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星の海

作者: LoO

«登場人物»

東野慧 (とうの けい)

西野岳 (にしの がく)

東野の弟

«地名»

天ヶ原高原 (あまがはらこうげん)

«まえがき»

記念すべき初の作品です

温かい目でご覧ください笑



PS.題名を募集しています

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「宇宙人っているのかな?」

22時16分、僕と弟は天ヶ原高原で天体観測をしている。

「未確認生物ならこの宇宙を探せば見つかると思うよ。」

星空に集中したい僕は弟の質問に生返事になった。

「どうして宇宙人って言わないの?」

「宇宙人から見れば僕らも宇宙人だから。」

「じゃあ、UFOって信じる?」

「UFOは存在すると思うよ。ただ、」

弟の視線を痛いほど感じる。

「ただ?」

「ただ、ハッブル望遠鏡でも見つからないような遠い遠い宇宙から来た未確認生物が、ステルス機能を付けないと思う?そんなに技術力があるなら必ず付いているよ。だからUFOが存在しても僕らには見えないはず。」

「じゃあ、じゃあ……」

弟は黙り込んでしまった。

いつからだろうか、僕がこんなに論理的思考になったのは。

まぁ、分かりたくもないけど。

いつまでも目の前に広がる星空を見ていたいが、どうやら雰囲気がよくない。

「そろそろ帰るか」

弟は何も言わずに僕の言葉に頷き、暗い夜道を僕の背中にぴったりとついてきた。


 遅ればせながら自己紹介。高校三年であるところの僕、東野慧は受験勉強に勤しんでいる。勉強のせいかな、現実的に物事を考えるようになったのは。そんな事を、目をつぶってでも通える通学路の途中で考えていた。

「東野~、おはよ~」

こんな間抜けな声で挨拶してくるやつなんて決まってる。懲りないな、あいつも。僕とつるんでも何も生まれないのに。日差しがいつもより眩しく思えた。

「おはよ、西野」

わざと気怠く見せる。それが僕なりのかっこよさだ。高校生って気怠く見せることがかっこいいと思ってるよね。僕もその1人だけど。そんな事はさておき、西野の紹介でもしておこう。友達と言えるのは西野くらいしかいないからね。西野岳は陸上部に所属している。インターハイに出場していたらしい。勉強の成績はあまりよくない。そんな運動神経抜群で友達も多いやつがどうして僕なんかと友達になってくれたんだろう。あ、お察しの通り僕は帰宅部である。これも友達が少ない理由かな。ま、何を言っても言い訳になるが。

「東野く〜ん?聞いてましたか~?」

朝からテンション高すぎだろ。何を話してたんだ?そんなことより、こいつの顔の方が気になる。

「なあ、何でそんなにニヤついているんだ?何かあった?」

「おっ、よくぞ聞いてくれた東野よ。」

でたよ、西野のお決まりの文句。この文句から始まる話はだいたい長い。軽く聞き流そう。それにしても寒いな、もう冬か。明日からはマフラーを着けて登校しよう。

「………………なんだよ!一緒に見に行こうぜ!」

「え?」

全く聞いてなかったわ。

「だから!今日は10年に1度の流星群なんだって!天ヶ原高原に見に行こうぜ!」

もちろん知っている。前日に現地入りして観測地点を探したぐらいだからな。ただ、こいつは今朝のニュースで流星群のことを知ったんだろう。そんなにわかと一緒に見に行きたくない。なんて返事をしようか…

「別にいいけど」

あれ?僕、今なんて言った?

「じゃあ放課後に詳しい打合せしようぜ!じゃあな~」

待て待て待て待て、勝手に話を進めんなよ。

「ちょっと待って…」

と、言った時、すでに西野は素早く上靴に履き替えて教室に駆けていっていた。あれ、もう学校についていたのか。その日の上履きはいつもより重く感じた。

 西野との約束(この場合一方的だから約束とは言えないが)をどうやって断ろうかと思案しているうちに放課後はやってきた。

「東野~、帰ろうぜ~」

教室の前の方から間抜けな声が聞こえてくる。さすが運動部、僕の席は最後列の右端なのに、声が鮮明に聞こえてくる。でも、大きな声で僕の名前を呼ばないで欲しいな。帰る支度を済ましていた僕(決して西野を待っていた訳では無い)は足早に教室を後にした。待っている人の迷惑にならないように上靴を素早く収納した後、ほどけかけていた靴紐を結び直した。

 さて、ここからが本番だ。大丈夫、何度も頭の中でシュミレーションしたから。


「西野、今晩は楽しみだな」

「おう!集合場所は現地?何時集合?」

「現地で、22時30分に集合な」

「よし!そうと決まれば早く帰って課題を終わらせなくちゃ!また後でな~」

「おう、またな」

さてと…帰るか。


 21時30分、僕は早めに家を出た。天ヶ原高原までは15分で着く。遠回りになるけれど、学校方面から行くことにしよう。これなら30分はかかるはずだ。暗い夜道をライトも使わずに歩いた。言い忘れていたが、ここは田舎だから街灯も少ない。

「っっっっ!!!」

突然、頭に衝撃が走った。どうやら電信柱にぶつかったらしい。あれ?こんな所に電信柱なんてあったっけ?

前方に人影が見えた。急いで平静を装い、何事も無かったかのように歩き始めた。

「あれ?東野じゃん。」

なんだ、西野かよ。

「なんだ、西野かよ。」

「西野で悪かったな。早く行こうぜ!!」

気がつけば僕たちは走っていた。西野についていくのが精一杯で、走り始めてからの記憶は残っていない。

「やっぱり東野は遅いな。」

「遅くて悪かったな。」

「おい!あれ見てみろよ!」

恐らく空を指さしているんだろう。でも、僕は疲れていて顔を上げることが出来ない。思わず仰向けに倒れ込んでしまった。

 その時、目の前に広がっていのは、星空と言うより、もはや宇宙そのものだった。言葉にできないほどの美しさ、僕にこの美しさを表現できるほどの語彙力があれば…

「海だな」

それだ。海面に反射されて揺らぐ陽の光、美しく、温かい。時々押し寄せる星の波に巻き込まれそうだ。

 こんな星空の前では論理的思考は働かないんだな。太陽系に最も近い恒星、プロキシマ・ケンタウリの光でも4年前のものなのに。しかし、星空はそんなことは感じさせない。そんな暇を与えない。星空は北風と太陽にでてくる太陽のように僕を裸にした。


「なあ、西野。」

「ん?」

「宇宙人っていると思うか?」

「いるんじゃない?」

僕の隣から西野の声が聞こえてきた。

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