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Nightslayer-ナイトスレイヤー-  作者: 荒波ゲオルク
3/5

Explaining boy

 皆さま、お久しぶりです。荒波ゲオルクです!

 夏の仕事や勉強で体調を崩しており、更新が止まっていた事をお詫び申し上げます。

 これから心機一転、気張って参ります!

「ナイトスレイヤー・・・?」

そうじゃ(そうだ)

 洋子は英語のリスニング問題で解らない単語が出て来た学生みたいな顔をして、首を傾げる。異豆(いず)の現状について何も知らないようだ。

「ひょっとしてお前、観光客ずら(でしょ)?」

「『ずら』って、何?」

 俺の話す伊豆方言が分からない時点で観光客確定だ。

「『ずら』っつーのは伊豆方言で『〜でしょ』って意味だ」

「ふ〜ん」

絶対(ぜってー)興味ないだろ」

 若干語勢を強くする。いや、今はそれどころじゃねぇ。

「洋子。お前は今起こっている事についてどれ位知ってるが(知っているんだ)?」

 試しに尋ねてみる。

「何も・・・何も知らない」

「んじゃあ、まずは事の発端から話そうか」

 洋子に向き直り、この「事件」について説明する。



「–––––––––––まず、この事件は天城山中から始まった。天城山にあった研究所で事故が起きて、研究されていた兵器・・・それも生物兵器が周辺の市町へ流出した。その結果、住民にたちまち感染が広がり生物災害(バイオハザード)を引き起こして、大量の死者が出た。だが、事態はそれだけに留まらず、死人がゾンビとして動き出し、人々を襲い始めた。自衛隊や警察でも歯が立たず、徐々に逃げ惑う人々の悲鳴が減っていった。そして、伊豆(いず)は『異豆(いず)』に変わり果て、壁で隔離されてしまった。何万人もの人間を置き去りにして。それがこの事件」



 話を聞く 洋子の顔は青ざめていた。

「じゃっじゃあ、私を襲ったのは・・・」

「感染者だよ」

 雅春がしれっと答える。

「だったら、生き残った人たちはどうしているの?」

 再び説明する。



「生存者は少ない。生存者は事件後、集団で生活するようになった。観光客も地元民も関係なく。空き家になった家に上がり込んで住んでいたりする。さらに、生存者の中のウチらみてぇなナイトスレイヤーがゾンビに対抗する為に共同体を創って、生存者たちを統括している。町によって支配の方法が違うから、調べると面白いぞ?」



 洋子はまだ()落ちなそうな顔をしている。

「その、『ナイトスレイヤー』って、何?」

 俺とした事が、重要な説明を(おろそ)かにしてしまっていた。

「済まねぇな。説明が抜けてた()



「ナイトスレイヤーってーのは、俺たちみたいな異形の存在じゃ。その正体は感染者・・・だけん(だけど)、その辺のゾンビとはワケが(ちげ)ぇ。ゾンビは感染した後、体の主導権をウイルスに乗っ取られた結果じゃ()。ナイトスレイヤーはと言うと、感染するまでは同じだけん(だけど)、ウイルスに乗っ取られずに細胞とウイルスが共存してナイトスレイヤーになる。」



