証明
「結城くん!これ、絶対可愛いよ!」
桜の無邪気な声が、またもやループの始まりを告げた。
結城はこの光景を、もう何度も繰り返し見てきた。数えきれないほどの反復に、もはや回数を数える気力すら残っていなかった。
隣に立つ呉羽は、先ほどの出来事を何も覚えていない。
商店街の喧騒、流れるBGM、通りを行き交う人々――すべてが寸分違わず繰り返されている。
その完璧すぎる反復が、結城の心に底知れぬ絶望と疲労を積み重ねていった。
しかし今回は、これまでとは違った。
結城は確信していた。ループから脱出するには、自分一人ではなく仲間たちの力が必要だ、と。
胸の奥に燻っていた決意を引き絞り、まだ状況を理解していない桜と神楽に向けて声を張り上げる。
「皆、聞いてくれ!今から俺が言うことを絶対に信じてほしい!
これは俺が何度も繰り返してきた“未来”の出来事なんだ!」
唐突な叫びに、桜は目を丸くし、不安げに声を漏らした。
「結城くん、どうしたの……急に……」
困惑の色が隠せない。
一方、神楽は表情を大きく崩さず、それでもじっと結城の言葉に耳を傾けていた。
結城は一呼吸置くと、さらに言葉を重ねる。
「俺が言い終わった直後、神楽が『あれ、このお店……』と呟く。
その瞬間、向こうの通りから黒い軽自動車がゆっくり入ってくる。
そして、店から出てきたおばさんが、驚いて声を上げるはずだ。」
結城の宣言が終わるのと同時に、現実が忠実に追随する。
神楽が足を止め、視線を前方に向けて呟いた。
その視線の先には、まさに今、黒い軽自動車が現れた。
さらにタイミングを合わせるように、店の戸口から現れたおばさんが、慌てて目を見開き叫んだ。
「危ないよ!こんなところで車なんて!」
偶然とは到底思えない、あまりにも出来すぎた一致。
呉羽も桜も神楽も、思わず言葉を失う。
結城の“予言”は、現実と寸分違わなかった。
呉羽は冷静さを崩さず、ただ論理だけを武器に結城を見据える。
「……結城、君の言うことは事実のようだ。どうやら僕たちも、同じ時間を繰り返しているらしい。」
そう告げると同時に、呉羽は素早くタブレットを取り出し、凛に呼びかける。
「りんたん!時間位相の歪みが最も強い場所を、いくつか特定してくれ!」
「マスター、了解しましたですぅ!」
呉羽の指示に従い、結城たちは探索を開始する。
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次回もまた、港町でお会いしましょう。




