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Q.隣にいる魔王から5m以上離れないで世界を救うにはどうすればよいか?  作者: ねここねこ
五章 B-part 人類生存安全圏の賢者
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Q.34 ひめごと?

セトラ株絶賛大暴落中。

「――とまぁ、楽しくお話ししてきただけなんですけど」


「つまり遊んできただけってことだねぇ~」


「……それはクアお姉さんもいっしょだよ。ねぇねぇそれより……、『お医者さんごっこ』ってなぁに?」


 純粋な知的好奇心を疼かせたフレイヤちゃんが、例の如くベッドでゴロゴロしているクアさんを見つめます。

 ふ、やはり幼いフレイヤちゃんは正直に話しても内容が分からない! けれどちょっと背徳感もある気が……。


「あはは~……実際手を出せなかっただろうから普通のおままごとみたいなものだと思うよ~」


 う、流石はクアさん。今日も勘がさえてますね……こわいこわい。


「てをだすって……? うーん、気になるけどまぁいいや……」


「や、ふざけてたばかりじゃないです。一応探りも入れたんですよ? ただあの方ガードが固すぎるというかですねー……。話術や心理戦じゃ敵う気がしなかったです。むしろ情報を引き出すならソルレーヌちゃんからですかね。仲良くなれた気がしますし」


 実際人類王のあの洞察力は何らかの魔法か能力の類だと思いますけど、気になるのは魔力の気配が一切しなかった事なんですよ。それにそれだけじゃ賢者かどうか見分けつきません。こちらの考えが丸分かりだというのなら向こうも簡単にボロを出すような真似はしないでしょうね。

 それでいてあの余裕ですからまいっちゃいます……。


「ふむふむ~。つまり収穫ナシと、じゃあ次はあたし達だねぇ~」


 く、事実です。事実ですよ……ええ……。憎たらしいドヤ顔しくされやがりますね。


「だから収穫がなかったのはクアお姉さんもだよ……。ちゃんとあとでいくらお金を使ったかも説明しなきゃいけないんだからね……?」


「ごめんってば~。セトラをからかいたかっただけ。ほんとフレイヤちゃんはしっかりしすぎなんだから~」


「む。まーたお金沢山使っちゃったんですか……。まぁいいです、お説教は後にします」


 クアさんが加入した時に増えた分が結構ありますから、結局は自分のお金を使っていることになっているんですけど。


「ふっふっふ、あたし達の成果はこれだぁ~!」

「……達……、もういいよそれで……」


 ぽふんっ!

 軽い音を立ててベッドに放り出されたのは――絵本?


「ははは、やだなぁークアさん。からかわないでくださいよー」


 微かに魔力は漂っていますけど、見た目普通の可愛いらしい絵本です。

 こんなので私を馬鹿にしてもらっても困りますっ!


「からかってないって~! 見てて見てて~!!」


 と、得意げなクアさんが解呪の魔法を唱えると、徐々に本が大きく、厚く――、

 

「って! これ王家の家系についての情報じゃないですか!? どうやってこんなの手に入れたんです?」


「……エレナお姉さん、あ……親切なお姉さんが特別にって貸してくれた」


 し、親切なお姉さん!? だ、だだ、誰ですかそいつ!!? 

 私が知らない間に


「というか! クアさんは一緒じゃなかったんですね?」


「あ~……うん。はぐれちゃったぁ~えへへ~」


「『えへへ~』じゃないですよ!! あれだけ言ったのに!! もしお二人とも何かあったらどうするおつもりですか!?」


「まぁまぁ~、無事に戻ってきてしかもフレイヤちゃんがお手柄なんだから許して!」


「はぁ……。で、中は読んだんですか?」


「難しそうな本だったからセトラに任せた方がいいかなぁ~って」


「ああ、なるほどです。じゃあちょっと時間かかるかもですけど読んでみますね」


 とは言え、この分厚さですか……。この国の歴史から考えれば数千冊の内の一冊ですからまだマシですかね。というかフレイヤちゃんはどうやってピンポイントでこの一冊を選んだんでしょうか? 本人も気づかない力があったり……? 気になります。



 あぁ……。隣で二人の楽しそうな声が。私……ひとり、読書……。

 大体なんなんですかこの家系図。

 直系全て男性じゃないですか。建国当時からテラさんが治める現在に至るまで子が男だけって、ここまで行くと意図的なものを感じます。

 悍ましい話ですが……意図的に間引いたりしちゃってるのでしょうか……?

 

 えっと、なになに?

 「他国との友好を保つための習わしとして王妃・王女を家系問わずガーデン国内から選定することを禁ずる」……?

 「他国、他村の満六歳の少女を王族の子と交換しその子を王女とせよ」……!?

 へ? 何ですかこれ……? 間引かれてなくて安心――じゃないですよっ!!