「共存!?」

 洋子は両手で体を抱きかかえるようにして、身震い(みぶるい)する。

 寄生虫に寄生されているようなグロテスクなものを想像したのだろう。恐ろしいものを見たような顔をしている。

「いやー、『共存』つっても、実際は大したモンじゃねぇよ?」

 泰志が腕を頭の後ろで組みながらそう言ってヘラヘラしている。いつも通り楽観的である。いや、こいつはもう少し緊張感を持ってもいい。

「じゃあ、なんでゾンビになる人と、ナイトスレイヤーになる人がいるの?」

 洋子の疑問は尽きないようだ。如何(いかに)に説明しようか、少し考えてから答える。



「恐らく精神力の問題だな。多分、精神力がある奴がナイトスレイヤーになって、精神力がねぇ奴がゾンビになる。人口の内の二割程がナイトスレイヤーになるらしい」



 洋子はあまりピンと来ないようで、首を傾げている。傾げた後、何か思い出したようにハッとした顔をする。

「そう言えば、美嘉(みか)は!?美嘉はどうしたの!?」

「美嘉?誰だそりゃ・・・」

 和哉があまり興味無さそうに聞き返す。

 俺たち一同は見当もつかないといった顔をする。

「妹!私の妹よ!」

「妹・・・?」呟いた自分の眉間(みけん)痙攣(けいれん)したのを感じた。

「妹!?」そう言って雅春は椅子をガタガタ言わせて立ち上がる。待て。お前の妹じゃない。人様の妹じゃ。手出しは無用、と言うかダメだ。

「妹に何かあったのか?」

 珍しく和哉がやる気だ。

「ええ。実は・・・私の妹が・・・」

「「「「妹が?」」」」

 全員興味津々だ。

(さら)われたのよ!」

「「「「ええぇぇぇぇぇ!?」」」」



「ええええぇぇぇぇ!?マジでぇぇぇぇ!?」

五月蝿(うるせ)え!狼狽(うろた)えんじゃねぇ!」

 泰志を一喝(いっかつ)するが、自分自身もまだ動揺している。カップを持つ手が震えている。心なしか部屋の照明が若干暗くなった気がする。

 そんな事は気にもせず、雅春は鼻息を荒くして「詳しく聞かせて貰おうか?」とほざいてやがる。

 (すす)った紅茶に雑味が混じった気がする。

「私たちはお父さんとお母さんと私と妹の美嘉の四人で松崎に観光に来てたの。だけど、ゾンビが人を襲い始めて、逃げる途中でお父さんとお母さんとはぐれたの。だから美嘉と空き家で二人で過ごしていた。でも、ある日私が食べ物を貰いに行った隙に美嘉が攫われたのよ!ああ!私のせいだわ!」

「ま、まぁ落ち着けって」両手で顔を覆って悲しむ洋子を泰志がフォローに入るが、尚も悲しみ続ける。

 腕を組んで顎に右手をやりながら考えていた雅春が不意に口を開く。

「攫われたんだろ?なんで松崎町内を探さないんだ?あの時、確実に西伊豆に向かってたよな?」

 確かに俺たちが助けに行った時は西伊豆方面へ走っていた。松崎で攫われたのなら、まずは松崎町内を探すのがセオリーである。それに、攫われたのはごく最近と思われるため、松崎町内を探し終わったとは考えづらい。雅春の発言通り、西伊豆方面へ行くのは不自然だ。

「それは美嘉の事を聞いて廻っていたら美嘉が連れて行かれるのを見た人がいて、連れ去った人の一人が『西伊豆黒牙隊(にしいずこくがたい)』って刺繍されたリストバンドを着けてたらしいの」

 たじろぐ仕草も可愛いなーと思いながら聞いていたが、『黒牙』の名が出た瞬間、室内の空気が凍り付いた。泰志の顔からもおふざけが消えた。

「黒牙・・・よりにもよって・・・!」

「どうしたの?和哉?」洋子が首を傾げる。

 乾いた和哉の唇が徐々に開き、「ちと面倒になる・・・」と、もそもそと言葉を紡ぐ。

「そんなに不味いの?」

 何かを察したのか、洋子の顔に不安が現れる。

 熱い紅茶を一気に飲み干し、カップを乱暴にソーサーへ戻す。空気を読まねぇのは俺だけじゃねぇらしい。

「黒牙ったぁ、西伊豆の対魔組織の隊の一つじゃ」

「西伊豆の?」

「おう」

 軽く西伊豆の対魔組織について説明する。



「西伊豆の統治は『西伊豆軍狼隊(にしいずぐんろうたい)』っつぅ一つのいかい(大きい)組織があってよ。主に西伊豆町内で活動している。いくつかのちんごい(小さい)「隊」で出来てる」

「じゃあ、その「隊」の一つってワケ?」

「おう」

「しかも、黒牙って言ったら特殊部隊だな」

 雅春が補足してくれた。

「特殊部隊って?」

 キョトンとした顔でさらに上目遣いで聞く洋子は本当に可愛い。

「そりゃぁ、誘拐、暗殺、建造物の爆破、ゲリラ戦を担当する隊だからな」

「暗殺!?」

 身震いする洋子をよそにティーカップを流しに置きに行く。

「うし。行くべ」

 俺の一言に雅春、泰志、和哉とのそのそと立ち上がる。

「行くって、何処に?」

「あ?西伊豆に決まってんだろ・・・」

 どうやら和哉の対戦車ライフル(特に意味は無い)が疼くらしい。

「今から!?まだ午前二時よ!?」

 時計を確認すると、成る程確かに午前二時だ。

「鬼門か。俺らにゃ丁度ええじゃ」

 牙を剥くように笑い三人を見ると、全員微笑みながら頷く。

 言葉の意味が分からず悩んでいる洋子を他所に俺たちは後方にある扉に向かう。

「助けてくれるの?美嘉を?」

「当たりめぇだ。大切な妹だろ?」

ワレ(お前)のじゃねェぞ?」

 ハアハアする雅春にツッコミを入れドアを開け放ち、宵闇の中に歩みを進める。

「しゃぁ、行こうじゃ(いこうぜ)!」



 今回もご愛読有難う御座います!

 皆さまも体調にはお気をつけください。

 もしよろしければ、感想を頂けると励みになりますので、よろしくお願いします。

 次回もよろしくお願いします!

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