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Q.隣にいる魔王から5m以上離れないで世界を救うにはどうすればよいか?  作者: ねここねこ
二章 紅蓮の街の寡黙少女
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Q.5 風呂に入れなくて怒る魔王を手懐けるにはどうすればよいか?

新章です!

ようやく旅してる感が出てきたかも。

 ――どうして、どうしてみんないなくなるの?

 わたしが触れてしまうから? 

 昔からそう。きれいなお花さんも元気な小鳥さんも、みんなみんな灰になっちゃう。

 ……そして今日、とうとうわたし以外だれもいなくなっちゃった。

 

 わたしが自分を大事っておもっちゃったからかな――みんなみんな灰になっちゃった。

                 ――嫌だよぉ……だれか、だれかたすけて。




 ガロニアの森を出発して早二日。

 せっかく洗った髪がもうボサボサになったとミラは今朝からやたら機嫌が悪い。

 一人で勝手に進んでいるのに、例の指輪に引っ張られては一々舌打ちをする程度に機嫌が悪い。

 

「……もうっ! 何時になったら魔界につくのよっ!?」


 ちなみにこの発言は本日八回目。時刻はまだ午前の十時。起きたのが6時だから約三十分おきにこのセリフを聞いている事になる。もううんざりだ。

 八回目にもなるとセトラも咎めはしないものの、苦笑いが漏れ出すくらいには困っていた。


「ま、まぁまぁミラ様。もっと景色を楽しんでゆったりいかないと気が滅入っちゃいますよ」


 百歩譲ったところでミラにはそんなことできる訳が無いだろう事はセトラも承知しているだろうけど。


「ところでさ、セトラ。ずっと疑問に思ってたこと聞いていい?」


 古くなってしまい荒れ果てた農道を歩きながら隣のセトラへ語りかける。


「はい何でしょう? 可能な限りは答えますよー」


「あの塔……『カディンギルの塔』だっけ? あれを登ると具体的にどうなるんだ? まさか登りきっただけで世界の崩壊を止められるなんてことないと思うし、いまいち目的が不透明なんだよな」


 振り返れば高くそびえるあの忌々しい塔を指さして尋ねてみた。

 当の天使たちはあの様子だし、コミュニケーションが取れるかすら怪しいしな。


「あ~そういえば詳しい説明がまだでしたね。じゃあちょっと楽しくクイズ形式とかどうですか? 最初の解答者は……ミラ様!」


 多分セトラなりのどうにかして旅の疲れから気を紛らわせてやろうというミラへの気遣いだろう。

 俺でもすぐに気が付くほど露骨な誘導だったが、それでもミラには効果が絶大だったらしく、


「やるやるっ! えっとねぇ……登りきったら神が何でも願いを叶えてくれるとか!?」


 おいおい、悪魔代表。立場的にそんな簡単に神を信仰していいのか……?

 と、ついノリノリで自身の地位を忘れかけているミラにツッコみを入れたくなる。

 

 ……かつての人間にしたらそれが「神」のあるべき姿だったんだろうがな。

 神の使いが世界を滅ぼそうとしているんだ、信仰心もダダ下がりだろう。そっちを生業としてた人達にとってはいい迷惑だろうな。  


「ぶぶー残念です! でもほんのちょっと近いですね」


「えぇー? じゃあわらわが新しい神になるとか?」


「また随分と飛躍したな!」 

 

 流石元支配階級、王としての教育がしっかりと行き届いている!

 だけど…、 


「それこそやばいだろ。お前が神なんてこっちからしたら堪ったもんじゃない」


「むー。じゃあシロは真っ先に排除ね! 後で後悔しても知らないから」


「なっ! ってかどっちにしろミラが神になったら俺も隣に居ないと駄目じゃねーか」


 あ……。言ってからセトラも一緒に居る事を忘れて発言した自分のうっかり加減に気が付く。


「あらー、お二人もすっかり仲直りしちゃって、むしろお熱いくらいですねぇ~」


 ニヤニヤ。ああ、もう! こういうトコが凄く先祖に似てて腹立たしい! 憎めないんだけどな!


「別にそんなんじゃないし、シロはパートナーで命を共にしてるだけよ」


 こちらはこちらで割り切ったのか非常に淡白な反応で、以前の様に激昂したり過剰に照れたりという反応は示してくれなくなった。……本音を言うとそれはそれでちょっと寂しくもある。元ミラを適度にいじめて楽しむ会会長としてはこの反応が一番心に来るのだ。


「……じゃあ何だ? まさか神を殺す訳でもあるまいし」


「あ、惜しいですね! んーじゃあここらで正解発表にしましょうか」


 ちょっとした茶番を挟んだことで会話が幾分か軽い物になったけど、この話の核心とも言える部分であるここだけは俺もミラも息を呑むほどに張り詰めていた。

 一体世界を救うために今度はどんな壁を越えさせられるのだろうか…?


