記憶
呉羽の指示に従い、四人は商店街の探索を開始した。
呉羽のタブレット端末には、凛が特定した「歪みの中心」を示す赤い点が複数、明滅していた。
「凛の分析結果によると、この三箇所に絞られるみたいだな。」
呉羽が指差すのは、路地裏の古びた玩具店、寂れた喫茶店の前、そして商店街の裏手にある小さな公園だった。
「なるほど。じゃあ、手分けして探してみるか?」
結城の言葉に、神楽は静かに頷き、その隣に立つ桜は不安げな表情で尋ねた。
「あの……本当に、私たちだけで大丈夫かな……?」
結城は優しく微笑んで答えた。
「大丈夫だ。桜は式神を使って、人目につかない場所を調べてくれないか。神楽はこの辺りの残滓を視てほしい。」
神楽は静かに頷き、桜は力強く「任せて!」と返した。
四人はそれぞれが役割を分担し、動き出す。結城と呉羽は、タブレットを片手に歪みの中心へ向かう。
桜と神楽は、それぞれの能力を使い、商店街の異変を調査しようと努めた。
「しかし、おかしいな……。」
呉羽はタブレットのデータを睨みながら、険しい顔で呟いた。
「どうした?」
「歪みの値が不安定なんだ。特定の場所で強くなるというよりも、ランダムに変動している。」
その時、呉羽のタブレットから、凛のホログラムが飛び出す。
「マスター、現在位置の歪み値、急上昇中ですぅ!」
その言葉と同時に、呉羽の顔に驚愕の色が浮かぶ。
「そんなはずは……この場所には、何も観測されていないのに……。」
呉羽の言葉を聞き終える前に、風景が揺らいだ。次の瞬間、再び桜の無邪気な声が、耳に響いた。
「結城くん!これ、絶対可愛いよ!」
結城は再び、ループの始まりの場所に立っていた。しかし、今回は隣に立つ呉羽が、顔色を変えずに結城に話しかけてくる。
「結城、やっぱりここに戻ってきたか……。」
呉羽は、タブレットの画面を結城に見せた。そこには、数秒前まで表示されていた歪みのグラフが、再び初期値に戻っている。
「呉羽、記憶がある…のか?」
結城の問いに、呉羽は冷静に答える。
「君の【理法解離】が、このループの『鍵』を握っているようだ。どうやら、僕も君と同じように、記憶を保持しているらしい。」
呉羽は、目の前の現象をまるで、解くべきパズルのように捉えていた。
結城は、呉羽が自分と同じように記憶を保持していることに、安堵と同時に驚きを感じた。
それは、孤独な戦いからの解放を意味していた。
お付き合いいただきありがとうございました!
この怪異譚が少しでも心に残ったなら、ブックマークや評価ボタンをポチッと押していただけると嬉しいです。
皆さんの応援が、主人公たちの物語を動かす原動力になります。
次回もまた、港町でお会いしましょう。




