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旅人さんシリーズ

サクラトリ

作者: 風紙文

旅人が訪れた街に、綺麗な花を咲かした木々の並ぶ並木道があった。木には桃色の花が咲き誇り、風が吹く度にその花弁を散らしている。

仕事をする場所を探して旅人がその並木を歩いていると、前から小さな少年が歩いてきた。

「こんにちは!」

元気よく挨拶され、旅人もこんにちは、と挨拶する。

「旅人さんもサクラトリですか?」

サクラトリ? 旅人は首を傾げた。

「この風に舞うサクラの花びらを、地面に付く前に取ると願いが叶うんだって、おかあさんが言ってたの!」

木々を指差して少年は説明してくれた。

「日が暮れるまでに取れた数で願いの大きさも変わるんだって!」

願いの大きさ。それを聞いた旅人は、キミの願いは何なの? と訊いた。

「それは秘密! 誰に聞かれても内緒にしなさいって言われてるんだ!」

なるほど、旅人は納得した。

「それでね、サクラトリをするならこれを着て行きなさいっておかあさんが言ってたんだけど、どうしてなのかな?」

少年が両手を拡げて着ている服を旅人によく見せた。下は動きやすそうな半ズボン。しかし上はだぼっとした、フードのついた服だ。街には現在冷たい風が吹き、サクラの花を散らしている。下は動きやすさ、上は暖かさを重視したのだろうと旅人は思った。

「旅人さんもどうですか?」

少年に誘われた。だが旅人は仕事の出来る場所を探していたので、その誘いを断った。

「そっか、じゃあ僕一人で頑張るからね!」

少年は上を見て、サクラトリを開始した。

頑張って下さい、旅人は少年に言ってから。並木道を歩いて行った。



しばらくして、もう日が暮れそうという時、旅人は昼間の少年が気になって再びサクラの咲く並木を訪れていた。

そこには少年がサクラの花びらを捕まえようと右往左往する少年が居た。

首尾はどうですか? 旅人は声をかけながら少年に近寄る。

「あ、旅人さん! 見てよコレ!」

少年は旅人に気付くと自ら駆け寄り、ズボンのポケットに入れていたサクラの花びらを旅人に見せた。旅人と別れてからずっと行っていたのだろう、その数は目視で数える事が出来ない程だ。

いったい幾つあるの? 旅人が少年に訊く、

「150枚! から先は数えられなくなっちゃった」

その数に旅人は、凄いね、と少年を誉めた。だが、

「でもね、300枚は集めないと僕の願いは叶わないかもしれないんだって、おかあさん言ってたの…」

少年は落ち込みながら両手に持つサクラの花びらを見た。

「もう日も暮れちゃうし、そろそろ帰らないといけないのに」

少年は頭をがくりと下げて落ち込みを表現した。

その時、旅人はある物を見た。なるほど、あれはそういう理由だったのか。

納得した旅人は少年に、大丈夫。きっと途中から数えきれなくなっただけで、キミは300枚の花びらを集めたよ、と言った。

「本当に?!」

うん、だから早くお家に帰っておかあさんと一緒に持っている花びらを数えてみると良いよ、と旅人は笑いかけた。

「分かった数えてみるよ! ありがとう旅人さん! じゃあね!」

両手いっぱいの花びらを持ち、少年は旅人に背を向けて走り去って行った。

こぼさないよう気を付けて帰るんだよ、旅人は少年に向けて、少年が着る服についているフードの中に詰まっているサクラの花びらを見て注意した。

きっとあの子のおかあさんは、アレを見越してあの服を着せたんだね、旅人はそう思いながら、サクラの舞う並木道を歩いて行った。


ほほえましい、そんな感じを表現して書いた、旅人さんシリーズです。

子供のころ、舞い散る桜の花びらを地面に着く前にキャッチしたり、花びらに当たらないように等、春限定な遊びをしたものです。

今更ながら、旅人さんの旅の目的が少しだけ垣間見えた話でもあったり……


それでは、

感想及び一言、お待ちしています。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、失礼いたします。 とても爽やかな読了感、優しい気持ちになれました。 ありがとうございました。
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