Q.32 一つ目の手がかり?
昨日投稿するつもりでしたけど風邪ひいちゃってずっと寝てました。
まだ頭くらくらする(>_<)
「いやぁ。それにしても大きな宮殿ですねぇ」
「築千数十年と聞く。間違いなくこの世界で一、二を争う建造物だろうな。――それよりも、だ。まさか昨日の今日、遠慮というのもを知らんのか貴様は」
言葉の上ではそう言いつつも、常にギラギラとした挑戦的な瞳の中にどこか楽し気な表情を見せる人類王、テラ・エルド・アールグランド。
「失礼でしたか?」
「よい、よい。近頃はこのような余興も無くてな、同じような日々の繰り返しに飽いておった」
「大変ですね。これだけの大きな街、国から離れる訳にもいかないですしね」
話をなんとなく天使がらみへと傾けてみる。
「ふ。やはり喰えん女よ。訊きたい事があるなら遠回りをせずとも直接言えばよい」
「あ、バレちゃいました?」
やっぱり相当キレますね、この方は。
私の思惑を見抜いた人類王は、けれども怒り席を立つことも無く、むしろより上機嫌に紅茶を大きく一口。
「何か隠してますよね?」
「ほう。何故そう思う?」
「うちにはとんでもない勘を持つのがいますので、びびっと来たらしいですよ」
「はは、リヴィアの子孫、クア=レーゲンだろう? 敵わないな」
……!
「……どこまでお見通しですか……!」
ここまでとは。到底話し合いで優位に立てる気がしない。たとえ私がどれだけ読心術や掌握術に長けていても敵わないとすら思えてしまう。
「許せ。王とはいえど隠し事の一つや二つある。貴様もそうだろう? 救世の――いや世界の主よ」
瞬間、数日前のクアさんの言葉を想起させられる。
何なんですか……! クアさんと違って本当に心が視られているような……。
「何もそこまで驚くことはないだろう。我は人類王。民の心を知りえずして何が王だ」
「……は、はは。規格外ですね。ここまで解っているのならこうして話す必要も無いんじゃないですか?」
「褒めずともよい。そしてだからこそだ。偽りの口から出てくる言葉もまた面白いものだからな」
何というか、流石以外の言葉が見つかりませんね。少しでも何かを引き出せると思っていた私が愚かだったと言わざるを得ないです。
「さて、追及が終わったところで他愛もない話を続けるか――そう言えば魔界の王が消えたらしいな?」
はは……。何とも楽しそうに話すのでしょう。まるで人と会話できることに喜びを感じているような。
この分じゃいくら粘ってもこっちの情報は「隠し事がある」程度しか得られませんね。
ならばせめてお望みの通り、人類王の時間の許す限りお話ししましょうか。
「――そうなんですよ。ですから今、魔界は大混乱なんですよねぇー」
~~
「さて、とフレイヤちゃん。いちおーあたし達は替えが利かない重要なポジションだから常に警戒していこ~……って……早速いないっ!?」
あー……やばいかも。
これはバレたらセトラに大目玉だろうなぁ……。探索するときの条件が「二人で行動」だったしなぁ~。
「ま、まぁ何とかなるよ~……たぶん」
フレイヤちゃんだって魔界での戦いを通して一回りも二回りも強くなっている……はず!
ぐぅ~。
……おなかすいてきたなぁ~。何か食べにいこ~。
……フレイヤちゃんもいい匂いにつられてくるかもしれないしね!
~~~
「……もう、クアお姉さん……迷子になっちゃった……」
……あの歳で迷子……手のかかる人だなぁ……。
探した方がいいのかな? どうやって探せばいいんだろう……?
――お兄ちゃんと一緒だ……。どこにいるかわからないから探せない。
「はぁ……」
ううん、だめだめ!
おちこんでたって二人とも帰ってこない……。まずはわたしに出来ることをやっていこう。
うん……お兄ちゃんならきっとそう言うから。
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情報の基本は図書館や資料館。エルメリアの時もそうだったって聞いたからとりあえずいちばん近い所に来てみたけど……。
「……広い」
たぶんエルメリアの数十倍。魔界の大図書館もおおきかったけど、ここはさらにおおきいかも……。
「……あ、あのっ」
「うん? どうしたの?」
とりあえず話しかけてみたのは、わたしよりすこし背がたかいくらいの司書のお姉さん。
えっと……、たしかこの国の王様について調べればいいんだっけ?
「お、王様の家族についてわかる本ってどこにありますか……?」
「へぇー! お嬢ちゃんまだ若いのにそんなこと知りたいなんてスゴイねー! いいよ、アタシが案内したげる」
「あ、ありがとうございます!」
良かった……。優しいお姉さんだ。
すたすたと先を行く小さなお姉さんの後について、本と本に挟まれた狭い通路を進んでいく。
「アタシはエレナ、エレナ=メティス。お嬢ちゃんは?」
「フレイヤ・リヒトムート……です」
あ……。言ってから気がついたけど、あまりほんとうの名前を言わない方が良かったかな……?
