表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/21

6話 推し活のお手伝い(前編)

 その日、目森が大きな手提げカバンを持って、教室に現れた。


「どうしたの? その大荷物……」


 学校指定のカバンとは別に、家具屋でもらうような大きなビニール袋に目を引かれ、つい尋ねてしまう。

 すると、目森は気にした様子もなく、そのビニール袋を肩から下すと、瑞希たちにも見えるように、中身を広げる。


「推しの応援グッズ制作キット」


 中には、色とりどりのモールやうちわ、画用紙などが大量に収まっていた。


「今日、放課後に部室で作るんだよ。ふたりも来ない? マジで、ゴールデンウィークにイベント重なり過ぎで、手足りなくてさぁ」

「私は部活あるからパス」


 真桐が断れば、ふたりの視線は自然と瑞希に向く。


「私は、暇だけど……」

「じゃあ、手伝って! マジで、マ~~~~ジっ! 猫の手も借りたいレベルで! お願い! お菓子奢るから!」

「でも、私、やったことないけど……」

「大丈夫! 教えるし、簡単だから!」

「そ、それなら、まぁ……」


 あまりに必死な目森に、瑞希もよくわからないまま頷けば、目森は、それはもう嬉しそうに瑞希の手を取るのだった。



「陽って、手芸部だったんだね」


 そうして、放課後になると目森に連れられてきた部屋には、『手芸部』の文字。


 目森は、放課後になると、忙しなくバイトに行くイメージで、部活に入っているイメージはなかったが、一年の時から入っているらしい。


「みんな、好きな時に集まってるからねー。文化祭の時に、作品出せば、オッケーって、ゆるゆるな部活だよ」

「へぇ……」


 正直に言うと、目森が、大人しく座って、裁縫をしているのは少し想像がつかない。

 今年のクラス替えのからの知り合いで、Vactorが好きという以外は、ほとんど知らないのだが、それでもフットワークの軽く、じっくり何かに向き合うイメージはない。


 どちらかと言えば、目森が抱えている、大きな袋に入っている、派手な推し活をしているイメージだ。


「おっつかれさまでーすっ! 友達も一緒に連れてきましたー」

「失礼します」

「いらっしゃーい」


 部室の中には、部員らしき5名ほどが、それぞれ作業をしていた。


 瑞希の印象通りの刺繡をしている人や、なにやら針金を曲げている人など、それぞれが思い思いの作業をしている。

 その中には、目森と同じような、うちわと制作している人も。


「あー……うち、手芸部って名前だけど、ハンドメイド系を一緒くたにしてる感じの部活でね」

「そ、そうなんですね……」

「ほら、ぬいとかも大量に並んでるでしょ」

「本当ですね……」


 所狭しと並んでいる箱に詰め込まれている、キャラクターのかわいらしいぬいぐるみや、作り途中と思われるものも大量に置かれている。


「目森さんに、推しうちわ作りに駆り出された感じ?」

「クラスメイトの御園生瑞希ちゃんです!」

「御園生です」

「よろしくねぇ。みんな、自由にやってる部活だから、好きに使って。あ、お菓子食べる?」

「ありがとうございます」


 先輩たちに渡されるお菓子を食べながら、大きな袋から材料を取り出している目森の方へ目をやる。


「陽ちゃんは、推しが多すぎるの悪い! 諦めて、もう少し絞りなって!」

「そうやって絞ろうとして、何故か増えた推しの数よ!」

「わかる自分がイヤになる……!!」


 何やら、同じく、うちわを作っている部員と盛り上がっているらしい。


「ゴールデンウィークだから、みんな、色々イベントが入ってるみたいでね。みんな、必死なのよ」

「私、何も知らない初心者なんですけど、大丈夫なんですかね……?」

「大丈夫大丈夫! 紙を切って、デコって、貼るだけだから!」

「なんだったら、こっちも手伝ってくれていいよ!」

「せめて、やり方教えてね……?」


 目森たちの言う通り、作業自体は、それほど難しくはなかった。

