8月2日(月)16:32
8月に入ったばかりの月曜日。僕はしかめっ面をしながらクーラーの効いたオフィスでメール処理をしていた。
ヴーヴー
「はい。もしもし。」
「お前今オフィス?」
仲のいい同僚からだった。
「うん。そうだけど?」
「俺の机の上に資料置いてない?」
僕の正面の机の上にはきれいにファイリングされた資料がある。
「これを持ってけと?」
「エントランスまででいいから!お願い」
電話越しに手を合わせるあいつが容易に想像できる。
「はぁ。わかったよ」
ファィルを雑に握ってオフィスのドアを抜けた。
蒸し暑い空気が身体にまとわりつく。
正直仕事は嫌いだ。
でも、僕は彼女のために仕事を頑張るんだ。
日曜日のデートで結婚指輪を渡す予定だ。
「はい。資料」
「マジで、ありがとな!」
「お前、借りイチな?」
「今度飲みに行こーな!っあでもお前彼女さんの飯しか食わないか」
同僚は笑いながら、手を振って自動ドアを抜けていった。
少しムッとしたが否定はできないので、僕も軽く手を振りかえす。
___今日、11時半ぐらいに帰るね。いつもありがとう。
送信
ガチャ
僕は、家のドアを開ける瞬間がこの世で一番好きだ。
「ただいま」
「おかえり」
いつ帰ってきても玄関で毎日その笑顔を見せてくれる。
そんな彼女が愛おしくてたまらない。
大好きだ。
リビングに行くといつも温かいご飯が置いてあった。
椅子に座ってご飯を食べる。
その間、彼女も正面の椅子に座って温かいお茶を飲む。
彼女の料理はどれも美味しい。
「いつもありがとう」
俺がそう言うたびに彼女は照れくさそうに微笑む。
シャワーを浴びてベットに行く。
彼女はもう寝ている。
時計は1時を回っていた。
彼女も仕事があるのに、いつも俺を待っててくれた。
ありがとう。
もう一度彼女に言った。
ピピッピピッ
あー、夢か。
彼女が誕生日プレゼントにくれた目覚まし時計を見る。視界が滲んでいる。
8月9日(月)6:15
そーだよな。
夢だよな。
__だって彼女はもうこの世にいないんだから。
昨日、君は僕の目の前で車に撥ねられたんだから。
デートのために新調した白いワンピースは血が滲んで汚れた。
君がいない世界には色がない
君がいない地球はくすんでて
僕の心に光はないんだ
だから、
君と僕はずっと一緒だよ。
ガチャ
いつもより身軽になった身体で家のドアを開けた。
外の光が僕の身体を優しく包み込む。




