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スイング・バイ・ニビル  作者: 粂田
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育ってきた環境が違うからパセリが大嫌い

 ブレイクスルーは非常につまらないことがきっかけだった。ヤガミ教授の助手の一人ピーターセンがカレー好きでパセリ嫌いのヤガミ準教授と対立し、腹いせに生のパセリに極めて近い何かをプリントアウトできる「高精度過ぎる3Dプリンター」を作ろうとしたのだった。彼はそれに必要な「レンズ」を天才的なひらめきで考案し、1kgのパセリのたった数億倍の価格でそのレンズを現実のものにした。そのレンズはいよいよパセリを作ろうとした際に不具合を発生させ、ピーターセンを大いに参らせ、ヤガミ教授の嘲笑を誘ったが、その不具合の原因が「精度が高すぎること」だと判明した際には全世界の研究者に激震が走った。レンズには入ってきた光を交差させる性質があるが、理想的にはその光はある一点で交わるべきであっても、面積0の一点で交わるレンズなど実際には作れなかったはずだったのに、ピーターセンは極めてその理想に近いレンズを作ったのだった。大気中でそのレンズを運用すると、その焦点で大気の粒子がプラズマ化しエキセントリックな物質を生み出していたのが正常なパセリを描き出せない原因だった。そう、エキセントリックなのだ。ピーターセンは無限のエネルギーを用意するのではなく、無限に光を収束することでエキセントリックな世界への架け橋を作ったのだった。「パセリレンズ」と呼ばれた旧式のMRIのバケモノのような装置は充分に高出力なレーザーがあればよりエキセントリックな現象を引き起こせる可能性を秘めていた。カレンはパセリレンズを持って宇宙の実験室に戻るつもりだと打ち明けた。


「パセリがあれば君の言う絶対空間にアクセスできるとして、エネルギーを取り出す方法はもう完成してるのかい?」

「勿論。」


 私に未来を予想する力があれば、あの時、空港へ見送りに行っていただろう。そして、私に未来を予想する力があったとしても、あの時、カレンを止める方法は無かっただろう。

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