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Q.隣にいる魔王から5m以上離れないで世界を救うにはどうすればよいか?  作者: ねここねこ
四章 枯れた大地の叶わぬ願い
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A.3 ふんふんふーん♪

天使パートその3。

敵勢力も曲者ぞろいです。

「ふんふんふーん♪」


「ちょっと、ラファエル先輩ー? 遊んでないでしっかり自律型の指揮執ってくださいよー」


 人間領北部、あと少し西へと進めば魔界へと続く山道の上空に、「七天の主翼」の内、三つの翼が集っていた。

 ラファエルと呼ばれた美麗な天使が、他人と比べてふわふわとした表情、口角を僅かに引き締める。

 

「ごめんなさい。そろそろだよね、うん」


「はぁー。先輩のそのほんわかした性格羨ましいですよー。わたしももっと余裕が欲しいですー」


 いつもの通りまた裏でよからぬことを企んでいたのだろうと、ラミエルを横目で見やる成人男性のような姿の天使。話につられてか、ラミエルが小さく、しかし長めに欠伸をしたのを見て、


「ハハ、そんな眠そうなコンディションで僕よりも戦果を挙げられるのかな?」


 またか、そう思ったラファエルはヒートアップしていくであろう二人のやり取りを事前に止めようとして口を開く。――が、


「…………」


 しかし、ラミエルの無言を受け、彼女は何も口にせずに再び口をキュッと結んだ。


「…………ふん、後は戦果で語りましょうか」


 普段ならまず間違いなくラミエルとこの男――ラグエルとの会話は口論に発展していただろう。しかし、今日のラミエルは冷静だった。冷静というよりは、むしろ彼女自身が知らず知らずの内に焦っていた故の無言なのかもしれない。

 エルメリア制圧時にラグエルが一度敗北した事実、そして魔界を制圧するためだけに自立型天使約二十万体、さらに「七天」が三人も投入されているというこの現状に、彼女は不信感を拭えなかった。

 彼女は無言のまま、敵対要素、中でもとりわけ危険な人物をピックアップしていく。

 魔界の現当主、メギドラ・ロノウェ・エイワーズ? いや、ならばせいぜい一人で事足りる。

 大図書館の死神、バゼッタ・ノルン・エイワーズ? いいや、障害ですら無い。

 人類側の干渉? それともまだ知らぬ第4の勢力があるのか…? 

 わからない。……が、どれも自分たちにとってはさして脅威ではないだろう、と。

 彼女はそう思ってきたし、今でもそう思っていた。


 ならば、主にここまで念入りに対策を打たせた人物は……?


「……『しくじりラグエル』さんー。あなたが負けたあの二人、そこまで危険なんですかねー?」


「……その名前で呼んでまともな回答が返ってくると思うなら、君はやはり下界の虫以下の知能だね」


「ラグエルさん。結構真面目に教えてほしいんですよー。何故神の力を持つあなたが負けたのかを」


 ラグエルの表情が曇る。珍しく素直なラミエルの様子に違和感を覚えた彼は、一拍間を空けてから言葉を発した。


「……確かに下界の虫だと舐めていたかもしれない。しかし彼らが持つ力は本物。一番厄介なのは旧魔王よりもあの、『空っぽの勇者・・・・・・』の方かもしれませんね」


「へぇー。意外ですねー。あなたがそこまで他人を評価するなんてー」


「そうかな。……うん、確かに認めているのかもしれない。けれど、彼らを葬るのはこの僕だ。本当は塔で絶望を味わせたかったが、主の命令とあらば仕方ないかな。ここで終わらせよう」


「…………へぇー。まあ、何が相手でも世界を創り直しますよー。それが主の宿願であり、わたし達の存在理由ですからー」



 地上では戦闘がすでに始まっていた。魔界側も、人類側も、誰も知らない所で密かに。しかし、確実に世界の命運を握るであろう闘いの前座試合が。

 籠から解き放たれた鳥の様に、自由に、無軌道を描き、魔界の空を守る二人の英雄の姿。何十万倍の勢力差を物ともせず、たった二人だけで次々と量産型の天使を削っていく。


「ふーん。あれがラグエルちゃんが戦った子達かぁ。量産型じゃまるで歯が立たないみたいねっ!」


 見下ろした景色を眺め、やけに嬉しそうに声を弾ませるラファエル。


「あの魔法……ですか? あれは厄介ですねー。わたしでも干渉できないかもしれません」


「……。僕は行くよ。今度こそ彼らを絶望のどん底に突き落とすためにね」


 彼らの姿を見て、唐突に、まるで磁石の様に英雄たちに引き寄せられ、薄黒い雲へと飛び込んでいくラグエル。

 そんな彼に次いで、

 

「……わたしも行きましょーかー。見せてもらいますねー、――神を討つ力とやらを」


 消えていく二人の天使を見つめて、ただ一人雲の上に残された天使がぼやく。


「全く、二人とも何だかんだで息ぴったりなんだから困っちゃうなぁ。勇者ちゃんたちが強すぎたのもあるけど予定がめちゃくちゃだよぅ」


 ――まあ、こうなっちゃった方がお姉さんも自由に動けるから、これはこれで、ね♪ 


 そう言い残し、二枚の召喚符・・・・・・を胸元から取り出したラファエルも、愉快そうに頬を緩めて下界へと堕ちていった。

次回は交戦とか言ってましたけど、先に天使サイドでした。ごめんなさい。

次こそはちゃんと戦う予定です。


毎回見て貰えて嬉しい限りです!

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ブックマークしてくださってる方、ありがとうございます!


最近急に閲覧数、ブックマークが増えてびっくりしたり……。


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