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Multiple  作者: 富士例差音
第2章 I can not believe
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第2章ー2 信じてたのに


晃孝たちはバスに乗りそこから離れることに成功した。間一髪という所でスビカリのバスがあって本当に九死に一生を得る気持ちになった。


「ありがとうスビカリさん…」


礼羽が改めて急にバスに入ってきてすぐにバスを出せと言ってしまったのにも関わらず優しく対応してくれたスビカリにお礼を言う。スビカリは礼羽を見てニッコリと笑う。


「おぉ礼羽の友達の為ってなったら全然平気だぞ!でも結構急いでいたけど大丈夫なのか!?」


「そうなんだよ!!スビカリさん!俺たち今結構厄介なやつに絡まれてて今はとにかく逃げたいんだ!そしたらその後俺たちを家の近くまで送り届けてほしいんだ…」


晃孝はスビカリに確実に無理難題を押し付けるがスビカリは快くOKしてくれて今は遠くに行くことを決意した。そしてそのまま晃孝たちは後ろの席へと座りバスの中では緊張的な雰囲気が漂っていた。


「もしあいつが追いついてきたらどうする…」


「追いついてきたらもう一貫の終わりだと思った方がいい…」


晃孝の心配はベリトの現実によって一気にバットエンドの方向へと話を変えた。傷が無ければ逃げずに戦えたのにと悔しがるベリト。


「でも簡単にはやられる訳にはいかねぇーよな!次来たら今度は俺が戦う!逃げるくらいなら俺は死んでやる」


チェルノボグはどうしても今の体でも負けを簡単に認めるのは許すことが出来なかった。負けを認めてまた逃げるくらいなら次は戦って死にたいと決意する。


「私たちは何もすることは無いのよね…晃孝は戦ってるのに同じ人間として恥ずかしくなるわ…」


愛が同じ人間として死ぬ気で戦っている晃孝を見ていると自分は何故何もしていないのかと不思議になるほどになってくる。了もまたそれにうんうんと頷いている。


「そんなこと言ったら私だって…みんなに守られてばっかで役立たずだよ…」


礼羽は1番この中で何も出来ないということを心身に受け止めていた。もし自分が戦うことが出来たら、強い力を持っていたらこの状況は完璧に変わっていただろう。


「礼羽を守ることが俺たちの役目なんだ!礼羽は捕まらないことだけに集中してくれればいいさ」


自分を否定し始めていた礼羽に晃孝は笑いながら礼羽を元気づける。


「うん…ありがとう晃孝」


「お、お前ら結構いい雰囲気なんだな付き合ってんのか?」


酒場のおっちゃんは晃孝と礼羽を茶化す。そうすると晃孝と礼羽は必死に違うと否定している。しかし行動とは裏腹に完全に顔は真っ赤になっている。


「えっ!?2人って付き合ってるの!?」


先生は2人が違うと否定したのにも関わらず信じてしまう天然ボケが炸裂する。


「違うわァ!!」


渾身の天然ボケを晃孝は先生に対してツッコミを入れる。先生は意味がわからず戸惑っていたがすぐに状況を理解し2人が付き合っていないことを知る。その間了はツボに入ったのかゲラゲラと爆笑している。それを見た先生は笑いすぎと恥ずかしながら了の笑いを止める。でも了はすぐに笑いを止め辺りをよく見始める。


「なんかおかしいと思わないか?」


了から疑問の言葉が飛んでくるとは思わずみんなでどうしたどうしたとどよめきが走る。


「いやおかしいんだ…なんかどんどん森の中入って行くような気がする…もうとっくの前にあいつは巻いただろ?なんで家の方に帰らないんだよ…」


それもそうだとっくの前に敵は巻いていていつでももう家に帰ることが出来る余裕はあった。しかしバスは永遠と知らない所を走り続けている。心配になりスビカリさんを確認しに行くことにした。