出発する前にセトラお姉ちゃんに「気をつけろ」ってしつこく言われたっけ。
「あ、あ~……っていうのは『よをしのぶかりのすがた』でー……ほんとうは、えーっと、あ、あ、アリス! アリスって言います!」
う、……われながら下手だ。名前だって絵本の主人公のしか思いつかなかったし……。
けど、エレナお姉さんは、
「ははは! 何それ探偵ごっこみたいな? アタシも昔はよくやったっけー。ま、よろしくねアリスちゃん!」
……信じたの? いまので?
こんなの引っかかるのはミラお姉ちゃんくらい……ミラお姉ちゃんでもきびしいかも。
「それで、どうして今時の子がわざわざ歴史を知りたいんだい?」
今度は理由……。これもしょうじきに話すわけにはいかない……よね。
「魔法学校のしゅくだいで……」
うん。こんどは大丈夫……なはず。ちゃんとここに来るときに魔法学校があることは目で見てるからたぶんばれない。
ま、まぁこのお姉さんだったらてきとうなこといってもばれないかもしれないけど……。
でもあんまりいい気分じゃないな……人にうそつくの。
「え、珍しい先生もいるんだねぇ! ほら、この国じゃ過去はあんまり重視されないからさ。って言ってもアリスちゃんくらいの年じゃまだわからないか」
「『かこはじゅうしされない』?」
何でだろう? 何かあったのかな……。
「こんな状況だけど、いや、だからこそなのかな。王様としては未来を見据えていた方がいいって考えらしくてさ。所々そういうのが教育とかにも表れてくるのよ」
「天使たち……」
「ん? 何か言った?」
「いえ、何でもないです……」
これだけみんながたのしそうに暮らしている国でも、やっぱり天使は人々をこわがらせているんだ。
「だからそういった過去がここ数年で急にこの図書館に集まってきちゃったんだよね。言ってしまえばここにいる人間は何かしら過去に囚われてる人ばっかなのかも。……アタシも、ね」
エレナお姉さんはなんだか悲しそうだった。
「……昔を忘れないのは、とても大切なことだと思います。わたしも、忘れちゃいけない人やことが……ありますから」
忘れちゃいけないことだから、そこから探し出せるものも、きっと、ある。
わたしが燃やしたエルメリア。ぜったいに忘れちゃいけないこと。
でも、それだから今がんばれてる。お兄ちゃんがいなくてちょっと不安だけど、でも、エルメリアの村のこと、バロおばさんやみんなの顔を思い出したらがんばららなきゃって思えるから。
エレナお姉さんは今度はおどろいた顔をして、そしてわらいながらわたしに抱きついてきた。
頭をなでなでしながら、
「えらいっ! えらいよアリスちゃん!! そういう考えが足りないんだよね!! 今の王政には! ……。おっとこれは不敬罪だ。今のナシ!」
わしゃわしゃとさらに髪の毛が乱される。
でも、ふしぎと認められたような気がして……いやじゃなかった。
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「さ、着いたよ。ここが秘蔵図書、王家の歴史が詰まっている書庫だ!」
「ひぞうって……わたしみたいなのが見てもいいの?」
「いいんだ。どうせ見ても誰も咎めないし、そもそもバレない。それだけ歴史が軽視されてるんだけどってもうこの話はいいか」
かぞえられない程の本棚の山。
わたし一人で読み切れるかしんぱいになってきた……。
「千年近く続いてるらしいからね、この国。そりゃこんだけの数にもなるわな。かくいうアタシも数百冊で読むの諦めちゃった口だけど!」
エレナお姉さんはにこっとピースマークを作りながら、あっさりと悪いことをしていたことをわたしに教えた。秘蔵図書と書かれたプレートの横には閲覧禁止とも書いてある。
大丈夫なのかな……この人。
良い人なのかどうか分からなくなってきた……。いや、良い人なんだけど……。
「さあ、アリスちゃんは何冊読む?」
両手をひろげてとくいげな顔のエレナお姉さん。
レッツ共犯! そう言いたそうな顔でもある。
『一冊でいい』
「……? 一冊?」
……え? だれの声? 自分でも分からないけど、なぜか読むのは一冊だけでいいって、まるでセトラお姉ちゃんの魔法みたいに誰かの声が、頭の中で直接そう教えてくれる。
『ここだ。君の求める物はここにある』
また……声。そして本棚の中の一冊がぼんやりと光りはじめた。
「……へ?」
「えっと、ごめんね。エレナお姉さん……。読むのはあの一冊だけでいいみたい」
「何で……分かるの?」
「えっと、何でだろう?」
わからないけど。
「本が、そう『言ってる』?」
あたりまえだけどこんなことは今まで一度も無かった。
エルメリアにいた時も、大図書館で本を読んだ時も。
「……へぇ。アリスちゃん。もしかしたらキミは……」
「え?」
「ううん、何でもないや。あ、本どれ? 高い奴はアタシがとってあげよう」
「えっと……左の棚の上から二段目、右から三冊目。とれる? お姉さんも背、高くないよ?」
「心配しなさんな。こういう時の為の司書だからね。あと背が高くないは余計だ!」
お姉さんはポケットから細い木彫りの杖をとりだすと、本棚めがけて一振りした。
すると、すーっと、わたしが言った本だけが本棚から抜き取られ、わたしの方へとよってくる。
「ちょいと重いかもだから、しっかり受け止めなよー」
「う……うん!」
ちょっとした魔導書くらいのおおきさの本は見た目の通り重かった。
両手でかまえていたけど、それでも足りない。
「おっとっと、大丈夫かい?」
エレナお姉さんに助けられてようやく、キャッチできた。
「よし。で、本当にこれでいいんだね?」
「うん、たぶんだけど……」
「じゃあこの本は流石に目立つから魔道貸出印とは別にもう一つ魔法をかけておいてあげるよ」
もういちどお姉さんが杖を振ると、ぶあつい本は絵本みたいな見た目に変化した。
「わ、すごい……」
「だろぉー!? すごいだろー!? 出来る司書ってかんじだろー?」
……どっちかっていうと犯罪に使われそうだけど……。それはだまっておこう。
「その……いろいろ、ありがとうございました」
「いーって、いーって。珍しいもん見せてもらったしそのお礼みたいなもんだから」
そう言うと、急にお姉さんは顔を近づけ、耳元で囁いた。
「大人になった時にまたおいで、フレイヤ・リヒトムートちゃん。もし気が向いたらここで一緒に働こう。ま、それまで世界があるかわかんないけどねー」
「……え? どうして――」
やっぱりばれてた……?
