幽霊船
初めまして!とおかです。
主人公が一切名乗らないので注意してください!
幽霊船
◇◇◇
春夏秋冬、昼夜問わず、ずっと霧の出ている《霧の海》には座礁した船がある。
正確には乗り上げる暗礁など無く、偶然そこに停まっているのだが詳しい話は別の機会に話すことにする。
その船―幽霊船と呼ばれる―にただ一人で棲む人形、ソクロヴィスチェは長きに渡り封印されていたそうだ。そのせいで少し狂人がかっていると言う話もある。
そんな幽霊船の周りで奇怪な噂が立っていると言う。
風の噂(妖精や精霊の話)によると、今、霧の森では、妖精同士の衝突事故が相次いでいるらしい。
間抜けな妖精のことだから余所見でもしていたんだろうが、霧のなかでも地形を把握できる妖精がそう度々ぶつかるのもおかしい。
私の第一の予想は、この近くに棲む霧を操る妖怪が、霧に方向感覚を狂わせるような効果を混ぜた、ということ。
もうそれしか考えられない。うん、きっとそうだ。
しかし実際に聞いてみるとそんなことはしてないと言う。
おまけに「そう言う効果を付けてみるのもおもしろそうね」と言われた。
もし霧の森で行方不明者が続出したとすれば、それは私の所為だ。ああ、頭が痛い。
こうなったら実際に幽霊船に調査しに行くしかない!
◇◇◇
霧の向こうに幽霊船が霞んで見えている。
いつも霧に覆われているから、道具が妖怪となった九十九髪は湿気やカビを嫌い、ここ一帯には近寄らないらしい。
霧のせいで蒸し暑いなか、耳に入る鳥のさえずりに、ふと違和感を覚えた。
鳥の鳴き声ってこんなんだったか?
それは、よく聞いてみるとぶつかる音と妖精達の悲鳴だ。
なるほど噂は本当らしい。歩いていると何度かぶつかっている妖精を目撃した。
しかしこれだけ妖精同士でぶつかりながら、私には一回もぶつからないのはなんとも不思議だ。
幽霊船に入ると、霧とそこにいる幽霊たちとの相乗作用で少し肌寒い位だった。
しかし―、呼び名の雰囲気から荒廃しているものだと思っていたが、意外と、あまり荒廃していない。
マストもまだ使えるだろうというくらい、しっかりしている。
(もう少し破けてたほうが幽霊船っぽいのにな…。気味が悪いのは、どこかから視線を感じることぐらいか。)
たたまれた帆を見ていると、不意になにかの音楽が聞こえてきた。
高めの、弾むような音。
耳を澄ますと、どうやら音は船の中から出ているようだ。
船内へ続く扉を開き階段を降りる。音はちょうどこの階から聞こえるようだ。
音が出ている部屋にたどり着き、入ってみたが、人形と音の正体であろう木琴が落ちているだけだった。
九十九髪は道具の姿に戻ることができたりするが、これらの物からは妖気や霊気、魔力と言った類いのものが感じられない。
私が知る限り、道具に戻った九十九髪にも、そうったものが残っているはずだ。
―どんどんどんどんどんどん!
人形を見ていると扉が激しく叩かれた。腰の短剣を抜き、扉を開ける。
が、そこには何もなく、人形が落ちているだけだった。
振り返りざま、握っていた短剣を振り下ろした。
手応えがあった。
真っ二つに切れた人形が落ちて行くのを一瞥して、私は部屋を出た。
もちろん、扉を叩いていた人形も、動けないようにしてある。
私はかくれんぼは嫌いじゃない。見つけてやろうじゃないか。
◇◇◇
しかし意外とすぐ見つかった。
人形を操っていた犯人は、船体の一番下、木箱が部屋の端に幾つか積んであるまあまあ広めの部屋で隠れていた。
いろいろなもの、人形や玩具が散らかっているところをみると、普段からここの部屋に住んでいるのだろう。
「なんで怖がらないのさ」
人形を操り怖がらせようとしていたらしい、金髪の妖、ソクロヴィスチェは不満そうに頬を膨らませて言う。
怖がれ、と言われても…。
いや、普通は怖いのか?
とりあえず無視して、このあたりで起こっている妖精の衝突事故の話について、心当たりはないか聞いてみた。
ソクロヴィスチェはやけに嬉しそうに聞いていた。
そして話が終るとニヤリと笑って答えた。
「私の所為だよ」
◇◇◇
天井の板の隙間から差し込む光は幽霊船の廊下を微かに照らしていた。
ソクロヴィスチェは自分が妖精の事故の原因と答えた。
私の求めていた答えだ。
しかし、一体何故どのようにして、妖精同士をぶつけているのだろうか。それについて聞いてみると、
「どうやってると思うー?」
と、逆にソクロヴィスチェが訊き返してきた。
人形を操っていたように妖精同士をぶつけたのか?
「それだと妖精達は気付いちゃうよねー?」
両手でバランスをとりながら、木箱の間に渡された棒を渡って遊んでいたソクロヴィスチェは、楽しそうに口をはさんできた。
ああ、確かにそうだ。妖精は敏感だ。
妖精の話の中で、そういった話は聞かなかった。
「降参だ。どうやってやったんだ?」
私がそう訊くと、ソクロヴィスチェは待ってましたとばかりに一言。
「ただの偶然だよ。私はねぇー、偶然を操るの!」
よく分からずにいる私を他所に、ソクロヴィスチェは落ちている数十個のサイコロをすべて拾い集めた。
そしてソクロヴィスチェは両手で宙にばら撒いた。
床に散らばったサイコロはの目は全て…。
◇◇◇
ソクロヴィスチェの能力は本人にも何が起こるのかわからないらしい。だから自分が招いたなんらかの《偶然》を繰り返し起こしていたとか。
私のおかげで今回の偶然を知ることができたと言っていたが、外に出ればすぐに気づけただろうに…。
何故外に出ないのだろうか。
何か外に出ることのできない理由でもあるのか…?
幽霊船 おわり?
今回はシリーズのプロローグ的な?何かなので謎な内容になりました。
次からはもう少しわかりやすくなってると思います。