「スビカリさんどうした!?大丈夫か!?」


晃孝がスビカリさんに何かしらの不祥事起きていたら大変だと思い急いで運転席の方まで行くとスビカリさんは険しい顔をして困っていた。


「おい?どうしたスビカリさん…」


「うぅ…すまんね完全に道に迷った…」


「えェェェーーーー!?」


ベテランのバス運転手でも適当に走ることで完全に道に迷っていた。このままだと逃げるとかではなく一生家に帰ることが出来なくなってしまう。


「住所が分かれば帰り方はわかると思うんだ…だからちょっと次の電柱を見てきてくれるかい?」


スビカリは次に通過する電柱を晃孝たちに見てきてほしいと頼んだ。電柱に書かれている住所を知ることが出来ればどうにか道の修正をすることが出来るとスビカリは言った。


「でも礼羽は中に入ってろよ!もし今行って敵に見つかったら殺されるだろ?」


スビカリは晃孝たちがバスに乗る時に話してくれた状況で何者かに礼羽が狙われていることは話を聞いていてわかったみたいだ。だから礼羽だけをバスに残して晃孝たちが外に出る方が理にかなっているとスビカリは思ったみたいだ。


「よし!じゃあ見てくるな!」


晃孝たちは全員バスから降りた。そして電柱の方まで走って向かう。その時後ろでなにかの音がした。それはバスの閉まる音だった。やばいと思ったが気づいた時にはもう遅かった。スビカリは礼羽の口をおさえ拉致を計ったのだ。そして晃孝を見てニヤリと笑ってすぐにバスを発射させた。


「くそ!!はめられた!!」


予想外の出来事に晃孝は判断が遅れた。晃孝が出発してしまったバスを走って追いかけるが追いつくことは出来なかった。


「なんてことなんだ…スビカリさんが裏切るなんて…」


ベリトはスビカリが裏切ったことに驚きを隠せなかった。他のみんなもスビカリが裏切ることなんて全く想定していなくて呆然とそこへと立ち尽くしてしまう。


「どうする…どうすれば…完全に礼羽を見失っちまった…くそ!!」


晃孝は礼羽が捕まり完全に終わったと思った。もう礼羽がどこにいるのかさえ分からないのだ。


「あ…ああ!!」


その時先生が驚きの声を出す。他の人は驚いた先生に対してとても驚いてしまった。そして了や愛がなんだなんだと先生に近づいていく。


「どうしたんだよ…先生…なんかいい策でも思いついたか?」


もう奇跡が起きない限り礼羽を取り返すことは難しいと思っていた晃孝はテンションを低くしながらも少しの希望にかける。


「私…携帯バスの中に忘れちゃった…」


「携帯バスに忘れたくらいかよ!!全然軽い事じゃねェーか!!今は早く礼羽のいる場所を探さないと!!」


「違う違う!!だからバスの中に携帯があるからバスの位置を探せるかもしれない!!あの時見せたあの道具で!!」


「そっか!!あの道具で位置情報を確認すれば携帯の場所が分かってそのままバスの場所も分かる!!」


少しの希望は完全に最悪の状況を逆転させた。先生と駅で会ったときに見せてくれたあの防犯道具だ。先生が防犯で持っていた物がここまで大活躍するとは誰が予想しただろう。晃孝はさっきの低いテンションから一気にテンションが高くなった。


そしてその時バスの中では礼羽が目を覚ました辺りを見回すと運転席でスビカリが必死にアクセルを踏んで逃げていた。礼羽はスビカリに近づきそれを頑張って阻止しようとしてスビカリに飛びついていく初めは飛びついてきた礼羽にスビカリはびっくりしていたがすぐに礼羽はスビカリにはねとばされてしまう。


「なんで!?何でなの!?スビカリさん!!」


「うるせェ!!お前を引き渡せば多額のお金を受け取ることが出来んだよ!!ある男と約束したんだ…ハハハ、ハハハハ、ハハハハハハ」


「どうして…どうして…なんで…スビカリさん…」


礼羽は悲しくてたまらなかった。あの優しいスビカリにこんな裏切りをされるとは思わなかった。涙をこらえてもこらえても溢れて出てきてしまう。手で何回も何回も拭っても涙が溢れてきてしまう。


「お前のことは何ひとついいと思ったことはない!金が貰えるならお前を殺すことだって出来る。何がスビカリさんだ!!俺の名前を呼ぶんじゃねェ!!」


「私は…私はぁスビカリさんが大好きだった…いつも優しくておしゃべりで私と仲良くしてくれるスビカリさんが大好きだった!!」


小さい時からスビカリのバスを利用し楽しく話をしたり悲しいときは励ましてもらったりしていたスビカリは礼羽にとって大事な人で礼羽は心の底からスビカリが大好きだった。


「うるせェ!!結局人は金なんだよ!!お前と仲良くした覚えなんてねェーんだよ!!」


スビカリは礼羽に何回も何回も怒鳴り散らす。礼羽はスビカリが完全にモンスターに見えた。スビカリはれっきとした人間だがもう本当の顔が分からず全てが操り人形のように動いている人間に見えた。礼羽はその現実を呆然と涙を流しながら1人きりバスに揺られた。もう礼羽の目の前は真っ黒の闇で覆われてしまった。


