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Q.隣にいる魔王から5m以上離れないで世界を救うにはどうすればよいか?  作者: ねここねこ
五章 A-part はじまりの村と二人の英雄
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Q.29 忍び寄る影?

一応五章の半分が終了。

次からは……。

 もう、別れの時間だ。

 ここに長く滞在することは出来ない。次なる目標、セトラ達との合流を図るためすぐにでもここを発たなければならない。

 ――ならないんだ。けど。


「それじゃあ、シロ頑張って! 私が諦めた未来をちゃんと救ってきてね!」


 屈託のない笑顔。オリジナルのアトラと同じあの笑顔。

 きっと無理をしているだろう。だが、すべてを受け入れた上での、この笑顔。

 未来を諦めたこのアトラから発せられた別れの言葉を、俺は素直に受け取ることが出来なかった。

 こいつからしたら、伝えるために気が遠くなるほど待ち続けた想いが昨晩潰えたのだから。それなのに……それなのに、こんな曇りのない笑顔をどうして俺が受け取れる?

 ……だから何て言って別れればいいか分からなかった。

 

 いっそ昨日の別れで終われれば良かった、なんて。

 我ながら独り善がりな考えが思考の渦を横切った。


「……シロ?」


 昨晩の出来事を微塵も知らないであろうミラは不審に思い小首をかしげている。

 数秒黙りこくった。

 すると、


「……もうっ! ほら、ちゃっちゃと行ってきてよ!! 私はここで待ってるから!」


 ほっぺたを膨らませたアトラに無理やり村の出口の方向へと向き直させられる。

 次いで、背中に両の掌の感触。大きく前に突き飛ばされる。

 

「って、なんだよ――」


「始まりの日!」


 まるで魔法の言葉の様に、アトラから発せられた言葉で情景が蘇る。

 彼女の背を追いかけて俺は……村を出たんだ。


「……今度は……シロの番だよ。……ほらぁ! さっさとミラちゃんと一緒に行きなさいっ!」


 アトラは泣いていた。

 大粒の涙をボロボロと落としながら。


「それで約束っ! ぜったい、絶対また(・・)会いに来て! ずっとここで、あなた達の帰る場所を残しておくから!」


「……ああ。『ぜったい』だ。必ずまた戻ってくる。今度は、セトラと旅の中も一緒に」


 これで終わりじゃない。生きていればまた会える。

 お別れじゃなかったんだ。

 だから、村中に聞こえる声で、


「いってきます!!」


 広々と晴れ渡った空まで届くような大声で。

 

「いってらっしゃい!!」


 背中に確かに届いた幼馴染の声。

 幻でも魔法でもない、温かさを持ったアトラの声。


「さ、行こうぜミラ!」


「うんっ! 冒険再びってとこね!」


「……なんだそりゃ。次の相手は魔王じゃなくて天使だけどな」


 振り返らないまま歩いていると、いつの間にか辺りは森に変わっていた。この時代では珍しい、魂が多く棲む森。

 ……やっぱりアーレア村はもう――。

 セトラは別の村で生まれたのだろうか? 流石に彼女がアトラの子孫でないなんてことはないだろうし。

 となると巫女の村も移転を繰り返している……?

 ま、それは今度会うときにでも聞いてみるか。ともかく合流しなくちゃな! 


「さて、どうやってセトラに会うかな!!」


「まさかの無計画っ!?」


 

 無計画と言われたが、どうやって足取りを掴んでいいものかが分からないのだからしょうがない。

 ここは魔界からかなり南に位置している。普通に移動しても軽く三か月はかかる距離。当然魔力での飛翔はミラが未だ魔力を使えないが為に却下。翼は――。

 じー……。 ミラの背中を見つめる。


「な、なによぉ! 何か変?」


「……翼とか出せないのか?」

 

 見た感じミラは完全に人間の少女の姿だ。どこからどう見ても十歳(中身はその数十倍)くらいだろう。

 ちょっとの間だけでもあの大きな翼が出てくれたらかなり移動が捗るんだが。


「出せないの! てか出ないの!」


「……でもミラ自身に問題があるって」


「知らない! 前みたいに出そうと思っても出なくなったんだから!」


「むぅ。すまん」


 こっちも早々に何とかしないと、だな。


「じゃあ取りあえず近くに村があったら馬を買おう」


「お金セトラが持ってるのに?」


 ……しまった。ラ・ブールで預けたままだったことをすっかり忘れていた。


「これ、結構ヤバくね?」


「やばいわね。かなり」


 世界崩壊まで後二年。もしかしたらその間にこの広大な世界でセトラを見つけることすら叶わない……?

 

「アトラにあれだけのこと言って出て来たのに合わせる顔がねえ……」


「シロってほんとかっこ悪い勇者よね。歴代の中でもかなり高ランクのダサさじゃない?」


「やめてくれ……その自覚は前からあったから……」


「でも、あいつと被っちゃうのなんでだろ……?」


 何やらぶつくさとさり気にディスりながら前を歩いていくミラ。

 誰か、俺を慰める心優しき人……いませんかね?





 ――えへへーっ! ここにいるよぉ。シロお、に、い、ちゃん♪ 





 その天使は木から、いや、天から落ちて来た。

 小さな小さな、悪魔の様な天使。

お疲れ様でした。

合流は何時になるやら。


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