たぶん舞踏会
教室の窓から西日が差して、持っていたスマホ画面に反射した。まぶしい上に画面が見づらい。流し見ていた動画を諦めて顔を上げる。カーテンが遠い。動くのは面倒だ。
「ねえー」
後ろの席に座る友人に声をかける。
「なに?」
「なんか面白い話ないー?」
友人がスマホ画面から顔を上げた。ニヤッと笑って言う。
「あるよ」
「マジ!?聞かせて」
友人の机に手をついて身を乗り出した。友人はコホンと一つ咳払いをして、落語家みたいに手をそろえた。
「昨日、我が家に招待状が届いたんだけど」「ほんと?」
「うん。ほら、これがその写真」
友人がスマホ画面を操作して私に見せる。黒地に金の縁取りがしてあるその封筒は、確かに招待状っぽい。アニメとかで見るやつ。手が込んでるな、と思った。
「手作り?」
「え?どういうこと?」
友人は何を言ってるのかという顔を向けてくる。どうやら本当に招待状が届いた設定で進めるみたいだ。それ以上追求するのは野暮なのでやめておいた。
「ううん。なんでもない」
「そっか。じゃあ続けるよ。この招待状の中身がね、すっごい不思議なの」
「と言うと?」
「説明が抽象的すぎて、一見何に招待されてるのかがわからない」
それは招待状としての役割を果たしていないと思う。抽象的な要素はそのパーティーか何かに行ってからでいいのだ。どっちかと言うと事務連絡の招待状に入っていい要素ではない。
「でね、その内容を話すから、何の招待状か当ててみて」
まさかクイズだったとは。こういうことでも、クイズとなると正解したくなる。聞き逃さないようにより一層頭の回転速度を速くする。…速くなってるのか分かんないけど。
「まず、持ち物。『表面を美しく隠せるものを持ってきてください』」
こういうときの私をなめないでほしい。招待状と聞いたときから発想として舞踏会はあった。でもこの令和の世にリアリティを求めるならあり得ないのでは?と思っていたのだ。
この文脈、持ち物はたぶん「仮面」だ。ならば仮面舞踏会に違いない。
「あと、『怪我をする可能性があるので、対応できる衣服で来てください』」
怪我?舞踏会で?社交ダンスで転んだら笑い草だろう。
このとき、私の脳裏にある三文字がよぎった。まさか、「武道会」なはずがない。
「もうちょっとヒント頂戴」
「ごめん。もうタイムアップ」
そう言った親友がドアのほうをみていたので振り返る。黒い服の人が立っていた。
「正解は、実際に見て確認しよう?」




