6/12
後悔に近い、脱力感と冷笑を含んだ感情
私が実験の事故の報せを聞いたのは多分、ウエイトトレーニングの装置の改良をしていた時だと思う。どちらにせよジムの中で報せを聞いた。カレンは研究室の半分を道連れに宇宙のチリとなって消え去ったそうだ。私は下あごに違和感を感じた。今まで20年以上連れ添ってきた下あごが急に反乱を起こしたかのように震え始め、喪失感に苛まれた。私の写真でしか知らない母親がカレンを連れて行ったのではないかとさえ思った。次に怒りがわいてきた。そんな馬鹿げたことを一瞬でも想起した自分と、最も信頼できると思っていた研究者でもあるカレンが実験の事故を起こして消滅してしまったことに憤りを覚えた。そして、怒る相手がすでにこの世にいない事に再び大きな喪失感を、そして、ろくでもない身の上の自分が「持ち過ぎていた」こと、それに麻痺していたことに対して、後悔に近い、脱力感と冷笑を含んだ感情に包まれた。