「よし!!すぐにスビカリの所に追いつこう!!」


晃孝はスビカリをさん付けで呼んでいたが信頼を失ったため完全に敵としてスビカリを呼んでいた。そして先生の道具を頼りにバスの方向へと歩き出した。


「まさかスビカリが裏切るとはな…」


チェルノボグは少し暗い顔をして肩を落としながら歩いた。人は見た目や外見で判断してはいけないと改めてチェルノボグは思った。


「止まった…」


急に先生がポツリと声を出した。さっきまでずっと動いていたバスはある所で止まった。そこは神社だった。晃孝たちがいるところから少し遠いところだったので少し急いで走って向かうことにした。しかし昨日の戦いの傷があまりにも効いていて体力は限界に近づいていた。


スビカリは神社へとついてそのまま泣いている礼羽の腕を掴み外へと出ていく。礼羽は必死にスビカリの腕から離れようと抵抗する。


「引渡しはこの神社でいいんだよなぁ…早く来いよ!なに抵抗してんだよ!!もう無理なんだよ信じてんじゃねェーよ!!」


礼羽はスビカリに必死で抵抗して晃孝たちを信じ続けた。いつか必ず自分を助けに来てくれる。みんなはそういう人たちだと。


「いやだ!行きたくない!!私は晃孝を信じる!」


「くそ!!このままだと目立って仕方がねェ1回戻るか…」


神社でこんなことをしていると通行人に怪しいと思われてしまう。今にもスビカリを見てザワザワしている人たちがいる程だ。通報されてしまったら計画が全て水の泡となってしまう。なのでバスに戻り裏へと周り後ろから神社に入ることにした。遂に晃孝たちはさっきまでスビカリがいたところまで追いついた。晃孝たちは全速力で走ってきていたので息が切れる程疲れていた。


「あー…はぁはぁ、疲れたぁ…本当に…ここでいぃんだよなぁ…」


晃孝はその場で膝に手を当てて下を向いて息を整える。ベリトとチェルノボグはまだまだ走るのは余裕そうだ。


「あれ?なんでぇ…はぁはぁ、さっきまでここにいたのに…裏へと回ったのかなぁ…」


スビカリに追いつくには一足遅かった少し前にもう後ろの方へとスビカリはバスを出してしまっていた。


スビカリは裏へとバスを止めて礼羽を必死にバスから出そうとしていた。礼羽はバスの入口の取っ手に必死に捕まり必死に抵抗する。


「おい!やめろって!!もう無意味なんだよ!!どうやってあいつらがここに辿り着くんだよ!!無理に決まってるだろ!!諦めて俺のために生贄になれよ!!」


スビカリは礼羽の取っ手に捕まっている手を何回も上から叩き外そうとする。礼羽は痛みで手が離れそうになるが必死に何回も何回もより強く掴み直す。


「あぁ…だめだ…晃孝…ごめん」


しかしスビカリの攻撃も止まる事がなく遂に礼羽は取っ手を離してしまう。礼羽は目をつぶり涙を流す。自分はこのスビカリの攻撃に耐えることができず結局この痛みから逃げてしまった。本当に自分は弱い人間なんだなと思ってしまった。自分に出来るたった一つのことスビカリに負けずに抵抗し晃孝たちを信じ続けることさえも成し遂げることは出来なかった。そしてそのままスビカリは礼羽の両手両足を拘束して口をガムテープで口を封じる。そしてビニールシートで礼羽を覆ってそのまま担いで神社に裏から潜入する。


「じゃあよあいつは裏から回ったんだろ?じゃあ正面から俺は行く。正面から戦ってやる!!」


裏から廻って神社に入らないと目立ってしまうスビカリに対して晃孝たちは正面から素通りすることが可能だ。そう言って晃孝は神社の鳥居をくぐって行く。鳥居をくぐってすぐに手水舎が見えてきた。手水舎とは参拝しに来た時身を清めるために使う施設のことである。そこで綺麗にお清めして階段を登っていく。チェルノボグとベリトだけはそれにとても手こずっていて愛と了が2人で一生懸命に教えていた。階段を全て上がると少し広い場所へと出た。そこは山の湧き水がたくさん湧き出ていてとても神秘的だった。


