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#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久


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14話 節度を持った面食いです。(前編)

 あまりの気まずさに、瑞希は顔をあげられない中、鼓膜を震わせた衣擦れ音。


「…………ほんまもんのタニシになる?」

「ごめん! ごめんて!! 本当に、これはわがままだとはわかってるんだけどね!? そもそも白亜がVactor(嘘)なのも悪いと思う!!」


 不機嫌そうに、耳や尻尾が小刻みに動いている白亜とは対照的に、吽野は口元を歪ませ、肩を震わせていた。


「身から出た錆ってやつだね」

「錆びちゃうわ」


 もはや、隠すつもりもなく、笑いながら話す吽野に、白亜も口元をひくつかせている。


 瑞希自身、護衛の選び方が、『友達の推しではない方』であったことには、多少の罪悪感はある。

 だが、白亜も白亜で、その姿のままで配信していたことも、Vactorと勘違いされた時に、訂正しなかったこともある。


「だいたい! 命と身バレ、どっちの方が大切かくらいわかるやろ!」


 真桐のように、白亜を知っている地元の人が見れば、すぐに白亜だとバレるのだから、身バレを気にする必要はない。


 白亜が、耳と尻尾を逆立てながら、声をあげれば、


「友達の夢」


 即答する瑞希に、白亜がピキリと固まった。


「……今日は、おやつ抜きです」

「ハ!?」


 目の前に置かれていた、お菓子の入ったお盆を、高く持ち上げられる。


「ひどくない!? ちょっと白亜!」

「なんもひどくないわ。いくら食べ盛りでも、菓子ばかり食いおったら、太るだけやし」


 瑞希の手の届かないギリギリのところで、お盆を動かしている白亜に、瑞希は一度手を下すと、白亜を睨む。

 その様子を、白亜は静かに睨み返すと、瑞希は一度別の方へ目をやると、直後に右腕を伸ばそうとして、キッチンの方に駆け出した。


「冷蔵庫の中に、LOOTあるの知ってるんですー!! 残念でしたー!」

「あ、コラ! 開けたら、全部食べるんやから、ダメに決まっとるやろ!」

「白亜が取り上げたのが悪いんですー!」


 冷蔵庫から、LOOTを取り出しながら、勝ち誇ったように自慢気な表情を向ける瑞希に、白亜は悔し気に尻尾を逆立てる。


「一本取られたね」

「たまには、私だってやるんですぅーあ、お茶飲む? LOOT奪った記念に、お茶を淹れてあげましょう」

「おや、では、こちらも茶菓子を持参して、参じましょう」


 白亜が手に持ったままの菓子の入ったお盆から、お菓子をふたつ摘まみ上げる吽野に、白亜は文句ありげに、お盆のせんべいを摘まむのだった。


「――うん。よくわからないね」


 お茶とお菓子を食べながら、目森から教えてもらった動画や画像を、吽野と白亜にも見てもらった結果が、今の一言だ。


 そもそも、こういった映像だけでは、本物か偽物かは、判断がつきにくいらしい。

 過去に、テレビの怪談特集を見てもらった時も、わからないと言われるだけだった。

 おかげで、正体が分かれば怖くないのではないかという、幼い時の自分の浅知恵は何の意味もなさなかった。


「まぁ……声は、あの小鬼。大きな鳥は、黒天やな」

「やっぱり? それは、かなぁ……と思ってたんだよね」


 目森に見せられた時も、確証こそなかったが、おそらく人を追い払っている小鬼たちの声であろうことは、瑞希も気が付いていた。

 あの小鬼たちが、隠れて驚かせているとは思えないため、おそらく、カメラを下に向ければ、見えたことだろう。


 それでも、何も知らない一般人からすれば、小さな何かに叫びながら追いかけられるのは、恐怖体験だろうが。


「この手のは行ってみるしかないからねぇ」

「じゃあ、当日はお願いね」

「はぁい」


 頷く吽野の隣で、まだ少し不満そうな白亜が、何も言わずにせんべいを齧っていた。


*****


 そして、日曜日の昼。

 待ち合わせの場所に、瑞希と吽野が行くと、既に目森と真桐が待っていた。


「お待たせーふたり共、早いね」

「もっちのろんよ! って、ふびゃッッ!? そ゛ちらの方、が、使い魔って言ってた!?」


 目森が、吽野の存在に気が付くと、驚いたように、吽野を見上げては、奇声をあげながら少し後退る。

 その目が、人間にはない犬のような耳や尻尾など順々に捉えると、両手で口を覆い、もう一度、視線が頭上に戻り、またゆっくりと下っていく。


「吽野さん。お久しぶりです」

「やぁ。波奈ちゃん。ひさしぶりだねぇ」

「ひ゛さ゛し゛ふ゛り゛!? お知り合い!?」

「え、あ、はぃ……」


 大きく目を見開いて、真桐に顔を向ける目森に、真桐も動揺しながら、おずおずと頷く。


「いや、普通に地元じゃ有名だよ……よく神社にいるし」

「神社にッ! いるゥッ!? 詳しく!!!!」

「話には聞いてたけど、おもしろい子だねぇ」


 相当、変な人だと思われそうな言動と行動をとっている目森だが、そこは長年生きていたからか、吽野は特に気にした様子もなく、朗らかに笑っていた。

 その様子に、少しだけ安堵したように、瑞希は小さく息を吐き出した。


「ヤバ……リアルでこんなの見れるなんて……ヤババ、語彙、なくなるんだけど……し、尻尾とお耳、見てもいいですか?」

「はいはい。どうぞー」


 興奮した様子で、吽野の周りをぐるぐる回っては、鼻息荒く妙な声にならない声をあげている目森に、瑞希は少し引いていた。


 吽野を連れてきたのは自分だが、本当に申し訳ない。

 こんなに、ひどく興奮するとは思っていなかった。


 少しだけ目が合った吽野は、気にしないでいいよ。とばかりに、笑ってくれているのだけが、救いだった。


「さすがに、白亜さんは連れてこなかったんだね」

「まぁ……さすがに、ね」


 こっそりと耳打ちしてくる真桐に、瑞希も頷いた。

 ただ、少しだけ、自分たちの後ろへ視線を向ける。


「?」

「実は……ついてきてはいるんだよね」


 先程、瑞希も吽野に言われただけだが、こっそり白亜がついてきているのだという。

 真桐も瑞希と同じように、振り返るが、あの特徴的な白い髪は見当たらない。


「一応、陽のことは伝えてるし、何もなければ、出てこないとは思うけど」

「そうなんだ……相変わらずだね。白亜さん」

「うーん……まぁ、今回は、こっちも理由が理由で、悪いとは思ってるんだけど……」


 小声で会話を続けながら、目をやるのは、未だに興奮している様子の目森。

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