 既に、目森が画用紙には、文字を印刷していたし、それを丁寧に切って、うちわに貼り付ける。


 センスが必要そうな飾りつけの部分は、目森が担当して、瑞希はとにかく、文字を切り出して、出来上がったうちわの周りにモールを貼り付けていた。


「随分、数が多いね」


 ただ、その数が多かった。


「今度のイベント、単独じゃなくて、集団なんだよねぇ。だから、全員分作んなきゃじゃん?」

「そういうもんなの?」

「いや、全員分の個別うちわは、普通はしないって……共用と推し用くらい」

「そ、そうなんだ……そうなると、サイリウムとかも大変そうだね」


 うちわのモールも、色が大量にあった。

 いまいち、Vactorのイベントやライブのイメージはつかないが、イメージカラーに合わせたサイリウムを振ってるイメージはある。

 これだけの色のうちわに、サイリウムまで持っていったら、中々の大荷物になりそうだ。


「サイリウムは、最近のはまとまってるんだよ。ほら、こんなん」


 見せてくれたのは、おそらく彼女が推しているであろうグループのロゴが書かれたサイリウム。

 電気をつけて、手元を回せば、色が変わっていく。


「へぇ……すごいね」


 赤、黄、緑、青、青、赤--


「…………」


 もう一周すれば、赤と青は、微妙に色味に違いがある。


「…………」


 同じグループ内で、こんな誤差みたいな色を使うのか。

 会場で間違った色を付けている人もいるんじゃないだろうか。


 つい、口から出そうになる疑問を、瑞希はそっと飲み込んだ。


「あ、でも、瑞希も最近、きつねさんにハマってるでしょ」

「へ!?」

「最新の配信、全部追ってるじゃん」


 配信の内容をチェックする手前、目森の言う”きつねさん”こと、白亜の配信の話題については、全てついていけてしまう。

 結果として、ハマっていると思われているらしい。


「あのゆる~~って感じの配信いいよねぇ。月見さんのいい声で作る料理も、マジ渋って感じでさぁ」

「そ、そうだね」


 本当は、自分の使い魔だから、配信をチェックしているだけだ。なんてことは、もちろん言えない。

 なんとなく、曖昧な返事になってしまうが、目森は特に気にした様子もなく、話を続けてくれているのは、瑞希も助かった。


「きつねさん?」

「最近、ハマってるVでさぁ。あ、見る? めちゃイケだから」

「Vでしょ? リアルにイケメンかは別でしょ」

「ネットの顔がイケメンなら、イケメンだから」


 そう言いながら、手慣れたように配信のアーカイブを流し始める目森。

 瑞希たちの時もそうだったが、本当にフットワークが軽い。


 先輩たちも、作業を続けながら、時折、白亜の配信へ目をやる様子に、瑞希は妙な気恥しさを感じるのだった。


「いやぁ……きつねさん、その内、跳ねると思うんだよねぇ。てか、もう企業から、声掛かっててもおかしくないと思ってる」

「いやいや。Vだって大分増えたから、そう簡単じゃないでしょ」

「でも、この堂々とした余裕っぷり! まだまだポテンシャルはある! アタシはずっと追いかける!! 大丈夫! なんたって、一時間で東京に行けるからね!! ライブ、イベントなんでもござれ!」


 完成したうちわのひとつを振っている目森に、全員が苦笑いを零してしまう。


 その内、白亜のうちわも作るのを手伝うことになりそうだと、想像しては、さすがにそれは断ろうかと、瑞希は心の中で小さく頷くのだった。


「一応、ここも東京なんだけどなぁ……」

「ビルじゃなくて木が生えてる市は、東京にあらず!!」

「びっくりするほどひどい」

「西東京全員を敵に回したね」


 確かに、東京というより埼玉だとか言われている地域ではある。

 しかし、東京は東京だ。23区だけが、東京ってわけではない。


「でも、埼玉からの方が、都内に出るの早くない?」


 それは言っちゃいけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