきた。警備の三人の内の二人はもう平然と警備に戻っている。もう一人は路肩で横になっている。

「あっ!テメェらさっきの!」

 キャップの少年は懲りない。

「ああ!?どけ小僧!バラして海にうっちゃる(捨てる)ぞコラァ!」

「ひぃ!?すいません!」

 浩の方が十枚ぐらい上手らしい。浩の脅迫に二人はすぐに道を開ける。

 そのままノンストップで松崎まで走る。ゾンビはもう追ってこない。

「あ!浩さーん!」

 大河だったか、浩の後輩が暖かく出迎えてくれた。

 そこで急に倦怠感と達成感、疲労が一気に襲ってきた。達成感が全身の力を奪い取った。続けて疲労が足をすくい、倦怠感に押し潰されてその場にへたり込む。

「おい!?大丈夫か?」

「ゾンビに噛まれたか!?」

「いや・・・噛まれてない」

「ほれ!水飲め!」

「お姉ちゃんしっかりして!」

 泰志・・・雅春・・・和哉・・・浩・・・美嘉・・・大丈夫。私は大丈夫。ただ、眠いだけなの。

 東の空はまだ濃い藍色だ。虫の声が心地良い。潮風が波の音を運んでくる。

 みんな・・・ありがとう・・・美嘉・・・もう大丈・・・

 睡魔の不意打ちでそれ以降の私の意識はない。





 暗く湿った一室で一人の女がオフィスチェアに腰掛けている。

 女は二十代前半だろうか。露出度の高い服装で若々しい豊満な肉体を惜しげもなく見せびらかしている。

 部屋に一人の中年の男が入ってくる。ひどくやせていて、陰鬱な雰囲気を醸し出している。ノックをしなかったことから、女と相当仲がいいのだろう。

 男は女に近寄ると、おもむろに口を開いた。

「西伊豆が天使(エンジェル)の一人を逃したそうです」

「ん〜それはイケないわねぇ〜。西伊豆にはちょっとオシオキが必要かしら?」

 女は立ち上がり、退室した。

 毎度ご愛読ありがとうございます!

 もし良ければ感想やレビューを書いてくださると励みになりますので、よろしくお願いします。

 次回をお楽しみ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