「神の解任請求権の獲得です。下級生物わたしたちへの救済処置なんですかね?一応」


 返って来たのは意外な答え。 


「要は代替わりですね。襲名です。お二人が戦ってらした時代よりももっと前にもあったらしいですよ? 私のおばあちゃんがよく巫女の一族の歴史を話してくれたものです」


「……随分とまたお堅い感じだなそりゃ。……話し合いで解決するのか」 


 もっとこう命を懸けたバトル的なアレかと……。でもちょっとほっとした。神が相手とか強大すぎて戦っている所すらも想像できないから。


「またまた~、何のために『最強』と『最凶』を呼ばせてもらったと思ってるんですかぁ~。自分が要らないって言われて怒らない神がいる訳無いじゃないですか!」


「ん、だよね、まあわらわは敵が思いっきりぶちのめせるならそれで良いんだけど」


「良かねーよ! この前だってその手下の天使相手に死にかけたんだぞ!?」


 今の束の間の安心を返してくれ!


「もし、現在の神がそれを了承したとして、新しい神に変わる時に二柱の仲介役を務めるのが私、巫女の役目ですね。世界に私だけらしいので大役です、えへへ」


 照れくさそうにはにかみながら自らの立場を明かすセトラ。大役という割には終始底抜けた明るさで話せる辺り、やはりアトラの性格を色濃く受け継いでいるのだと感じた。

 あほかと疑いたくなるほど能天気、魔王を封印する大役を背負わされた彼女も二つ返事だったしな。

 しかしこれで納得がいった。大勢を犠牲になってもセトラだけは生かそうとした理由がこれか。


「つまり『俺と同じ土俵に上がって来れてた奴にだけ交渉の権利をやる』と、そんな感じか」


「そう言う事です。なんともまあ上から目線ですよね……こっちは必死なのに」


「ふん、どんだけ強いか知らないけど一度地上こっちまで連れてきて地に這い這いつくばらせてからお願いさせてやるわ」


「ですね! 私も人類代表として物申したいこともありますし!」


 セトラの前向きな発言を受けてか、前方を歩くミラの足が見晴らしの良い丘に差し掛かった所で止まる。

 

「……二人ともごめん。わらわのわがままで魔界による事になっちゃって――」


「良いって言っただろ? だから気にすんなって、らしくないぞ」


「はい! まだまだ時間はあります、準備はゆっくり、ですよ。焦ってもいい結果は生まれませんから!」


「うん……ありがと。――あっ!! 向こうに建物が見える! 街だ!」


「おっ! どれどれ――」

 

 今夜の宿はどんなもんだ? 二日ぶりのベッドに思いを馳せながらミラへ近寄る。

 ……しかし、ミラの横顔はどこか様子がおかしかった。

 何か信じられないものを見たような――。


 それもそのはず、


「なん……だ……あれ……!?」

 

 ミラが街と認識したのは、正確には街だった・・・もの。

 規模からしてかつては栄華を極めていただろう街は一面焼野原、瓦礫の山々が積み重なっているだけで到底人が住んでいる様子には見えない。


「待ってシロ、これ、まるでさっき廃墟になったみたいな…」


「ああ、まだ煙がくすぶっている……。少なくとも何か月も前に滅びたって訳じゃなさそうだ」


「どうしたんですか二人とも。そんなに嬉しかったんですか――」


 追いついたセトラも、この非現実的な光景に絶句せざるを得なかったのだろう。

 一度言葉を失ってから、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。


「……ここは……比較的大都市だったんです。まだ辺境にあたりますけど…それでも生存圏の国家との交流が深くて……その活気から『紅蓮の街』なんて呼ばれてたんですよ……?」


 ――それがどうして?

 あまりにショックだったのかその場にへたり込んでしまうセトラ。

 

 幾ら崩壊して日が浅くても、あの分だと生存者は――、

 !!

 見つけてしまう。瓦礫の山に一人うずくまる少女を。

 

「ミラ、セトラ! いた! まだ生きてる!!」


 全ての荷物をその場に置き、ミラを連れ転げ落ちるように丘から降りる。

 急げ! まだ、今なら助けることが出来る!


 崩れかけの城門をくぐりいざ街に降りてみると、辺りから立ち込める死臭がひどくまともに息も出来ない。

 どこだ? どこにいる!?

 上から見た限りでは街の中央、被害が最も色濃く表れていた更地だ!

 

 街を駆け抜けていくうちに段々と建物が少なくなっていく。

 この辺、この近くにいた!


「おい! 無事か!? 聞こえたら返事をしてくれ!! ミラそっちはどうだ?」


「だめ、見当たらない!」


「くそっ!」


 近くに建っていた教会の屋根だろうか。

 前方の障害物を乗り越えたその先に――いた!

 虚ろな表情のまま座り込む少女に呼びかける。


「大丈夫かっ!?」


「……あ、うぅ……!」


 俺の呼びかけに反応した少女は、その不透明な表情をくしゃくしゃに崩した。

 泣き顔? いや、それだけじゃない。

 後悔とも困惑ともとれる。


 女の子に状況を聞こうと一歩踏み出す。と、

 

「……こ、こないで……っ!」


 緩やかに少女の輪郭が揺らめき、次の瞬間に現れたのは何処から現れたか少女を覆う火柱。


「うわっ!? お、おい落ち着け! 俺は助けに――」


「――だめ、シロ。もう、居ないわ」

 

 ミラの言う通り、消えた火柱の中にはもう、あの子は居なかった。

あ、後書きが何も思い浮かばない…!


もしよかったら気になる所を質問とかして頂ければ、答えられる範囲で答えるのでぜひお願いします。

そうすれば私としてもこのスペースを効率よく埋められて――!

それ以外の感想や指摘等のご意見も歓迎です!


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