「はっはっは、大人の女性は多くを語らないからな! 今日はもうサヨナラだ!」
「は、はあ……」
――さ、出てって出てって! そう言われ、ぐいぐいと背中を押され、図書館をでる。
うぅ……。大丈夫だよね……?
変なお姉さんだけど悪い人じゃなさそうだし……。そもそも悪い人だったら自分から帰ってなんて言わない、はず……。
手元に残った可愛らしい絵本をもう一度よく見てみる。
昔読んだ絵本や昔話と変わりないような表紙で、中を見ないとこれが絵本じゃないなんて分からないと思う。
タイトルは……『小さな英雄に送る真実』。
「小さな英雄」……。これ……わたしのことじゃないよね……?
さすがに……ね。
……うん。わたしだけじゃぜんぶは読めないだろうから、とりあえずこれをセトラお姉ちゃん達に見せなきゃ。
これで……きっと何かてがかりが見つかるはず。
……。
そういえばクアお姉さんどこ行っちゃったんだろ……。
帰っちゃってもいいのかな……?
クアお姉さんのことだから、放っておいてもふらっと戻ってきそうだけどなぁ……。
なんて考えていると、
「お、ラッキ~! フレイヤちゃ~ん、やっと見つけた~!」
手にたくさんの食べ物を抱えたクアお姉さんをみつけた。
うわぁ……。あんなにいっぱい買っちゃったらぜったい後でセトラお姉ちゃんに怒られるよ……。
「およ? その本どうしたの~?」
「あ、これは……図書館でそれっぽい本が借りれたから」
「え? うそ、もう見つけたの~? あーだから魔法がかかってるのかぁ」
何だかあたしの魔法にちょっと似てるかも~と、絵本をまじまじと見つめるクアお姉さん。
「んーと……じゃあもうノルマは達成?」
「……うん。司書のお姉さんが言うには昔の本とかはあの図書館くらいにしかないらしいし、その中から選んだ一冊だからきっとこれで大丈夫……だと思う」
……うまく説明できないけど、わたしにはふしぎと自信があった。
「そっか。じゃあフレイヤちゃんを信じるよ~。あ、まだ時間あるし何か食べたいものとかある~?」
「もう、クアお姉さんまだ食べるの……? 後で怒られても知らないよ……?」
「いーのいーの、元はと言えばあたしがセトラの元金で稼いだお金だし~」
やっぱり……。ラ・ブールでセトラお姉ちゃんの財布拾ったのクアお姉さんだったんだ……。
まあ、結局みんなのお金になってるからいいんだけど……。
わたしの周りにはどうしてつかまりそうな人がおおいんだろ……。悪い人じゃないんだけど……。
「それにセトラだって王様とお茶してるんだし、あたしたちが遊んでても文句言えないって~!」
「うーん……そうかなぁ? でもお金の使いすぎは良くないからね……?」
「だいじょうぶ! じゃあ思いっきり楽しも~♪」
――フレイヤちゃんとデートだぁ~!
なんてはしゃいでいるクアお姉さんの後を、今度は見失わない様に追いかける。
……でも、ちょっと街に興味はあったからすこし楽しみ……かも。
セトラお姉ちゃんの方は……大丈夫かな……?
なんて考えてぼっーっと立ち止まったわたしのてを、
「さ、行こっ!」
つかんで、いきおい良く引っ張った。
……。
……ちょっと強引だけど……こういうところがクアお姉さんの良い所なのかも……ね。
怪しい人物がちらほら。
気を抜くとすぐにTwitterの更新報告を忘れちゃうのでここに書いてしまおう戦法。
これで忘れたらいよいよ私もやばいですね……。
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