「でもこんな人がいる所で引き渡そうとするのも結構勇気いることじゃない?なんでこんな場所にしたのかな?」


愛はこんな人混みで何故礼羽を引き取るという。危ない行為をしようとしたのか正直不思議に思っていた。引渡しをするならもっとひとけがない場所で引渡しをした方がこの計画が成功するのではないかと思った。


「あ!!いたぞ!!スビカリと礼羽!!追いかけるぞ!!」


晃孝は丁度スビカリを見つける。ビニールシートみたいなもので覆われている何かを担ぎながらある建物に入っていくことを見つけた。晃孝は絶対にそのビニールシートの中に礼羽がいると確信した。急いでそっちへと走っていく。まだスビカリは晃孝たちがこの神社にいることに気づいていない。その建物は木で作られた本殿の様なところで結構前に建てられた建物に見えた。スビカリはその建物の中で引き取り人と電話を始める。


「すいません…今引取りの場所へと着きました準備はバッチリです…本当にお金は貰えるんですよね」


礼羽はビニールシートだけ剥がされてそして礼羽はとても抵抗していたが無理やり建物の柱にそのまま縄で繋がれてしまう。そしてスビカリが電話を終えるとドアがあき眩しい光が建物内に差し込んだ。


「誰だ!」


「おい!お前ェ!よくも裏切ったな!!許さねェーから!!」


晃孝は遂にスビカリのところまで辿り着いた。礼羽の必死の抵抗によりどんどんと晃孝たちとスビカリの距離を縮める事ができた。晃孝は奥で拘束されている礼羽を確認した。礼羽は晃孝の顔を見て涙がこぼれ落ちる。


「礼羽!!良かったぁ…礼羽…良かったぁ」


愛が親友の無事を喜ぶ。他の皆もそれを聞いて頷いている。礼羽はそれを見てもっと涙が出てきてしまう。手を拘束されていて涙を拭くことさえ出来ない礼羽は顔が涙で覆われている。しかしスビカリは何故引き取り場所まで晃孝たちが追いかけてこれたか不思議で驚きの顔を隠せていなかった。


「な、何故だぁ!な、なぜ、あ…な、何故わかったァ!!どうしてここまで…何故俺の邪魔をする!!」


「もう喋るなスビカリ…礼羽待っててな今すぐ助けてやる」


晃孝は礼羽の顔を見てニッコリと笑う。礼羽は晃孝の顔を見て安心し、だんだんと涙もこぼれることをやめていった。


「おい!!もういいだろこんな女!!何なんだよ…金、金サービスしただろぉぉぉ!!あの時サービスしただろぉぉ!!この女にっ…この女にどういう価値があるんだよ!!邪魔するなァァァァァ!!!お前らがいなければ成功してたんだよ!!完全に俺を信じきったこの女は騙されながら死んでいく!!お前らがいなければァァァ!!」


「だから言っただろ…もう喋るなって」


晃孝はスビカリへとゆっくりと近づいて行き顔面に怒りの拳をぶつける。スビカリは血を出しながら吹っ飛び建物の後ろの壁へと激突する。そして顔面を抑え悶え苦しんでいる。少し落ち着きゆっくりと起き上がりまた晃孝の方を見る。そうすると晃孝は怒りの表情を浮かべながらスビカリの方へとどんどん近づいてくる。


「痛てェーなこの野郎!!おいおい何なんだよ冗談だろ?分け前少しやるからよぉ?いや半分!!半分やるから!!見逃せよ!!何なんだよ!!近づいてくんなよ!!」


晃孝は無言でスビカリへ近づいていきスビカリの顔面をもう1発殴る。そして吹っ飛んだスビカリを無視してそのまま礼羽の方まで歩いて行きゆっくりと優しく拘束を解く。


「大丈夫か礼羽…ごめんな…よく耐えた辛かっただろ」


「うんうん…ありがとう晃孝…ごめん皆…」


急いで礼羽を1番後ろへと後退させていきみんなで礼羽を庇う。愛が、戻ってきた礼羽に抱きついてその喜びを噛み締める。


「あぁぁぁぁあぁぁぉぁ待って…待ってマイマネー…待ってくれェェ…返してくれェェ…返せよ!!返せよ!!返せよぉぉぉぉぉぉぉ」


スビカリは晃孝の方へ殴られて崩れた顔面のまま走っていく。その光景はまさにゾンビが向かってくる光景だった。既にスビカリのことを人間として見ることは出来なくなってしまっていた。欲望に塗れておかしくなった人間の末路をしっかりと晃孝は見てしまった。


