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スイング・バイ・ニビル  作者: 粂田
8/12

出航

 結局、外宇宙へ旅立つ乗組員は私一人になった。他の候補者が全員「不適正」となったからだ。このチームで私ほど「ホームシック」から縁遠い人間はいないことが立証されたということだ。地球からすでに結構な距離で完成したMEP船アルゴは一番最初の「大型すぎる」MEPを積み込んだ船で、地球文明の結晶のようなブツだった。私は出発前にやり終えたいことがいくつかあったが、マスコミ向けにプレゼンテーションをするためのレクチャーを専門家から受けねばならなかった。その間にも、もっと地球に近い場所では第二・第三のMEPジェネレーターがもっと適切なサイズで、安全に誕生していた。私はそうしたニュースを伝え聞きながら、子供相手の科学番組に宇宙服を着て顔を出したり、プレス用の映像を撮影したり、本業とは関係のなさそうな仕事を着々とこなしていた。映像通信のインタビューで決まって訊かれるのがMEPについての話で、素人相手にMEPを説明するのがかなり難しく、しかもアルゴに搭載されているMEPは極めて冗長で、それは実験過程のものをそのまま利用しているため致し方が無いことだが、何が言いたいかというとぶっちゃけ素人相手の解説には不向きだった。結果、もっとシンプルで説明しやすい第二・第三のMEPが報道では多く取り上げられることになり、そちらの方が地球からの距離も近く映像通信のクオリティも良かったので、次第にマスコミの質問攻撃は私個人に関しては静かになっていった。実はこのころアルゴの就航まであまり時間をかけられない別な事情があった。アルゴと地球との距離が遠すぎて様々面倒くさいことが発生していたのだが、詳しくは書かないがより面倒くさいことになりそうだったのだ。


「私の長い長い旅は、孤独に見えますが人類の歴史を乗せた旅です。」


ゴーストライターが用意した原稿を読み上げて、私は飛び立った。何もない氷の海のさきにはグリーンランドがあるのだろうか。ゴーストライターは「人類の歴史を乗せた」と表現したが、実際には財布も鍵も持たない手ぶらの旅だ。カレンのAIは旅が快調であることを報せてくれる。私は計画通り火星周回軌道の人工衛星とのニアミスまで最初の冷凍睡眠に入ることにした。

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