 幾ら古くからの習わしとは言えど、こんなのあり得ます……!? 

 もしこれが本当だというのなら千年近く王妃と王女は他国から連れて来られたことになっちゃいますよ?

 

 わ、地域としてはラ・ブールや風の谷リファ、宗教国家プロビナなんかからも女の子を迎え入れてる……!

 きっと美少女ばかり! う、羨ましい……!! なんていう国家でしょう。

 

「あれ、セトラなんか震えてるけど何かわかった~?」


「ぐ、ぐぐ……! ガーデンは私の敵って事がよぉーく分かりました!!」


「……どうしたのセトラお姉ちゃん? そんなにしかめっ面してるとしわ……とれなくなっちゃうよ?」


「うっ……ううっ……いいんです。私にはフレイヤちゃんが居れば……それで……」


「……。……でも昨日あのかわいいお姫様にでれでれしてた」


 つーんとそっぽを向いて分かりやすく拗ねるフレイヤちゃん。最初と比べると大分改善されましたけど普段あまり感情を出さないので、こんなフレイヤちゃんはかなりレアですよ!

 ただ、誤解はしっかり解いておきましょう。私セトラ・アーリエ、シロ様と離れてから何故か喜ばしい展開が多いですけどそれでもフレイヤちゃんが永遠のナンバーワンですから!

 

「違うから! ソルレーヌちゃんとは友達なだけだからっ!」


「いやぁ~じゃあフレイヤちゃんは何なんだって話に――」


「フレイヤちゃんはソルレーヌちゃんと違って――ん? ソルレーヌちゃん? 確かソルレーヌちゃんも第六王女・・……」


「ん~? それがどうかしたの~?」


「あ、いえ、この本に王女は他国の六歳の少女から選ばれるって……」


「ふ~ん? 少し変わった風習だねぇ。じゃああの子も外から来たの?」


「ソルレーヌちゃん、言ってたんですよ。『ぼくも赦されるなら外の世界、見てみたい』って」


 でもこれだけじゃあと一歩確証へとは至れません。単に幼い頃を覚えていないだけって可能性も……。 

 というかそうであってほし――、


「え~? じゃああの可愛い女の子はもしかしたら男の子かもしれないってこと~?」


「やめてえぇぇぇええ!!!」


 き、聞きたくないです! そんな、そんなっ、残酷な真実なんてありません!!

 全力で否定してやります!

 だって、あんなかわいい子が女の子じゃないなんて……!

 いや……意外とイケる……のでしょうか……?


「……セトラお姉ちゃん、最近ふじゅん……」


 見るからに好感度が下がった顔(ジト目眉顰め)を向けられる。

 ち、違うんです……。フレイヤちゃん……?


「……はぁ。早くシロお兄ちゃん帰ってこないかなぁ……」


 か、確実に私の一番弱い部分を抉る一言……です。


「あはは~、シロに会えたらいっぱい甘えなきゃだねぇ~♪」


 クアさん、心なしか活き活きしてますね!!


「うんっ! 楽しみ!」


 やめてぇ……。



「随分と積極的に接触したな。あのままではお前の秘密に気付かれるのも時間の問題――いや、もう気付いたか。これは」


「お兄様だってセトラお姉ちゃんをぼくのところまで向かわさせたでしょ。そろそろぼくも外に出てみたかったし丁度良かったんだ、セトラお姉ちゃんなら安心だし。やっぱりお兄様はぼくのこと止める?」


「止めるに決まっているだろう。お前を危険な目に合わせる訳にはいかない」


「ふふ……ありがとお兄様。そういうところ大好きだよっ!」


「お、おう……いや待て! 誤魔化そうとしても無駄だぞ! セトラを近づけたのは多少リスクを冒してでも奴の魔力をお前の力で登録するためであって――」


「ぶーぶー!……お兄様のいけずぅー。いいじゃんいいじゃんーっ!」


「こらやめろ! 服を引っ張るな!!」


「ただ外が見たいだけじゃないよ……。ぼくも戦いたいんだ。ここでお兄様に護られ続けるのはもう……いやだから!」


「ソルレーヌ……」


「第一っ! そんなにヤならお兄様があの塔のぼればいいじゃん!!」


「我はここを離れるわけにはいかん。アールグランドの歴史を、人類の歴史を、そしてお前を護らなければいけない。先祖代々への誓いとして」


「もうっ! お兄様のそういうところが嫌いだって言ってるの!! ぼくはもう一人でも戦える、世界を救うのっ!!」


「ま、待て! ソルレーヌ!! くそっ……勝手に出ていったらまた苛められるだろうに……。…………。さっきの大好きは何だったんだ……。我といえど傷つくぞ……」 

セトラはフレイヤに対する恋愛感情的なのは皆無なので犯罪じゃないです。たぶん。

ずっと村で一人だったので妹が欲しかったみたいな感じです。たぶん。


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