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第二の大いなる災厄

戦いはこれからだ

「どちら様ですか?」


 俺の命を脅かす生命体が、ショックで動くことすら出来ない俺に、そんな言葉を発した。


 脳内から逃げろ!全速力で逃げろ!!!と何度も信号を発信するが、予想だにしなかった事態を前に、俺の体は恐怖によって支配され、一歩として動き出す事が出来ない。


 楽観的な考えなんてするべきじゃなかった。


 やはり俺のお隣さん家は、とんでもない魔窟だったのだ。


 新たに現れた美少女おおいなるさいやくは、俺が知る音無鈴奈おおいなるさいやくと何処と無く似ている気がした。


 奴をもう少し幼く小さく小型化して、雰囲気をもう少し元気系からおっとり系にし、更に髪の毛が腰近くまで伸びたストレートヘアにした感じと言えば想像しやすいだろうか。


 あまりの恐怖の為か、何処か意識は別の考えにシフトして、目の前の恐怖に対して客観的な考察をしていた俺は、この第二の美少女おおいなるさいやくの正体について、もしかしたらという一つの仮説が浮かび上がった。


「……その右手の包帯。もしかして、お兄さんがお姉ちゃんを助けてくれた人ですか?」


 第二の美少女おおいなるさいやくが、俺の仮説を証明する決定的な一言を口にする。


「……えっと……初めまして。隣に住んでいる高須です」


 終わらぬ恐怖を前に、喉がカラカラになりながらも、何とかして挨拶だけは口にすることに成功した。


「あ!やっぱりお姉ちゃんが言ってた人だったんですね。その際は不肖な姉を助けてもらってありがとうございます。私は音無鈴奈の妹で、音無おとなし 綾奈あやなです。これからお隣同士なんですし仲良くしましょうね、お兄さん」

 

 俺の予想通り、この第二の美少女おおいなるさいやくは、奴の妹であることが本人の自己紹介によって証明された。


 それは別に良いのだが、次の瞬間。


 予想を超えた事態が、俺を窮地へと導く。


 何と奴は、無造作に俺の手を掴んだのだ!?


 シェイクハンド……つまり握手である。


 この時、俺の全身から全ての体温が抜け切ったような錯覚に襲われ、恐怖すら超えた虚無感が胸の内を支配した。


 そして俺は大きな絶望に心を蝕まれながら、意識を失った……。













「黄色い救急車だけは呼ばないでくれええええええええええええええええ!!!」


 俺は悪夢を振り払うように叫んだ。


 周囲を見渡せば、見慣れた俺の部屋の光景が目の前に広がっていた。


 何がどうなっているのか意味が分からない。


 遮光カーテンの隙間から薄っすらと光が漏れているので、夜ではないということだけはすぐに理解出来たが、その前後の記憶は寝ぼけているのか酷く曖昧だ。


 どうして俺は自分の部屋で寝ていたんだ?


 混乱しながらではあるが、俺は一つずつ順序を立てて頭の奥底から思い出すことに終始試みる。


 別に記憶喪失になった訳ではなかったので、一度落ち着いてから考えてみた結果、どうして俺が意識を失ったのかという部分まではすぐに思い出すことが出来た。


 その後どうして俺が自分の部屋で寝ていたのかは、意識を失っていたので想像でしかないが、きっと俺が気を失ったことを、お隣さんの誰かが俺の母さんに伝えてくれたのだろう。


「……取り敢えず水でも飲もう」


 他にも考えるべきことは多々あるのだが、気絶する前のことと、いくらかの時間とはいえ寝ていたせいで先程から喉が渇いて仕方ない。


 俺は部屋を出て、キッチンに向う。


「あら、英太。あんた起きてきて大丈夫なの?」


 キッチンでは母さんがニンジンを刻んでいたのだが、俺を見るなり、包丁を片手にこっちに向ってくる。


 心配してくれるのは嬉しいのだが、包丁片手に来られると、何だか猟奇的に見えるのは俺だけだろうか。


 しかもニンジンの汁が少しだけ付着しているのが、余計に変なリアリティーを醸し出している気がしてならない。


 もしもこれがニンジンではなくトマトだったとしたら、絵的に更にショッキングな感じになりそうだ。


「大丈夫って?」


「あんたってばお隣さんに行って気絶したのよ。この前階段から落ちた時に捻挫したって言ってたけど、頭も打ったんじゃないの?頭への衝撃は打った直後よりも時間を置いた後に出やすいって良く言うし……これから病院に行く?」


「……いや、あれは気絶っていうかここ最近あんまり寝てなかったし、母さん達が旅行に行ってる間、ちょっと偏食してたから、貧血だと思う。今はなんとも無いし大丈夫だって」


「それなら良いんだけど……具合が悪いと思ったらすぐに言いなさいね。すぐに病院に連れて行ってあげるから」


「分かったよ」


 俺は母さんに返事を返しつつ、冷蔵庫を開けて、中から買っておいたミネラルウォーターを取り出すと、これ以上何かを言われる前に、足早に自室へと退散した。


「……どうやら俺が思っていたような事態にはなっていなかったみたいだな」


 自室に戻った俺は、一人そう呟いてから、飲み口のキャップを開けて、ミネラルウォーター中身を一気に飲み干す。


 思っていたよりも俺は喉が渇いていたらしく、500mlの容量を誇るミネラルウォーターの中身は、あっという間に俺の胃袋の中へと飲み込まれ、俺の乾いた喉を存分に潤わせた。


 俺が一番懸念していたことは、俺の美少女恐怖症が周囲にバレルことだった訳だが、心配し過ぎたったようだ。


 正直に言って美少女恐怖症なんて奇病を疑う人間が何処に居るのかと、当人である俺ですら疑うレベルなので、早々無いとは思うのだが、俺が気を失っている間に、寝言として暴露しているなんて可能性も無いわけじゃない。


 母さんの反応から察するに、今回はそんなことは無かったと分かるし、気絶に関しても無用な心配をさせてしまったが、咄嗟に言い訳に出来そうな状況が多かったので疑われることは多分無いだろう。


 それにしても、恐ろしきは第二の美少女おおいなるさいやくである。


 まさか何の躊躇もせずに、触れてくるとは俺の予想を遥かに超える恐怖の存在だ。


 友好を示すのに握手をする機会なんて、無いとは言えないがまさか何の断りも無く握ってくるなんて誰が予想出来る!?


 俺は新たな脅威に戦慄しながら、新たな対策が必要だと強く感じた。


 だがこの先に更なる恐怖が待っていることを、俺はまだ知らない。

美少女姉妹がお隣さんとか……

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