表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/19

5話 狐にとっては暇つぶし(後編)


「お、やっとるやっとる」

「ゲ……」

「あれ、白亜」


 境内に落ちていた枯葉やゴミをまとめてると、風呂敷包みを持った白亜が、ゆったりと階段を上がってきた。


「もう終わりそうやな」

「うん。白亜は?」

「お迎え。あとこれ、吽野から」


 紬希たちにも見えるように持ち上げた風呂敷に、紬希も嬉しそうに頬を緩めた。


「毎回、ごめんね。連絡くれれば、黒天に取りに行かせるよ?」

「ええんよ。そこの天狗様に頼んだら、せっかくの夕飯が冷めてまうやろ」

「あ゛?」


 ピリリと空気が引きつるが、残念なことに、いつものことだ。

 どこか馬が合わないのか、顔を合わせると、どちらからともなく、嫌味を口にしては、そこから喧嘩に発展するのだ。


「白亜……」


 窘めるように、瑞希がじっと見つめれば、白亜はすぐに空いていた方の手を挙げて、降参するように手を振る。


「いつも大変な思いしとる紬希に、たまにはラクして、おいしいごはん食べてほしいだけやて」

「”姉ちゃんのところにいる使い魔たちは、ろくな家事ができなくて、大変ですねぇ”だとよ」

「翻訳しない」


 瑞希の肩に肘をかけながら、黒天が、白亜に聞こえるように口にすれば、白亜の笑みが深まる。


 白亜の皮肉はわかりにくいことも多いが、黒天の翻訳も大分歪曲している。

 歪曲、してる。と、思う。


「まぁ、事実だからな」


 こういう時に、大雑把にまとめてくれる阿文は、本当に頼りになる。


 風呂敷を預かろうとする阿文に、白亜が少し慌てた表情をして、阿文の手から離れようとするが、少し間に合わなかったのか、バチリと静電気のような音が響く。


「…………」

「いい加減学べや……つーか、ホンマに、何やらかしたん? アンタ」


 悲しげな表情で、弾かれた手を見ている阿文に、白亜も呆れる。


 先程の音は、吽野の術で、阿文に夕飯を詰め込まれているタッパーを触らせないためのものだ。

 詳しくは聞いていないが、とにかく阿文は、台所に入ることは禁止され、料理なども絶対にするなと言われているらしい。

 あの温厚な吽野が、料理ばかりは、術をかけてまで、阿文に触らせないようにする辺り、相当何かをやらかしたのだろう。


「特に何もやっていないんだがな……」

「絶対、なんかやらかした奴が言うセリフやな……」


 一度、白亜も聞いたことがあるが、吽野の「聞きたい?」という冷たすぎる笑みに、すぐに断った。

 わざわざ、地雷原に入る必要はない。


 仕方なく、黒天がその風呂敷を受け取れば、ほのかに香る味噌の香り。


「……サバの味噌煮!」

「せいかーい」

「瑞希……」


 楽し気に、したり顔をしている瑞希と白亜に、紬希が少しばかり呆れてため息を漏らす。


*****


「じゃあ、気をつけて帰るのよ」

「はーい」

「おじゃましましたぁ」


 手伝いを済ませ、紬希たちに見送られながら、帰路につく頃には、すっかり暗くなり始めていた。


「ねぇ、白亜」

「んー?」

「もっと、チャンネルを盛り上げたいとか、有名になりたいとか、そういうのないの?」


 先程、黒天も言っていたが、きっと白亜がもっと真面目に活動すれば、有名な配信者になることもできるのだろう。


 平日の昼間だけ雑談配信にしているのは、瑞希にバレないためと思っていたが、今も変わらず、配信時間は平日の昼間だ。

 その時間の配信では、仕事や学校に行ってる人は見ることができず、知名度も上がりにくい。

 こうして、瑞希にもバレた今なら、夜に配信することもできるし、それで視聴者も増えるかもしれない。


「ないなぁ」

「え、そうなの?」


 しかし、返ってきた答えは、否定的なものだった。


 あっけらかんとした様子で、白亜は手を横に振っていた。


「ないない。そないなことしたら、瑞希と一緒にいる時間少なくなってまうやん」

「そこ?」

「僕にとっては、一番、大事やで?」


 意外な答えだったが、嘘ではなさそうだった。


「言うてるやん。あくまで、アレは、おもしろそうってだけの暇つぶしみたいなもん。瑞希たちを蔑ろにしてまでやるもんやないて」

「そうなんだ……」


 三年も続けているにも関わらず、随分とあっさりしている言葉だった。

 何百年と生きていると、三年なんて、とても短い期間なのかもしれない。


 瑞希が、白亜の背中をぼんやりと眺めていれば、ふと白亜の耳がピクリと揺れる。


「ま、本当に有名になりたいとか、稼ぎたいとかなら、僕、その辺、得意やで?」


 ふと振り返った白亜の目と、瑞希の目が合う。


 その表情は、昔から変わらない、悪戯をするような表情で、つい瑞希の表情も引きつる。


「なんなら、瑞希をプロデュースしたってもええで?」


 案の定、ろくでもないことを言い始めた白亜。


「結構です!!」


 すぐに瑞希も否定した。

 白亜も不満そうな声を漏らしている。


「女の子って、アイドルとか、女優さんに憧れるもんやん」

「仕事にしたいとは思ってないからいいですー」

「なんや。自信がないだけやったら、どうにでもなんのに」

「フッ……何年一緒にいると思ってるの。白亜のやり口なんてお見通しだ!」

「人を詐欺師みたいに言うなや」


 うっかり、自分にはできないなんてことを言ってみろ。外堀から埋められる。

 アイドルになるなんて大それたことじゃなくても、発表会での一番最初の拍手だって、自由研究の紹介文を作ってもらった時だって、自然と人を巻き込んで、当人すらも流されるような流れを作るのだ。

 それが、白亜のやり方。


 不満そうにこちらを見ている白亜に、瑞希はしたり顔で微笑む。


「いやー今日のご飯はすっごくおいしいぞぉ!」

「はいはい。そらよかったわ」


 少しだけ足取りが軽くなった瑞希の足音が並ぶ音を聞きながら、白亜もゆっくりとまた歩き出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