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Q.隣にいる魔王から5m以上離れないで世界を救うにはどうすればよいか?  作者: ねここねこ
終章 終わる世界の勇者と魔王
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Q.74 だれを選ぶの?

 最終話。個別ルートへの導入です。


 茜色に染まる空の中、見守る仲間達を前に俺は一つの選択を迫られていた。

 先送りにしてきた彼女らの問題。それらが同時に押し寄せてきたんだ。

 当然といえば当然か。彼女らにとってどれほど重要だったことかはガーデンの件から分かっているつもりだ。

   

「シロ」


 名前を呼ばれ振り返ると、そこにはいたのは四人の少女。

 そうだ。もう一人の俺ヘズもう一人のミララビエルが選択したように。どんな未来を進むのかを決めなくちゃいけないんだ。

 

 心臓が早鐘を打つ。夕日に照らされた彼女たちの姿が、あまりにも綺麗で。


「……やくそくのじかん、さあ……えらんで……?」

「あははー、やー、なんだか緊張しちゃうねぇー」

「シロの選択なら、どんなものでも受け入れるよ」

「さっさと決めなさい! 変にドキドキしちゃうじゃない!」


 いつも通りのまま、平常運転のフレイヤ。

 照れ半分にはにかみながら、ガブリエル。

 優しく微笑む、落ち着いた声色のセトラ。

 そして、こんな時でもありのままなミラ。

 

 そんな四人の姿を見ると、なぜだか旅の中の記憶が鮮明に思い浮かぶ。

 旅の始まり。多くの街を回り、その中で出会った人々。強敵との戦い。なんてことのない日常の出来事。

 はじめは戦いが終わった後のことなんて考えてなかったのに。彼女らのお陰で今ここに立つことができていると思う。

 

 フレイヤには優しさを別けてもらった。一体どっちが歳上なのか、ガーデンでは泣きべそかいた俺を包み込んでくれたっけ。そんな優しさで辛いことを包み込んで貰えたから、最後の最後まで折れずに戦ってこられたんだ。いつあらゆる時でも、彼女の存在は癒やしそのものだった。

 

 ガブリエルには希望を育んでもらった。きっと彼女と出会わなかったら天使に対する考えも大きく変わることはなかっただろう。立場的に敵であろうと手を取り合える。そのことを知らなければメタトロンやヘズとの戦いもまた違った結末を迎えていたに違いない。


 セトラには俺が生きる意味をもらった。いずれ捨てるつもりだった命に意味を与えてくれた。「自分を犠牲にして誰かを護る」ってやり方じゃ結果的に大切な人は幸せになれないことを教えてくれた。セトラ自身が旅の始めから不安を抱えていたんだろうけど、そんな彼女が言ったからこそ、あの言葉は深く伝わった。


 ミラには忘れられない勇気をもらった。唯一の前時代からの顔見知り。未知ばかりのこの世界において常に傍らにいてくれた。いやいやだった時もあっただろう。旅の初めは制約のせいで喧嘩したことも多かった。だけどミラといたら不思議とどんな理不尽も乗り越えられるようなそんな気がしたんだ。

 

 四人とも、みんな違う顔を見せてくれた。

 こんな俺に対して、「好きだ」って伝えてくれた。

 とても魅力的で、温かい思い出だ。


 もし俺がまっとうな「英雄」と呼ばれるに値する存在だったのなら「全員で!」なんて言えたのだろうか。仮にそう言ったとして、思い浮かぶ未来がこれまでのいつも通りの日常でなぜだか可笑しくなってしまう。きっと、それじゃ駄目なんだろうな。


 うん。自分らしくいこう。掴めるのはせいぜい一つだけだ。

 燃え滾る胸の想いを巧く覆い隠して、覚悟を告げる。


「ああ、決めたよ」


 これから進む道を。歩む未来を。

 そしてその隣に誰がいるのか。


「――――――――――。」


 ずっと避けていた問いに対してそう答える。

 これでよかったのだろうか。その問いの答えは、まだ分からない。

 だけど、きっと。これで俺は進んでいける。確たる確証のないまま、温かい存在とともに。

 

 願わくば、この選択が悔いの残らない未来を紡ぎますように。

 はい、お疲れ様でしたー!

 ここまででお話は一区切りです。

 その後シロがどんな選択をしたのかはエンディングにて。

 残りちょっとですが、だからこそちゃんと書いていきたいですね。


 ではでは!


 ブックマークありがとうございます!

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