「こいつ…狂ってる…もう人間じゃねェーみたいだ…」


「晃孝!ゆっくりとしてる暇は無いよ…引き取り人が来たら戦わなければいけない…スビカリはほっといてももう平気だよ!!」


スビカリという狂った人間に目が離せない晃孝をベリトが急がせる。今はここから離れることが1番の目的である。スビカリをここで殺す必要はない。引き取り人が来て約束のものが無ければスビカリは殺されてしまうだろう。結局殺される運命にあるスビカリをここで殺す必要はない。そして自分たちもここに長くいることで引き取り人と接触してしまうこともベリトは恐れていた。


「お前らのせいだぁぁ…お前らの…ははは…ははははは」


スビカリは完全に計画が失敗して笑って上を向いている。その時スビカリの体に異常が生じる段々顔の半分が肌色から青白くなってきてそのまま顔がシワシワになってしまった。その後残りの顔の半分も同じようにシワシワになってしまいまさにゾンビのようになってしまった。目すらもぽろりと落ちて無くなってしまった。髪の毛も抜け落ちていく。全体的に体がシワシワになっていくが爪だけが伸びていく。


「おい…なんだよ…なんかおかしくないか…」


どんどん人間ではなくなっていくスビカリに晃孝は驚きを隠せない。さっきまで普通の人間だったスビカリは痩せこけたゾンビのようになってしまった。スビカリの優しそうな顔は確認すら出来ない顔へと変貌してしまった。スビカリはそのままゆらゆらと揺れている。


「か…え…せ…返せ…」


体を揺らしながら震えた声で返せと何回も連発し真っ黒で目がなくても晃孝たちを睨んでいるのがしっかりと分かった。


「何が起きてんだよ!スビカリに何が起きたんだ?」


晃孝はこの状況を理解できない。晃孝はスビカリをまじまじと見てしまう。了と愛はベリトの後ろへと隠れながらその姿を見ている。

そしてスビカリは晃孝たちの後ろにあるドアへと物凄い早さで移動する。そして伸びきった爪が礼羽へ襲いかかる。それにいち早く気づいたチェルノボグが礼羽を軽く横へ突き飛ばし棍棒で爪をガードする。


「ふん!こいつは俺に任せろ…俺がぶっ飛ばす」


「あぁチェルノ!任せたぞ!!やっちまえ!!」


「なんだ…なん…だこの体ぁ…力が湧いて…気やが…ぁ」


スビカリは自分に起きている症状について全く身に覚えがないようだ。あとこんな体になったのに関わらず力が湧き出てきているというのだ。しかもチェルノボグはその思いがけない力に少し押され気味になっている。


「あぁぁ…あぁぁーぁぁ…あぁぁぁ…」


しかしどんどんとスビカリは喋れなくなっていきもうスビカリは喋ってる声さえもハッキリと聴こえることは無くなった。


「くそ!!なんだこいつの馬鹿力は!!おかしくないかこいつ!!」


スビカリの力が自分を勝っているということをこの瞬間にチェルノボグは感じてしまった。そしてそのままスビカリに押され倒れてしまう。しかし倒れた反動でそのままスビカリを反対側へと投げる。しかしスビカリはすぐに立ち上がりチェルノボグを物凄い速さではね飛ばす。チェルノボグはそのまま壁に激突する。しかしチェルノボグもすぐさま立ち上がり棍棒をスビカリに向けて投げる。スビカリは飛んできた棍棒に顔面でクリーンヒットするがすぐさま体勢を直し棍棒をチェルノボグへと投げ返す。自分で投げた棍棒でチェルノボグは傷を与えられてしまう。そしてそのまま棍棒と一緒に地に顔を落とす。


「チェルノ!!!!!!」


完全に一方的に攻撃されているチェルノボグを晃孝は見ている事が出来なかった。エキドナとの戦いで傷を負っていたので力の差は歴然だった。しかしゆっくりとチェルノボグはそこへ立ち上がる。


「くそ!!こいつ痛みを感じないのか?」


投げ飛ばされても棍棒を喰らっても平気にしているスビカリを見て全く痛みを感じていないように見えた。あとゾンビといったら遅い生き物だ。しかしスビカリは物凄い速さで動くもうこいつはゾンビでさえない。


もうこいつは完全なる


悪魔だ

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