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Q.隣にいる魔王から5m以上離れないで世界を救うにはどうすればよいか?  作者: ねここねこ
八章 宗教国家の祈願王女
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Q.AF おきのどくですが ぼうけんのしょ1は きえてしまいました

 時系列があるとすれば、篝、葉月ペアが地下牢にたどり着くちょっと前~戦闘中のお話です。

 ……声が聞こえる。


アトラの声じゃない。

 けれど聞き覚えのある声。セトラの声。

 何だ? この導入、身に覚えがあるような……。すんごく嫌な予感がする。


「………け……くだ……い……!」


 あ。これあれ・・だ。

 この旅の始まりとなった出来事。この声の主はセトラで、きっと今俺はまだ封印の中にミラと一緒にいる。全て覚えている。だって一度終わった出来事なのだから。

 いやいやいや、まてまてまて。

 

 なんで?


 疑問はどれだけ考えたところで紐解かれることはなかった。

 俺、どうなったんだっけ? 

 確か、ルミエールを仲間にして……。いや、あれは洗脳による妄想だ。判っていても抗えない妄想に捕まっていたことまでは覚えている。ということはこれも妄想?


「……ゆうしゃ、さま……! たす、けて……!!」 

 

 あれこれ考えている間にも、台本をなぞるように物語は進んでいく。

 とりあえずはここから出て自律天使を倒さないと。外のセトラを助けないとまずい。


「今行く! 待ってろ!!」


「わぁああ……! 独りぼっちは嫌だぁ……! うぅ……」


 ああ、ミラもいたんだっけ。こんなに泣きじゃくちゃってまあ。本当に置いていかれると思ってたんだな。そんなことするはずがないだろうに。……いや、当時の俺だったらやりかねなかったかもしれん。


「ほら。早く、手、出せよ」


「う、うんっ! ……ぁ、ありがとう」


 照れるミラを引き連れて外に飛び出す。

 このミラにとっては千年後の世界へ。俺にとってはさっきまでいた世界へ。


「いた! セトラ、伏せろ!!」


 今にも自律天使に負けそうになっている瀕死のセトラ。

 もうすぐ近くに死が近づいているにも関わらず、彼女は目をぱちくりさせて俺とミラの方を見つめていた。


「えっ、えっ? どうして私の名前――」


「話は後だ! 行くぞミラ!!」

  

「ひゃっ!? き、気安くさわるなぁぁ!!」


「へ……?」


 自律天使に向かって駆け出すために、いつものようにミラの手を取ろうとしたその瞬間。

 小さく白い両の手のひらで突き飛ばされた。

 完全に態勢を崩し、盛大に、間抜けに、自律天使の目の前でずっこける俺。顔を上げると、自律天使が鋭い槍を振り下ろす寸前だった。


「あ、やば――」 

 

 ああ、そうか。このミラは、まだツンツンなミラなのか。

 まさか死因が「ミラの好感度が足りない」なんてことになるとはな。こんなことなら封印中も、仲良くしておくべきだった……。

 

 ――突如、綺羅びやかな純白の装備に身を包んだアトラが何もない空間から現れたと思うと、手にした剣で自律型天使を真横に薙いだ。


「は……? アト……ラ、なんで?」 


 ある意味天使よりも天使らしいセトラが振り返りざまに告げる。


「さあ、始めましょう。二度目の神話戦争つよくてニューゲームを」



「――なんて展開はどう?」


 気がついたら辺りの風景は全て消え、何もない真っ白な世界に俺とアトラだけが立っていた。

 ……もう突っ込まない。これはきっと妄想なんだと言いくるめる。

 そして……二度目だと?


「勘弁だ!! ここまで来るのにどれだけかかってると思うんだよ!」


「ふーん。でも、もしやり直すならエルメリアの惨劇は防げたかもしれないし、ウェン君が起こした事件を未然に防いでプロビナへの日程を短縮できたかもしれないよ? そしたらもっと被害は減ったかもね」


 突かれたくない部分を容赦無く突いてくる。昔っからアトラのこの物言いには悩まされたっけ。

 確かに、彼女の言うとおりかもしれない。もしエルメリアが滅びなければフレイヤは罪を背負わなくてもいいだろう。けれど同時にこれまでの旅の中で交わした言葉、出来事も全てなくなってしまうんだ。ガーデンでセトラが見せた涙も、フレイヤと一緒に作った指輪も、ミラの不器用な告白も、全部。


「……。それでも、あいつらの気持ちを聞いて、それでいてやり直すことなんて俺には出来ないよ」


「ありゃ、意外と自分本位なんだねー。」


「……っ。悪いか。皆が思ってるほど俺は英雄じゃないんだ。もう一度やり直したところで上手くいく自信なんて無いよ」


「私と旅したシロだったらやり直すんだろうなー。そっかーそれほど大事なのかー。妬けちゃうなー」


 ぷくーっと膨らませた頬、それが本心なのか演技なのかどうかは俺には測りかねた。 


「まあ、そんなこと出来ないんだけどね!」


 ちろりと出した舌が可愛らしいのが余計に腹立つ。 


「相変わらずヤなやつだなお前……」


「とか言いつつ私の事好きだったくせにー」


「ば、バカ! そんなこと――……なくも……ない、けど……」


 いたずらっぽく笑う彼女は無邪気で、子供のようで。

 あぁ、この顔が好きでこいつについて村を飛び出したんだと思い出す。


「さあさ、シロがいい感じに後悔したところでそろそろ現実に戻ってもらおうかな。今回はいいとこ全部取られてるからね、あとちょっとなんだから頑張ってよー?」


「ああ、あとちょっとだ……もうすぐ、旅も終わる」


 そう言いつつ、ふとある考えが頭をよぎった。


「なあ、もし、もしもだけどさ。俺が神の力を手にしたらさ。お前に……また会えるのかな」


 ――さあねー。私難しいことわかんなーい。……じゃあね、ばいばい。


 俺に背を向けつつ答える彼女の姿が徐々に、徐々に遠くなる。

 意識の波に消え行く、振り返り際に見せた彼女の横顔は笑っているのか、それとも悲しんでいるのか。

 やっぱり彼女の考えている事は俺にはわからなかった。   

 エイプリルフールネタと言うにはちょっと違うかな……?と思いますがほんのお遊び短編でした。

 最初はおふざけ全開のつもりだったのに割と真面目なお話になっちゃいました。


 あ、今日中に本編更新できたらします。


たくさんのブックマークありがとうございます!

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